福岡糸島医療圏の医療

福岡糸島医療圏の医療

高度急性期から回復期まで提供できる
体制構築が求められる

福岡糸島医療圏における高齢化率は22.84%となっており、全国平均と比較すると高齢化率は低い傾向にあります。しかし、周辺地域である春日市では23.63%、筑紫野市では26.57%と高い状況です(2024年4月時点)。福岡市において救命救急や緊急性の高い医療(高度急性期、急性期)を担う医療機関は多い一方、そこから回復し在宅復帰を目指すための医療(回復期)を担う医療機関が少し不足しています。地域の中で住民が必要な医療が受けられるよう、高度急性期から回復期の医療を提供できる体制を整える必要があるでしょう。

福岡糸島医療圏を支える
国立病院機構 福岡病院

福岡糸島医療圏を支える 国立病院機構 福岡病院

呼吸器疾患・アレルギー疾患のある
患者さんを幅広くサポート

1926年に設立された当院は、2026年に100周年を迎えます。大正・昭和・平成・令和と時代は移り変わりましたが、呼吸器疾患の診療が柱である点は一貫して変わりません。呼吸器内科には11名の医師が在籍しており、それぞれの専門領域を生かすことによって急性期から慢性期までの幅広い呼吸器疾患に対応できる体制を整えています(2024年7月時点)。
また、当院は2019年4月に福岡県アレルギー疾患医療拠点病院の指定を受けました。アレルギー科をはじめ、小児科や呼吸器内科などアレルギー疾患に関わる複数の診療科や多職種のスタッフが連携を図ることによって、包括的なアレルギー診療の提供を行っています。
今後も引き続き医療技術の向上に努めるとともに、“患者さんに優しい病院”を目指してまいります。

国立病院機構 福岡病院で行う
喘息・慢性閉塞性肺疾患・アレルギー・肺炎の診療
喘息・慢性閉塞性肺疾患
アレルギー・肺炎の診療

喘息の診療

迅速な喘息の診断、治療に
つなげるための検査を実践

喘息の診療

喘息では、症状や気道の状態、アトピーの有無などに基づき診断を行います。気道の状態を調べるための肺機能検査(気道可逆性検査や呼気NO検査)、アトピーやほかの病気の有無を確認するための血液検査や画像検査などを実施します。ただし、緊急性が高く気道の状態を確認するために必要な検査ができない状態と医師が判断した場合には、喘息の治療をまず行いその反応性の結果から診断することもあります。
当院の喘息診療における強みの1つは、気道過敏性検査を実施できる点です。肺機能検査や血液検査だけでは喘息かどうかを判断するのが難しい場合、気道過敏性検査を行うことが喘息診断の参考になると感じています。

福岡病院における喘息治療

安定期における成人の喘息治療は、重症度によって4段階に分かれています。どの段階においても吸入ステロイド薬が治療薬の中心となり、重症度が上がるにつれて吸入ステロイド薬を増量するとともに、作用の異なる気管支拡張薬などを追加していくのが基本の治療となります。
これらの治療を行っていたとしても、急に発作が起こることもあります。その場合、まず気管支拡張薬や経口/点滴ステロイド薬による薬物療法を行い、酸素不足があれば酸素吸入、酸素吸入を行っているにもかかわらず呼吸不全が悪化する場合にはや人工呼吸なども検討します。当院では、呼吸器内科医による総合的な判断に基づき治療方針を決定しています。
また、喘息の治療では生活習慣の改善も重要です。特に喫煙は呼吸機能の低下だけでなく治療薬の効果が低減してしまいますので、喫煙されている患者さんに対しては禁煙するように伝えています。

診療科が連携を図りながら
喘息診療に尽力

患者さんが15才未満であれば小児科、15歳以上であれば内科で診療していますが、その移行期の喘息治療も大切です。これは、成人の喘息のうち小児から移行・再発する患者さんがそれぞれ30%ほどいることが理由に挙げられます。移行期には小児科から呼吸器内科などにかかりつけを変更することになりますが、それを理由に喘息の治療を中断しないでいただきたいと思います。小児科の先生と連携しながら「喘息という病気を理解し、治療を継続する大切さ」を伝えるように心がけています。

