治療方法と病院選びの重要性

病気を確実に治し、いち早く元の生活に戻るために

病気を確実に治し、
いち早く元の生活に戻るために

女性はライフステージごとにかかりやすい病気が変化します。子宮内膜症や子宮筋腫などの良性腫瘍りょうせいしゅよう*は20~40歳代に多く、さらに年齢を重ねると子宮体がんなどを発症することもあります。仕事や育児に追われるなかで、自分の生活に合わせて“どのような治療法がよいか”、“どのような病院がよいか”を決めることは簡単ではないでしょう。また、治療後の生活を見据えると、治療を受けるうえでは“確実に治療できること”だけでなく、“なるべく早く日常生活に復帰すること”も重要ではないでしょうか。
また女性に限らず、近年では喫煙習慣に関係なく肺がんにかかる人が増えています。婦人科疾患や肺がん治療では、術後1週間ほどで退院が見込める低侵襲ていしんしゅう(体への負担が小さいこと)な手術が普及しています。これは傷が小さいため術後の早期回復が期待でき、見た目にも配慮できる治療法です。このような治療法があることを知ったうえで、よりよい治療を受けるためには、信頼して治療を任せられる医療機関を選ぶことも大切でしょう。

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臓器や命に重大な影響を与えない腫瘍。緩やかに増殖し、転移しないことが特徴。

“やさしい医療”で患者さんを支える
倉敷成人病センター

治療後の生活も見据え、患者さんによりよい医療を提供

治療後の生活も見据え、患者さんによりよい医療を提供

倉敷成人病センターは、“ひとりひとりにやさしく、最良の医療を提供する病院”をモットーとし、信頼される医療を提供することを目指してきました。可能な限り患者さんにふさわしい治療を提供したいという思いの下、高性能の医療機器を率先して取りそろえ、満足いただける治療の提供に努めています。
私たちは“病気をきちんと治すこと”、そして“合併症・輸血を減らすこと”を大前提に据えたうえで患者さんの術後の生活にも配慮するべく、内視鏡手術*・ロボット支援下手術を積極的に行っています。この手術では開腹手術よりも小さな切開で治療を行うため出血量を抑えることができ、術後の回復が早いのです。また、手術痕が大きく残らないことも特徴です。当院では、患者さんの体への負担が少ないやさしい治療を保険収載される前から取り入れてまいりました。

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内視鏡手術は、体に小さなあなを数か所開け、そこから器具を挿入して行う手術。それぞれの孔に内視鏡(カメラ)や手術器具を挿入し、中の様子をモニターに映し出しながら、病巣部を摘出する。

研鑽を積み重ねてきた医師が執刀――安心して手術を受けていただくために

研鑽を積み重ねてきた医師が執刀――安心して手術を受けていただくために

当院では昨年、婦人科疾患だけで年間877件*の腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術を行いました。この件数は手術中の処置に無駄がないからこその実績といえます。これらの治療を高い精度で確実に行うために、私(安藤 正明)は腹腔鏡下手術の練習を40~50分、ロボット支援下手術のシミュレーターでのトレーニングを30分、毎日欠かしません。手術の実績もそうですが、こうした小さな研鑽の積み重ねが手術の精度に現れるものと考えています。当院には国内で唯一、日本ロボット外科学会 婦人科領域の国際A級ライセンス**を持つ私をはじめ、各専門領域で実績を重ねてきた医師が執刀いたします。手術をご検討の際はぜひ当院にご相談ください。

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2023年4月~2024年3月。良性腫瘍、悪性腫瘍の対応件数を合計。

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2024年6月時点。ロボット支援下手術において学会が定める症例数を満たした医師に与えられる認定。

治療前後も快適に過ごしてほしい――精神的・経済的にやさしい療養環境

婦人科(新棟)の病室

治療前後も快適に過ごしてほしい――精神的・経済的にやさしい療養環境

当院では手術を受ける患者さんに治療前後も快適に過ごしていただくために、病室を全室個室としております。269床のうち、特別室の3室以外は個室料をいただいておりません。また、タオル類の無料貸し出しサービスを行っています。大型のテレビも導入し、まるでホテルで過ごしているように感じられる設計にこだわりました。当院では治療のために遠方からいらっしゃる患者さんもおりますが、その移動費を超えるだけのメリットを感じていただけるよう療養環境を整えております。

