大阪市北区の脳神経医療
高齢化率は低く、医療資源が豊富なエリア
大阪市北区は市の中心に位置し、超高層ビルが立ち並ぶビジネス街から大規模なショッピング街まで、多くの人で賑わうエリアです。2015~2020年における人口増加率は全国平均を大幅に上回る一方、高齢化率は全国的にみて低いのが特徴です。2022年の国勢調査によると、人口10万人あたりの医療施設数および医師数は全国平均を大きく上回っています。多様な医療ニーズに応えられる体制が整っているといえますが、都市特有の健康課題への対応や、将来的な人口構成の変化に備えた医療体制の拡充は今後の重要な課題です。
大阪市北区の脳神経医療を支える
加納総合病院
切れ目ない医療サービスを提供する
「地域密着型ケアミックス急性期病院」
加納総合病院は大阪市北区に位置する総合病院です。急性期から慢性期、リハビリテーション、そして在宅医療や介護まで、切れ目なく提供できる「地域密着型ケアミックス急性期病院」として、地域の皆さんが必要とする医療サービスを幅広く提供しています。
地域の開業医の先生方との連携体制も強めており、患者さんが退院された際や再入院が必要な場合に診療情報をスムーズに共有しあうことができます。
もしけがや病気に見舞われたとしても、救急や手術などの急性期治療、回復に向けたリハビリ、退院や社会復帰といった過程を経て、住み慣れた地域で最期を迎える「輪廻転“床”」の人生をサポートできるよう、当院ではこれからも地域に根ざした切れ目ない医療を提供してまいります。
加納総合病院の
脳卒中・認知症の治療
脳卒中の治療
地域の脳疾患医療の中核的役割を担う
当院の“脳卒中センター”は、日本脳卒中学会により、24時間365日いつでも脳卒中患者さんを受け入れ速やかに診療可能な “一次脳卒中センター(PSC: Primary Stroke Center)”として認定されています。さらに、脳卒中治療の中でも高度な技術が求められる“機械的血栓回収療法”が常時提供可能な“PSCコア施設”としての認定も受けています。“PSCコア施設”は大阪市内では15施設あり(2024年10月時点)、当院はその1つとして市内の脳卒中治療の中核的役割を担っています。
救急科には脳神経外科医や脳神経内科医が常駐しており、運ばれた患者さんに脳卒中の疑いがある場合に、初期診断から治療までを迅速に行うことができます。
時間との戦いになる脳卒中治療を、常時施行可能
脳卒中とは脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害を総称したものです。その中で最も多い脳梗塞の主な治療方法として、“rt-PA静注療法”と“機械的血栓回収療法”があります。t-PA静注療法は、発症から4.5時間以内に血栓を溶かす薬を投与する治療法で、どのタイプの脳梗塞にも対応可能です。
t-PA静注療法の適用時間を過ぎてしまっていても、“血栓回収療法”で対処できる場合があります。血栓回収療法は、“主幹動脈”という太い血管に血栓が詰まってしまった際に、カテーテルを使ってそれを直接取り除く治療法です。
これらの治療を24時間365日いつでも行える体制があるのが当院の強みです。
他科との連携体制や協力
当院の“脳卒中センター”は、脳卒中相談窓口、脳神経外科、脳神経内科をはじめ、救急科とリハビリテーション科で構成されており、救急の患者さんに迅速な初期診断や治療を行うことが可能です。その後の入院では“ストロークケアユニット(SCU)”という専属スタッフが常駐する病床にて脳外科を専門とする看護師が24時間モニタリングしながら症状の悪化がないかを見守っています。呼吸管理が必要な重症の方や持続的な血圧管理が必要な方など、全身状態の集中治療が必要な方の場合でも、高度治療室(HCU)を担当する看護師たちは脳卒中に関するトレーニングを受けているので、適切に対応できます。
急性期を経てその後の回復に向けたリハビリテーションの段階においても、脳卒中におけるリハビリの知識を持ったスタッフがサポートを行います。PT(理学療法士)、OT(作業療法士)による運動機能のリハビリだけではなく、ST(言語療法士)や耳鼻科の先生に嚥下機能を評価してもらったり、寝たきり状態による皮膚トラブルにおいて褥瘡の悪化を防ぐために形成外科の先生に関わってもらったり、排泄ケアについて泌尿器科の先生にサポートしてもらったりと、さまざまな職種の連携によって患者さんの回復を支えています。
脳動脈瘤の外科治療患者さんにとってよい選択ができるように