喘息の診療

当院ではアレルギーセンターを設置し、喘息患者さんの合併症の管理をアレルギー科・小児科・耳鼻咽喉科じびいんこうかなどと連携しながら喘息患者さんの合併症の管理にも対応しています。たとえば、アスピリン喘息が疑われる患者さんに対しては、アレルギー科にて消炎鎮痛薬に対する薬物負荷試験を、また耳鼻咽喉科にて鼻茸はなたけの有無を診察いただきます。検査の結果、アスピリン喘息の診断がつけば、呼吸器内科にて喘息治療と並行して服薬指導を行い、各科で連携しながら治療を進めていきます。
当院には、日本呼吸器内科学会認定の呼吸器専門医が多く在籍しておりますので、咳や痰、息切れなどの呼吸器に関する症状にお困りの方は、ぜひ一度当院を受診ください。

解説医師プロフィール

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療

早期発見・治療のために地域へ
積極的な情報発信を行う

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療

慢性閉塞性肺疾患まんせいへいそくせいはいしっかん(COPD)は、早期から生活の質を低下させる呼吸器疾患です。40歳以上の人口の8.6%が罹患するといわれており、潜在患者数は約530万人と推定されているものの、そのほとんどは未診断・未治療であることが課題といえます。
こうした方の受診につなげるべく、当院では呼吸器以外を専門とされている地域の先生方と勉強会を開催したり、講演会などを積極的に行ったりして、医療従事者の方に向けたCOPDに関する情報発信に努めています。これらの取り組みによって、かかりつけの病院やクリニックに通院されている患者さんの中で呼吸器疾患を疑う方がいた場合には当院を紹介いただき、COPDをはじめとする呼吸器疾患の早期診断・早期治療につなげたいと考えています。

包括的呼吸リハビリテーションで多職種連携に注力

COPDの治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。薬物療法は、気管支拡張薬の吸入を中心に、患者さんの症状や増悪頻度などを参考にしながら、ガイドライン(治療指針)に基づいて適切な薬剤を選択します。当院では、COPDに特化した問診票を用いることで、できるだけ客観的かつ正確に症状の強さや変化を評価しています。気管支拡張薬は、吸入器の操作を習得する必要があるため、吸入指導にも力を入れています。当院で実施している指導内容を一冊にまとめた『吸入指導マニュアル』を福岡市南区薬剤師会に配布して、調剤薬局でも福岡病院と同じ吸入指導が受けられるようにしました。また、薬袋QRコードを印刷して、吸入指導の動画をいつでも視聴できるようにもしました。
当院が特に注力しているのが非薬物療法である包括的呼吸リハビリテーションです。呼吸訓練・運動療法・生活指導・栄養指導を4本柱に、日常生活の場面に即した具体的な内容の指導を提供しています。医師・専門看護師・理学療法士・管理栄養士など多職種のスタッフがカンファレンスで話し合いながら、一人ひとりの患者さんに必要なプログラムを作成しているので、その患者さんに適したリハビリテーションを実施できています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診療

呼吸訓練には、息切れや呼吸困難を起こりにくくする口すぼめ呼吸や腹式呼吸、気管支に溜まった痰を効率よく吐き出すための排痰訓練が含まれます。生活指導では、入浴やトイレで息苦しさを感じにくくする動作の工夫など、具体的な指導もいたします。栄養指導では少量でもバランスよく効率的にエネルギーや栄養素を摂取できる食材や献立の提案をしています。血液中の酸素が低下している患者さんには在宅酸素療法を導入しています。1〜2週間の入院で、呼吸状態に応じた酸素流量を設定し、自宅で使用する酸素濃縮器や通院など外出時に使用する酸素ボンベの使い方を、自分でできるようになるまで丁寧に指導しています。指導内容には、災害時の対処法も含まれています。またCOPDに対して最近保険適用になった新しい酸素療法「在宅ハイフローセラピー」も導入しています。保険適用になる以前に当院は在宅ハイフローセラピーの医師主導型治験に参加した実績があり、その際の経験を酸素流量の設定や機器の取り扱いの指導に活かしています。

