生活習慣の改善
睡眠に関する問題は、生活習慣の乱れや睡眠環境が整っていないことなどによって起こっている場合もあります。そのため、まずは生活習慣や睡眠環境を見直して、睡眠の質を高めることが大切です。
厚生労働省が提示する「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」をもとに、よりよい睡眠を取るための生活習慣のポイントを時間帯別に紹介します。
朝
日光を浴びることで体内時計が調整されるため、朝起きたら日の光を浴びましょう。また、朝食をしっかり取ってエネルギーを補給するとともに目覚めを促すことも大切です。
日中
15時以降に30分以上の昼寝や仮眠を取ってしまうと、夜に眠れなくなる恐れがあるため注意が必要です。また、寝付きをよくして良質な睡眠を得るためにも、適度な運動の継続を心がけましょう。
就寝前
入浴
就寝前はできるだけ体や心をリラックスさせることが大切です。熱いお湯に長時間つかると体に負担がかかるため、入浴は38~40度のぬるめのお風呂に20分ほどつかるとよいでしょう。寝る直前に入るのではなく、寝る2〜3時間ほど前には入浴を済ませておくことをおすすめします。
睡眠環境の整備
寝室の温度や湿度、照明の明るさ、音(騒音)を調整し、過ごしやすい睡眠環境を整えることも重要です。
就寝前に控えたほうがよいこと
反対に避けたほうがよいこととして、夜食や就寝前の飲酒・喫煙などが挙げられます。これらの生活習慣は、寝付きの悪さや眠りの浅さ、ひいては睡眠の質の低下につながるため注意が必要です。また、就寝の3~4時間前から覚醒作用のあるカフェインの摂取は控えることをおすすめします。
なお、就寝前のスマートフォンやゲーム画面などの光の刺激は入眠の妨げになるため、ベッドに入ってからの使用は控えましょう。
睡眠関連疾患の主な治療
生活習慣を見直すことで症状が改善する場合もありますが、睡眠や眠気に関して問題が残る場合には薬物療法などの治療を行うこともあります。ここでは、睡眠関連疾患の主な治療法を紹介します。治療方針は原因や症状に応じて異なりますので、医師に相談することが大切です。
チェックリストでご自身の睡眠の問題を確認したり、受診する病院を決めるために病院検索を活用したりするのもよいでしょう。
不眠症
生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて治療を進めていきます。睡眠に導く薬を用いて治療を行いますが、不眠症の症状に応じて適切な薬を選択することが大切です。
薬物療法以外の治療法として、認知行動療法(医師の指導の下で自身の行動や考え方などを理解することで症状の改善を目指す精神療法)が行われることもあります。
中枢性過眠症
睡眠時間をしっかりと確保し、生活リズムを整えるとともに、薬物療法を行っていきます。薬物療法では、日中の強い眠気を抑える薬を使用します。ナルコレプシーの場合には、眠気以外の症状をコントロールする薬を内服することもあります。
睡眠関連呼吸障害
閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸で治療法が異なります。主な治療法は以下になります。
閉塞性睡眠時無呼吸
閉塞性睡眠時無呼吸の主な治療は、CPAP療法(マスクを通して気道に空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ治療)ですが、軽症の場合はマウスピース治療などが行われます。肥満が原因の場合には減量と併せてこれらの治療を実施します。なお、口蓋扁桃(扁桃腺)の肥大などが原因の場合には、手術が検討されることもあります。
中枢性睡眠時無呼吸
一方、中枢性睡眠時無呼吸の場合には、まずは原因となる病気の治療を行いますが、それでも睡眠時無呼吸が続く際にはCPAP療法などを併せて実施します。
概日リズム睡眠・覚醒障害
睡眠と覚醒のリズムを整えるために認知行動療法や、睡眠と覚醒のリズムを整える薬などを用いて治療を行います。軽症の場合には、毎日同じ時間に起床・就寝する、日の光を浴びるといった生活習慣の見直しだけで症状が改善することもあります。
睡眠関連運動障害
運動や足のマッサージをしたり、症状がある箇所を温めたり冷やしたりすることによって症状が和らぐことがあります。必要に応じて薬物療法が検討されます。鉄不足が原因の場合には、鉄を補充する薬を内服することもあります。
睡眠時随伴症
睡眠中の異常行動でけがをしないように窓の鍵をかけたり、障害物を取り除いたりして、まずは安全を確保します。必要に応じて薬物療法が検討されます。