理事長プロフィール

倉敷成人病センターの
子宮体がん・子宮筋腫・
子宮内膜症・肺がん治療

子宮体がんの治療

患者さんの不安に寄り添うために――確実・迅速な診断に努める

患者さんの不安に寄り添うために――確実・迅速な診断に努める

子宮体がんと診断された方は「いったいどこまで進行しているのだろう……」と不安に思うことでしょう。当院は迅速な検査によっていち早く病状把握を行い、患者さんの精神的負担の軽減に努めています。迅速な検査は、手術を行うまでの時間短縮にもつながります。手術を行うまでにがんが進行してしまうことのないよう、病院全体でスピーディーな診断に取り組んでいます。また、当院放射線科では年間6,001件のMRI画像診断を行っています(2023年4月~2024年3月)。実績の積み重ねと同時に読影技術も年々蓄積されており、スピーディーかつ確実な診断を目指しています。

精度の高い手技により再発・転移予防に取り組む

精度の高い手技により再発・転移予防に取り組む

がん細胞はリンパ節を通って全身に広がり、転移・再発することがあります。そのため、手術では病状を見極めたうえで、がんだけでなくリンパ節の郭清かくせい(取り除くこと)も行います。子宮体がんの場合は、おへその辺りにある腹部傍大動脈から骨盤内部までのリンパ節を取りきる必要があり、これを開腹手術で行うと体への負担が大きくなってしまいます。当院では腹腔鏡下手術とロボット支援下手術でリンパ節郭清を行っており、低侵襲な手術を実現しています。カメラを挿入することで郭清が必要な深部を詳しく観察でき、映像も拡大できるため、開腹手術よりも精度の高い郭清が可能と考えています。
さらに、開腹手術よりも傷口が小さく済むため、術後の回復や化学療法の開始も早くなります。また、切開範囲が小さいため、腸が癒着しにくいことも特徴です。腸は放射線治療による影響を受けやすく、腸の同じ位置に放射線が継続的に照射されると便通異常や肛門の痛みなどが生じる可能性があります。癒着がなければ、放射線治療によるダメージが局所的に蓄積する心配がなく、放射線治療をスピーディーに開始することができます。当院では子宮体がんを含む悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術を年間95件行っています(2023年4月~2024年3月)。
なお腹腔鏡下による子宮体がん手術は、病期によって保険診療ではなく自費診療となることがあります。当院の場合、入院期間は10日ほどで、入院費用は170万円ほど(手術費含む)かかります。リンパ節郭清を行う場合には合併症としてリンパ浮腫やリンパのう腫が起こる可能性がありますが、当院では看護師や理学療法士との連携によって合併症の予防に努めています。加入されている保険組合などで高額療養費制度*を利用できることもありますので、事前に確認いただき、申請いただくことをおすすめしています。
子宮体がんの治療を控えている患者さんは、どなたでも少なからず不安な気持ちはあるかと思います。当院では、常に安全な手術を心がけていますので、どうか希望を持って一緒に治療していきましょう。

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家計負担を軽減するために、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合に、その超過額を支給する制度。

解説医師プロフィール

子宮筋腫の治療

患者さんごとのライフステージに応じて幅広い需要に対応

患者さんごとのライフステージに応じて幅広い需要に対応

子宮筋腫は治療せずに経過観察になることも少なくありませんが、症状によっては小さくても手術が必要になる場合もあります。生理のときの痛みが強い、出血が長引く、貧血などの症状があれば、まずは病院を受診ください。また、子宮肉腫(子宮の筋肉や間質などの組織から発生する悪性腫瘍)との区別が難しい場合もあり精密検査が必要なこともあります。
また、手術が必要と言われても、育児中や仕事をしている方は、手術を受けるタイミングについて悩まれると思います。当院では、半年間処方が可能な薬を使用して筋腫の拡大を抑えつつ、患者さんのご都合に合わせて時期を計画しながら手術を行っています。たとえば、お子さんが長期休みに入ったタイミングなど、ご家庭の事情においても無理のない方法で治療に臨めるようバックアップいたします。

大きな子宮筋腫も腹腔鏡下で対応――体への負担軽減を追求

子宮筋腫の治療では、確実な治療を目指すことはもちろん、治療後の見た目にも配慮したいと考えております。当院では、子宮筋腫の治療でも腹腔鏡下手術やロボット支援下手術を取り入れており、できるだけ小さな傷で手術を行うことを目指しています。
子宮筋腫に対する手術には、筋腫のみを切除する子宮筋腫核出術と子宮全体を摘出する子宮全摘術の2つの方法があります。当院では各治療法に対応しており、妊娠・出産など、患者さんが望むライフイベントを伺いながら治療法を提案しています。なお、子宮全摘術の場合でも卵巣はできる限り温存して治療を行います。卵巣を温存できれば、手術の影響で更年期障害が引き起こされることはありませんのでご安心ください。

