睡眠関連疾患の種類と症状
睡眠関連疾患とは睡眠に関する何らかの異常が生じ、それによって社会生活に支障をきたす病気の総称です。症状や病態に応じて大きく7つに分類されますが、細かく分けると60~80ほどの種類があるといわれています。
以下では、睡眠関連疾患の7つの分類ごとに代表的な病気とその症状について紹介します。
不眠症
何らかの原因で十分な睡眠が取れず、日中にさまざまな不調が現れる病気です。具体的には、集中力の低下や倦怠感、気分の落ち込み、めまいなどを自覚することが多いといわれています。大きなストレスが原因で一時的に発症する“短期不眠症”もありますが、不眠に伴う不調が3か月以上続いた場合は“慢性不眠症”と診断されます。
・寝ようと思ってもなかなか寝付けない
・一度眠りについても夜間に何度も目を覚ます
・早朝に目が覚め、再び寝ることができない
・寝た気がしない、休んだ感じがしない
なお、上記の症状に複数当てはまる場合もあるものの、不眠症かどうかは主に“日中の不調の有無や程度”で診断されます。
中枢性過眠症
十分な睡眠が取れているにもかかわらず、日中に強い眠気が現れる病気です。“ナルコレプシー”や“特発性過眠症”などが中枢性過眠症に当てはまります。
それぞれ自分の意思ではコントロールができないほどの眠気に襲われることが特徴として挙げられますが、眠気の強さや日中の居眠りの長さ、夜の睡眠時間の長さなどに違いがあります。本人に居眠りの自覚がなかったり、仕事中や授業中、また重要な会話をしている最中でも眠ってしまったりするため、周りに誤解されやすいのも中枢性過眠症の特徴です。なお、ナルコレプシーでは10歳代、特発性過眠症では10~20歳代で発症するケースが多いことが知られています。
ナルコレプシー
・1日に何度も通常では考えられない状況(食事中や散歩中など)でも突然居眠りをしてしまう
・居眠りをしたまま動くことができ、後にそのときの記憶がないこともある
・日中の居眠りは5~15分と短く、目覚めると一時的に眠気がすっきりする
・入眠直後に感覚を伴うリアルな夢をみたり(悪夢であることも多い)、頻繁に金縛りにあったりする
・情動脱力発作*が起こる場合もある
特発性過眠症
・日中に強い眠気に襲われる
・日中の居眠りが1時間以上と長く、目覚めた後もすっきりしないことが多い
・1日の睡眠時間の合計が11時間以上になることがある
睡眠関連呼吸障害
睡眠中、気付かないうちに呼吸が複数回止まったり、浅くなったりすることで、熟睡できなくなる病気です。物理的に気道が塞がって呼吸が止まる“閉塞性睡眠時無呼吸”や、脳から呼吸を促す指示が出なくなる“中枢性睡眠時無呼吸”などが当てはまります。酸素不足を解消するため夜中に何度も目が覚めますが、覚醒するのはごく短い時間のため連続して眠れていないことに本人は気が付いていないことが多いといえます。
特に閉塞性睡眠時無呼吸は成人だけでなく、お子さんも発症するため注意が必要です。
・日中に強い眠気を感じる
・夜中に何度も突然目が覚める
・起きたときに著しい口の渇きや喉の痛みがある
・睡眠中のいびきや呼吸が止まった様子を人に指摘される
概日リズム睡眠・覚醒障害
体内時計がずれてしまうことによって、本来寝るべき時間に眠れなくなったり、起きるべき時間に眠くなったりする病気です。遅寝遅起きを特徴とする“睡眠・覚醒相後退障害”や、昼夜関係なく睡眠と覚醒が不規則に現れる“不規則睡眠・覚醒リズム障害”などがあります。
通常、体内時計は24時間周期で覚醒と睡眠が繰り返されるよう自然と調整されています。しかし、何らかの原因でこの調整がうまく行われなくなった場合、極端な遅寝遅起き・早寝早起きなどが生じるようになります。
・午前3時以降など遅い時間にならないと寝付けず、次の日の朝起きる時間も遅くなる
・1日の間で不規則に寝たり起きたりしてしまう
睡眠関連運動障害
睡眠前後や睡眠中に、体の異常な感覚・動きが生じる病気です。夜間、足に虫が這うような感覚や不快感に見舞われる“むずむず脚症候群”や、睡眠中に手足の筋肉が繰り返しピクピクと動く“周期性四肢運動障害”などが代表的で、両方の症状が起こる人も多くいます。睡眠が妨げられることによって、不眠や日中の眠気が生じます。特に周期性四肢運動障害は手足が動いていることをまったく自覚していないこともあり、日中の眠気や倦怠感のみを訴え、なかなか原因が分からないことがあります。
いずれもお子さんにもみられる病気ですが、年齢を重ねるにつれて有病率が高くなることが知られています。
・夜間にじっとしていると手足に異常感覚*があるが、動かすと症状が治まるためなかなか寝付けない
・夜中、手足がピクピク動くため、何度も目が覚める
睡眠時随伴症
睡眠中に異常な行動を取る病気です。突然叫んだり泣き出したりする“睡眠時驚愕症”(夜驚症)や、寝たまま歩き回る“睡眠時遊行症”(夢遊病)などが当てはまり、両方の症状がみられることもあります。成人の発症例もありますが、お子さんに多くみられる病気です。
そのほか、頻繁に悪夢を見る“悪夢障害”や夢の内容と同じ行動をしてしまう“レム睡眠行動障害”も睡眠時随伴症に分類されます。
・寝ている間に突然叫び出したり、泣きわめいたりすることがある
・寝たまま歩き回ったり走り回ったりする
・頻繁に悪夢を見て、鮮明に思い出してしまうため、精神的な負担になることもある
・突然大声を発したり、手足を動かしたり、暴力的な行動を取ったりする
その他の睡眠障害
上記のほか、心臓病による胸の苦しさや関節リウマチによる痛みといった身体疾患、うつ病などの精神疾患に関連して不眠症状や過眠症状が生じる場合もあります。
睡眠関連疾患を疑うお子さんの症状
小さいお子さんの場合、自分で睡眠関連疾患に気付くことは難しいため、保護者が違和感に気付いてあげる必要があります。
以下では、注意すべきお子さんの症状を時間帯に分けて紹介します。当てはまる症状がある場合は、病院を受診することも検討しましょう。
朝
・朝、何度起こしても起きられなくて遅刻する
日中
・眠そうにしている
・頻繁に居眠りをする
・集中することができない
・成績が落ちた
・情緒が不安定(イライラしやすいなど)
・朝は元気がないが、夕方から夜にかけて元気になる
就寝前
・なかなか寝ようとしない
・ベッドに入ってから寝付くまで30分以上かかる
就寝中
・足のむずむずなどの異常感覚を訴える
・ベッドの中で常に足を動かしている、足がピクピク動いている
・意識のない状態で歩き回るが、翌日覚えていない
・就寝中に大声を上げたり、泣きわめいたりするが、翌日覚えていない