脳動脈瘤とは、脳の血管にできる膨らみで、破裂するとくも膜下出血を引き起こします。
脳動脈瘤に対する手術は主に“開頭術”と“血管内治療”の2種類があります。
開頭術の代表は、頭蓋骨を開いて動脈瘤の根元を小さなクリップで留め、血流を遮断する手術です。未破裂脳動脈瘤(まだ破れていない動脈瘤)はもとより、脳動脈瘤が破裂した際の治療法としても有効です。脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血(脳を覆う膜の下に出血が起こる状態)を起こし、脳内の圧力(脳圧)が急激に上昇します。そのため、開頭して脳圧を下げ、出血を洗い出し、破裂した動脈瘤の根元にクリップをかけて再出血を防ぎます。開頭術のメリットは、急上昇した脳圧を早期に下げることができ、出血を直接洗い出すことができる点です。
一方、血管内治療の代表は”コイル塞栓術”で、開頭せずにカテーテルを使用して血管の中から動脈瘤内にコイルを詰めることで動脈瘤破裂を予防します。
未破裂脳動脈瘤の場合、脳圧は上昇しておらず必ずしも開頭する必要はありませんが、脳動脈瘤の位置や大きさ、形状によっては開頭術の方が安全に治療できる場合があります。
どちらを施行するかは、できる限り患者さん本人の意思を尊重するのが当院の治療方針です。医師として、患者さんの状態に応じてシンプルかつ安全な方法を考えて提案しますが、一方的に決めるのではなく、ご本人が納得いく選択ができることを大事にしています。意識がなく意思表示ができない状態の患者さんであっても、本人が発しているサインを感じ取るようにし、ご家族とも相談して治療を進めていきます。
未破裂脳動脈瘤の場合は脳内の圧力が高まっている状態ではないため、開頭が必ず必要なわけではありません。
どちらを施行するかは、できる限り患者さん本人の意思を尊重するのが当院の治療方針です。医師として、患者さんの状態に応じてシンプルかつ安全な方法を考えて提案しますが、一方的に決めるのではなく、ご本人が納得いく選択ができることを大事にしています。意識がなく意思表示ができない状態の患者さんであっても、触れたり観察したりして本人が発しているサインを感じ取るようにし、ご家族とも相談して治療を進めていきます。
日々心を磨き、患者さんの信頼に応える医師でありたい
当院の診療理念は、当科の主任部長、宮田の恩師である上山 博康先生から受け継いだ教えが基になっています。
高い技術を備えたうえで患者さんの信頼に応えるため、大切にしているのは医師として「心を磨く」ことです。どんなに小さな処置でも一切手を抜かず、真摯に目の前の患者さんに向き合い、信頼に応えられるよう努めています。
「迷ったときこそ、困難な道を選びなさい」といった教えもまた、当科の診療の軸となっており、たとえ脳神経外科に直接関わらない患者さんであっても救急車の要請をなるべく断らない方針を貫いています。
脳外科を持つ近隣の病院や開業医の先生方と連携しながら、地域医療に全力で貢献できるよう努めて参りますので、脳疾患に関してご不安やお困り事がある場合は、ぜひ一度当院・脳卒中センターの“脳卒中相談窓口”へお気軽にご相談ください。
脳疾患の後遺症に対するケア脳疾患の後遺症と社会復帰に向けた支援
脳卒中などの脳疾患を経験すると、後遺症が残ることがあります。主な後遺症としては、手足が動かしにくくなる麻痺症状、言葉が上手く出なくなる失語症、視野が狭くなる視野障害などがあります。
後遺症の程度は、脳にどのくらいのダメージがあるか、発症した場所や患者さんの年齢などによって異なりますが、リハビリを通じて可能な限り機能を回復し、患者さんが少しでも元の生活に戻れるようサポートします。リハビリは、できる範囲での生活や就労を目指して、患者さん一人ひとりに合わせた支援を行います。
脳卒中相談窓口チームが受診相談から社会復帰まで一元サポート
当院の脳卒中センターには“脳卒中相談窓口”を設けており、地域の皆さんが気軽に相談できる窓口としての役割だけではなく、実際の治療やリハビリ、その後の社会復帰まで一元的にサポートする役割を担っています。相談窓口チームに所属するソーシャルワーカーが中心となって、患者さんを地域の福祉サービスへ適切におつなぎし、退院後の生活をスムーズに行えるように支援します。
「何かおかしい」と感じたら速やかに受診“0次予防”に力を入れる理由