3週間以上、咳や痰が続く方は
一度病院へ

かぜをひいていない、あるいは治ったにもかかわらず咳や痰が3週間以上続く場合には、COPDなど慢性呼吸器疾患の可能性が疑われます。また、同世代の方と比べて息切れしやすい場合も、年齢のせいではなく肺の病気があるのかもしれません。COPDは健康寿命(日常生活が問題なく送れる期間)が損なわれるだけでなく、早期から日常生活の質が低下する病気ですので、上記の症状が当てはまる方は一度当院で検査を受けていただきたいと思います。

解説医師プロフィール

アレルギー科、アレルギーセンターの診療

成人の食物アレルギー診療、負荷試験にも対応

アレルギー科、アレルギーセンターの診療

当院のアレルギー科は皮膚科・内科・小児科・呼吸器内科の専門的な知識を有するアレルギー専門医*が在籍し、耳鼻咽喉科の先生とも協力して包括的なアレルギー診療を行っています。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、気管支喘息、薬剤アレルギーなど、アレルギー疾患は多岐にわたり、各種アレルギー疾患は相互に関連することがあります。当科ではカンファレンスを実施し、それぞれの専門性を生かしながら、多角的な視点から一人ひとりの患者さんに合わせた検査方法や治療法を提案しています。
また、成人の食物アレルギーの診療・アナフィラキシー精査を目的とした負荷試験に力を入れている医療機関の1つであり、小児から成人への移行期にある患者さんに対してもスムーズに診療ができる体制を整えています。患者さんやご家族が日常生活の不安を少しでも減らせるように生活指導や治療のサポートを行っておりますので、アレルギー疾患に関する悩みがある方は一度当科にご相談ください。

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日本アレルギー学会 認定資格(2024年7月時点:4名)

アレルギー科、アレルギーセンターの診療

アレルギー科における取り組み―小児のアレルギー診療の強み

当院では、難治性喘息と診断されたお子さんに対しては、生物学的製剤(喘息の原因物質に作用するように遺伝子組み換え技術などを用いて作られた薬)の導入を積極的に行っています。アトピー性皮膚炎の診療では皮膚科医と連携しながら、治療の基本となるスキンケアや外用薬を適切に使用するためにスキンケア入院にも対応しています。また難治症例に対しては分子標的薬(特定の分子の機能を阻害する薬)の導入も実施しています。
現代の情報社会の中ではアレルギーに関する情報があふれていて、お子さんのアレルギー治療をどのように進めていけばよいか悩んでしまう親御さんもいるのではないでしょうか。当院では、アレルギーに関して専門的な知識を有する医師ならびに医療スタッフがきめ細やかに対応できる体制を整えています。今の治療でよいのか悩んだときや、アレルギー疾患で困っている際などにはお気軽に当院の小児科にご相談ください。

アレルギー科、アレルギーセンターの診療

アレルギーセンターが地域において担う役割

当院は、都道府県アレルギー疾患医療拠点病院に指定されており、小児から成人まで幅広くアレルギー疾患に対応できる点を強みとしています。2024年7月現在、福岡県で唯一の拠点病院であり、福岡県内の病院やクリニックの先生方などが治療に苦慮されるような患者さん、難治の患者さんをご紹介いただき、検査や治療を進めていく役割を担っています。また、福岡県にお住まいの方々にアレルギーセンターのホームページを通じて、動画やSNSなどでアレルギー疾患や治療に関する情報発信を積極的に行っています。

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福岡病院アレルギーセンターのFacebook・Instagramでは
アレルギー講習会やスキンケア教室の開催情報など各種お知らせを随時更新しています。

診療・情報提供のほか、人材育成にも力を入れています。その1つとして、小児アレルギーエデュケーター(日本小児臨床アレルギー学会により認定)やアレルギー疾患療養指導士(アレルギー疾患療養指導士認定機構により認定)の資格を有する看護師や薬剤師、管理栄養士を育成しています。また、地域の保育園や小学校などに緊急時のアレルギー対応の講義を行う役割も担っています。しかし、当院のスタッフだけで福岡県全域を回り、緊急時の対応に関する指導を行うことは困難です。そこで、アレルギー疾患を専門とする医師や医療従事者との連携も図り、講習会等も定期的に開催し、緊急対応の指導ができる医療者の育成にも取り組んでいます。