大きな子宮筋腫も腹腔鏡下で対応――体への負担軽減を追求

当院では腹腔鏡下およびロボット支援下による良性腫瘍の手術を年間782件*行っています。通常の子宮は100gほどですが、これまでには1~2kgを超える大きな子宮も腹腔鏡下やロボット支援下に摘出してまいりました。また、2023年からは、へそに1つだけの傷で手術可能な単孔式ロボットを導入し、より傷が少ない手術の選択肢が増えました。
子宮筋腫核出術では、筋腫を切除し、切除部分を縫合するという操作を、筋腫を取りきるまで繰り返し行います。筋腫が大きかったり数が多かったりすると、手術に時間がかかり、それに伴って出血量が増えるため難易度の高い手術ですが、当院では10cm を超える大きな筋腫でもほとんどの場合、腹腔鏡下に摘出可能です。また、入院期間は1週間で、術後4日間程度で退院となります。妊娠の可能性を残せる手術方法ですので、ご希望の患者さんはぜひ当院にご相談ください。

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2023年4月~2024年3月。子宮内膜症や子宮筋腫などの手術実績。

体の表面に傷がつかない手術方法も提案

また、子宮全摘術の場合、出産経験のある方や患者さんの体の状態に応じて、vNOTES(ヴィノーツ)という腟から内視鏡を挿入して筋腫を摘出する手術方法を提案できる場合もあります。この方法ではお腹の表面に傷がつかないため、患者さんの体への負担がさらに軽減できます。当院では、このvNOTESを年間105件(2023年4月~2024年3月)行っており、国内で初めてロボット支援下でのvNOTESを行った実績もあります。術野が狭いため難度が高い手術ですが、当院では経験を重ねた医師が執刀することで可能な限り安全な手術を目指しています。腹腔鏡下手術よりもさらに患者さんに負担の少ない手術といえますので、子宮筋腫の治療方法でお悩みの方はぜひ一度ご検討ください。

解説医師プロフィール
柳井 しおり 先生
柳井 しおり先生
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子宮内膜症の治療

スピーディーな診断と患者さんに寄り添った診療を両立

スピーディーな診断と患者さんに寄り添った診療を両立

子宮内膜症を正しく診断するには、MRI画像の読影技術がカギとなります。特に深部子宮内膜症は子宮と直腸の間にあるくぼみに発症することが多く、多くの臓器が集まる場所でもあるため、画像診断が難しいとされています。当院放射線科では年間に6,001件*のMRI画像診断を行っており、この読影実績の積み重ねが、診断の精度向上につながっています。
画像診断の結果、手術が必要と判断した場合は、受診いただいた当日に術前検査を行うことも可能です。とはいえ手術に臨む際には、患者さんの心の準備ができていることが大切です。当院では迅速な診断を心がけつつも、患者さんの気持ちに寄り添い、安心して治療に専念できるよう努めています。特に子宮内膜症治療では卵巣を温存すると再発しやすいという特徴があるため、妊娠のご希望を含め将来を見据えたうえで、患者さんとしっかり相談しながら治療方法を決定いたします。

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2023年4月~2024年3月

腹腔鏡下やロボット支援下手術を活用し患者さん思いの子宮内膜症治療を実現

腹腔鏡下やロボット支援下手術を活用し患者さん思いの子宮内膜症治療を実現

子宮内膜症は発生する部位によってその重症度や治療の難易度が異なります。当院は腹腔鏡下およびロボット支援下手術による難度の高い治療を得意としており、東京から手術を受けに来られる方もいらっしゃいます。開腹手術よりも出血が少なく回復も早いので、可能な限り腹腔鏡下手術を提案しています。当院の場合、基本的には術後4日で退院が可能です。
特に前述の深部子宮内膜症の治療には、腹腔鏡下手術が有用と考えています。臓器が集まっている箇所に発生するため直腸などに孔を開けてしまうリスクが高く、手術には高い技術が求められますが、腹腔鏡下手術ではカメラを病巣に近づけることができるため、取り残しを少なくして治療できる利点があります。もちろん、病巣をどこまで摘出するかは医師の見極めが非常に重要であり、経験を重ねた医師による治療が不可欠と考えています。当院は腹腔鏡下手術による良性腫瘍の手術を年間782件*行っておりますので、ぜひ頼っていただければと思います。