“Time is Brain(時は脳なり)”という言葉があります。これは、脳のダメージは時間とともに広がるため、脳疾患の治療は時間との勝負だということを示しています。「何かおかしい」と感じたら即座に受診することが重要です。そのためには日ごろから意識づくりをしておく必要があり、このような発症前に行う予防療法を “0次予防”と呼びます。当院の“脳卒中相談窓口”では地域住民の皆さんに向けた啓発活動など0次予防にも力を入れています。
手足がしびれたり顔面がピクピクけいれんしたりする症状がある場合は、脳疾患の可能性が否定できません。また、くも膜下出血などは遺伝性があるといわれているので、症状がない場合でもご家族に脳疾患を患った方がいる場合には受診してみてもよいかもしれません。気になることがある方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。
当院の脳卒中センターは24時間365日いつでも救急治療ができる体制があり、“脳卒中相談窓口”も気軽に利用いただけるので、ご不安なことがあればぜひ一度ご相談ください。
認知症の治療
種類によって異なる認知症の特徴や原因
認知症とひとくちに言っても、その種類はさまざまです。当院で特に多いのは「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」です。まず、アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβタンパクという物質がたまり、それが神経細胞にダメージを与えることで発症します。初期症状としては、物忘れが多くみられ、進行すると徘徊や妄想などの行動・心理症状が現れ、重度になると寝たきり状態となる場合もあります。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管の病気によって認知症になった状態です。脳梗塞などが脳のどの部位で発症したかによって症状は異なりますが、ほかの認知症でもみられる記憶障害や見当識障害のほか、運動麻痺、感覚障害や嚥下障害などの神経症状がみられる場合もあります。このタイプの認知症は、高血圧や糖尿病、喫煙などの生活習慣が大きなリスク要因ですので、生活習慣を改善することで発症を防ぐことができるとされています。
また、当院の特徴として、治療が可能と言われる特発性正常圧水頭症も多数診療しています。歩行障害と尿失禁から始まることが多いですが早期の診断が大切です。
全ての病気にいえることですが、認知症においても予防が何よりも大切です。体を動かしたり、頭を使ったり、人と交流したりとどれも日常生活の中でできることばかりで当たり前と思われていますが、いずれも認知機能の維持に役立つ科学的なエビデンスが示されています。
複数の検査で症状や効果的な治療を判断。薬の調整も重視
当院の“認知症外来”では、患者さん一人ひとりに適した治療を提供するため、詳細な問診とさまざまな検査を実施することで症状の的確な把握に努め、段階に応じた効果的な治療を判断しています。
“血液検査”で甲状腺機能の低下やビタミン不足など、物忘れにつながる可能性のあるほかの病気が隠れていないか確認し、その後MRI検査で脳の形態に異常がないかをチェックします。そのうえで、“長谷川式簡易知能評価スケール”、“MMSE(ミニメンタルステート検査)”、”日本語版リバーミード行動記憶(RBMT)”や”レーヴェン色彩マトリックス検査”などの記憶力や認知機能の程度を測る検査を実施しています。
また、患者さんが服用している薬の確認も欠かせません。患者さんが複数の病院を受診し、同じ種類の薬を重複して処方されているケースもあり、特に睡眠導入薬や精神安定薬の過剰な服用は患者さんの心身に支障をきたしかねないからです。
家族の「おかしいな」という気付きが、早期治療につながるケースも
2023年からアルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬が認可され、その使用が増加しています。軽度認知障害ないし軽症アルツハイマー型認知症への治療の全く新しいページが開かれています。レカネマブとドナネマブという新薬です。私たちは積極的にこれらの薬剤による治療を導入しています。認知症は早期発見・早期治療が進行を遅らせる鍵となります。もし、ご自身やご家族が「最近、物忘れが増えた」「何かおかしい」と感じた場合は、他の病気が隠れている可能性もあるので、早めの受診をおすすめします。
当院の「ものわすれ外来」では、充実した検査体制により的確な診断と治療の提供に努めていますので、一度お気軽にご相談ください。
- 公開日:2024年12月4日