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祝日、お盆、年末年始を除く(2024年7月時点)

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解説医師プロフィール

小児・成人の肺炎診療

小児の肺炎診療―重症例や呼吸リハビリテーションに対応

当院の小児科ではアレルギー疾患を有するお子さんを多く診療しているため、肺炎や気管支喘息の急性増悪を合併して入院される患者さんが多いように思います。当院では肺炎診療だけでなく気管支喘息の管理、つまり喘息発作時の治療、呼吸器管理から退院後の治療の調整までを適切に行える点が強みです。
気管支に痰が詰まって無気肺(空気がなくなり肺がつぶれた状態)を合併することがあります。すると、酸素吸入器がなかなか外せず入院期間が延長する場合があります。当院では、気管支に痰などが詰まることを防ぐための呼吸リハビリテーション(痰を排出させる方法を習得するためのリハビリテーション)に力を入れて、患者さんの早期回復を目指しています。

小児・成人の肺炎診療

当院には、肺炎を含む小児の呼吸器疾患を有する患者さんへのリハビリテーションにも対応可能なスタッフが多く在籍しており、無気肺が確認された時点から呼吸リハビリテーションを開始しています。小児の呼吸器疾患に対するリハビリテーションを提供できる施設はあまり多くないので、当院の大きな強みだと考えています。

かぜとの違いは3日が目安、ただし疑わしい症状があれば早期受診を

特にお子さんの場合、かぜなのか肺炎なのか見分けるのが難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。通常のかぜ (上気道炎) であれば、発熱、鼻水や咳などの呼吸器症状は、発症から3日目あたりで症状のピークを越えて、1週間ほどかけて症状が回復します。したがって、かぜの発症から3日目の症状の改善の程度を目安に一度医療機関を受診いただくことをおすすめします。ただし、3日経過していなくてもお子さんが飲食できなかったり、睡眠が取れていなかったり、ぐったりしている様子が見られたりする場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

成人の肺炎診療―チーム医療で患者さんをサポート

肺炎には、細菌性肺炎や誤嚥性肺炎ごえんせいはいえん(食べ物や唾液などが誤って気道に入ることで発症する肺炎)、間質性肺炎、薬が原因で生じる薬剤性肺炎などさまざまな種類が存在します。特に高齢の方は体力が低下していたり、食物などを飲み込む機能が低下していたりするので、細菌性肺炎や誤嚥性肺炎になりやすい傾向にあります。
当院の呼吸器内科には日本呼吸器学会認定の呼吸器専門医が多く在籍しており、これらの幅広い肺炎診療に対応できる体制を整えています。
肺炎などの呼吸器疾患で当院に入院された場合には、多職種のスタッフが連携しながら治療と呼吸器リハビリテーションを進めています。また、退院される際にはご家族をはじめ地域の先生方、介護保険施設の方々と協力しながら退院後に患者さんが安心して生活できるような環境整備にも尽力しています。

小児・成人の肺炎診療小児・成人の肺炎診療

高齢の方に不調がみられる場合には一度受診を

かぜをきっかけに気管支肺炎などを発症することもあるため、ご自身でかぜか肺炎かを判断するのは難しいと思います。ただ、咳や鼻水といった症状以外に痰が出る、特に黄色や緑といった色のある痰を伴っている場合には、肺炎の可能性を疑って一度当院を受診いただくことをおすすめします。
高齢の方では、認知機能の低下などのために症状を訴えるのが難しかったり、典型的な肺炎症状が出なかったりする場合もあります。ですから、ご家族や周囲の方は食欲低下や体調不良な様子が見られた際には肺炎を疑って、早期受診・早期治療につなげていただきたいと思います。
なお、65歳以上(特定の基礎疾患がある方は60歳以上)の方は、肺炎予防策の1つとして肺炎球菌ワクチンの接種を検討いただくのもよいでしょう。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年8月30日
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