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2023年4月~2024年3月。子宮内膜症や子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術およびロボット支援下手術の実績。

難易度の高い腹腔鏡下手術にも対応

当院では、腸や尿管などほかの臓器に浸出している重症の子宮内膜症にも腹腔鏡下手術で対応しています。尿管や腸、血管を傷つけずに病巣を取りきる必要があるため難易度の高い症例といえますが、当院では私(安藤 正明)をはじめ、経験を重ねた医師が執刀しております。また、ロボット支援下手術で精密な手術を実現しており、極限まで取り残しのない治療を追求しています。
これまで子宮内膜症治療について学会発表も精力的に行ってきたため、県外の病院から患者さんをご紹介いただくこともあります。私たちはこれまでの実績と技術に基づいて、患者さん一人ひとりにやさしい治療を提供できるよう努めています。

解説医師プロフィール

肺がんの治療

低侵襲な手術と肺機能温存術式で患者さんのQOL向上を目指す

がんの手術においては根治性(がんが治ること)と安全性が大前提と考えています。私は“不安を抱える患者さんをお待たせせず、いち早く手術につなげること”をモットーとして肺がん治療に注力してきました。当院は2022年8月に呼吸器外科を開設し、患者さんの体への負担が小さい低侵襲でかつ(区域切除などの)肺機能を温存できる手術にこだわり、患者さんの生活の質(QOL)を維持できるよう努めています。
肺がんの手術において、当院では完全胸腔鏡下手術で行うことがほとんどです。当科では原則、体に25mm、15mm、6mmの3つの孔を開け、そこからカメラや手術器具を挿入してがんの切除を行います。孔を1つだけ開けて行う方法などもありますが、当院ではこの小さな3つの穴を開ける方法が低侵襲性と安全性・確実性のバランスの取れた方法だと考えております。

低侵襲な手術と肺機能温存術式で患者さんのQOL向上を目指す

ロボット支援下手術では、体にロボットアームを挿入する1cmほどの4つの孔と、肺を取り出す2.5cmの孔を開けて行います。傷の数は胸腔鏡下手術より増えますが、それぞれが小さく、同じ肋間ろっかんに入れるため、痛みが強くなる印象はありません。 これら2つのアプローチに大きな違いはなく、当院ではどちらも可能ですので、基本的には患者さんの意向に沿って治療方法を決めています。
術式(がんの切除方法)に関しては、肺機能の温存に有効な区域切除が増えています。区域切除は切除する範囲を小さくしつつ、がんをしっかり取りきる必要があるため、一般的に通常の肺葉切除より術者の技術が必要な手術といわれています。当科ではこの術式を低侵襲な胸腔鏡下やロボット支援下でも同様に実施しています。術後の早期回復が見込めることは早期復職、さらには経済的な負担軽減につながると考えています。肺がんの治療でお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひお早めに当院へお問い合わせください。

各診療領域を専門とする医師陣のバックアップで治療を支える

なるべく早い回復・退院を目指すためにも、術前に呼吸訓練に取り組んでいただいています。これによって手術の影響で肺活量が減っても、術後に運動制限なく呼吸がしやすく、早期回復が見込めます。当院では手術までを迅速に進めているため限られた時間で取り組んでいただくものになりますが、術後の生活を見据えて患者さんと私たちで力を合わせて治療に臨めればと思っています。

各診療領域を専門とする医師陣のバックアップで治療を支える

肺がん治療において重要なことは、肺がんの診断・治療に慣れた病院をできるだけ早く受診し、経験豊富な医師の診察を受けることだと考えています。また、呼吸器内科、呼吸器外科を専門とする医師たちの意見を総合して決定した治療を可能な限り早急に開始することも大切です。当院は呼吸器外科専門医、がん薬物療法専門医のほか、放射線診断専門医、放射線治療専門医*が密に連携を取り、患者さん一人ひとりに適した治療方針を導き出しています(2024年8月現在)。迅速に治療に取り掛かれる体制も整えておりますので、不安を解消しながら一緒に治療を行っていきましょう。

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呼吸器外科専門医から、それぞれ呼吸器外科専門医合同委員会、日本臨床腫瘍学会、日本医学放射線学会、日本放射線腫瘍学会・日本医学放射線学会による認定。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年8月30日
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