院長インタビュー

ケアミックス病院として、急性期から回復期、慢性期まで幅広くカバーする加納総合病院

ケアミックス病院として、急性期から回復期、慢性期まで幅広くカバーする加納総合病院
加納 繁照 先生

社会医療法人協和会 加納総合病院 理事長

加納 繁照 先生

目次
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大阪市北区にある加納総合病院は1953年に加納医院として開設し、2007年に現在の加納総合病院に名称を変更しました。

ハートフルコミュニケーションを合言葉に、救急から介護までシームレスな医療を提供している同院の役割や今後について、理事長の加納 繁照(かのう しげあき)先生にお話を伺いました。

病院外観
病院外観(提供:加納総合病院)

当院は大阪市北区にある総合病院です。1953年に加納医院として開設し、2007年に現在の加納総合病院に名称を変更しました。

現在グループには2つの病院と2つの診療所、1つの老人保健施設、2つの特別養護老人ホームなどがあり、急性期の医療から介護、在宅までシームレスな医療サービスを提供しています。その中心にあるのが当院で、救急医療においては地域の2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。

当院は地域に根ざした医療を提供するため、急性期から慢性期、リハビリテーションから在宅復帰、介護まで、地域の皆さんが必要とする医療サービスをトータルに提供する体制が整っています。

提供している医療のレベルも高く、たとえば脳卒中ではさまざまな脳血管疾患に対応でき、“t-PA静注療法”の経験も豊富です。

地域連携では、私が地元の医師会の会長を3期務めてきたご縁もあり、地元の医師会の先生方とは皆さん顔見知りです。

また、当院の医師も全て医師会に加入しており、私同様に皆さんと親しくお付き合いさせていただいています。こうしたネットワークのおかげで、当院の患者さんが退院する際や、容体が悪化して再入院する際には、開業医の先生方との診療情報の共有がとてもスムーズに進みます。

こうした地域の先生方との連携は、これから目指すべき地域包括システムの在り方なのではないでしょうか。

当院は、大規模災害発生時などに現地で医療行為を行う医療チーム“DMAT隊”を2012年に、全日本病院協会が立ち上げた災害医療チーム“AMAT隊”を2014年に編成しました。

AMAT隊は医師1名・看護師1名・事務員(薬剤師・リハビリテーション技師など)の3名で行動し、2016年の熊本地震を皮切りに本格的な災害支援をスタートさせました。熊本地震でAMAT隊を派遣した際には、支援をした病院の窓に「ありがとう AMAT」と書かれた紙が貼られているのを目にして、災害医療に取り組んで本当によかったと実感しました。

災害医療に積極的に取り組むきっかけになったのは、2011年の東日本大震災です。全日本病院協会に加盟する病院と連絡が途絶えたため、震災から5日ほどたった頃に現地へ向かうと、津波に飲み込まれた病院の上層階に多くの患者さんと医療スタッフが取り残されていました。災害拠点病院になっていた近隣の市立病院には、国や自治体からDMATの派遣や物資の支援が行われていましたが、私立病院には支援が届いておらず、民間病院が取り残されている状況に絶望しました。その体験がAMAT隊の編成につながり、災害発生時には積極的にチームを派遣しています。

新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、当院で多くのコロナ患者さんの方々を受け入れました。受け入れた患者さんの数は11,000名に達し、大阪市内ではトップクラスの多さだったのではないでしょうか。

また、2020年1月にクルーズ船“ダイヤモンド・プリンセス号”で集団感染が発生した際には、当院から医療スタッフを派遣して処置も行っています。こうした対応ができたのは、2011年の新型インフルエンザの流行が懸念された際に、病室内を陰圧に保って汚染物質の拡散リスクを低減する“陰圧装置”を導入していたからです。そのため、感染症対策はほかの民間病院に比べて万全の体制で臨むことができました。

65歳以上の高齢者人口は、2042年までにピークアウトすると予想されています。そこまでは我々民間病院が中心になって、高齢者の皆さんが幸せに暮らしていくためのお手伝いをしなければならないと考えています。

その際に提供したい医療を、私は『輪廻転“床”』型の医療と呼んでいます。疾病発症後の急性期医療、回復に合わせて行うリハビリテーション、自宅に戻って社会復帰というサイクルを繰り返し、最期は住み慣れた地域で天寿を全うしてもらう……、それが輪廻転“床”です。急性期から回復期、そして在宅医療までシームレスにカバーできるのは、地域に密着した医療を提供している民間病院が適していると思っています。

最近の症例別の傾向を見ると、高齢者によくみられる脳卒中や循環器疾患、消化器疾患がピークアウトしようとしており、骨折をはじめとした整形分野の傷病・病気が増えつつあります。

このような変化に対応するため、当院では脳卒中センターをはじめ、整形分野の診療体制の充実を進めています。

今後は高齢者の救急医療と在宅医療がますます重要になると考えており、それに合わせて急性期が終わった後の回復期やリハビリテーション、在宅復帰までカバーする、地域に密着した『輪廻転“床”』型の医療が求められます。

こうした医療が提供できる施設のことを、私は“地域密着型ケアミックス急性期病院”と呼んでおり、その存在感はますます強まっていくと感じています。そのような未来を見据えたとき、その中心に当院がいて、地域の皆さんに質の高い医療サービスを提供していかなければならないと考えています。

大阪府の新型コロナウイルス感染症の対応では、民間病院が新型コロナウイルス感染症の患者さんの多くを受け入れました。災害医療でも民間の病院協会が立ち上げたAMATに協力要請が入るなど、民間病院が日本の医療を支えているシーンが増えてきました。

もちろん、がんをはじめとした高い専門性が求められる診療領域では、集約化が進んだ公立病院にかないません。しかし、地域に密着した『輪廻転“床”』型の医療の領域では、私たち民間病院が適していると自負しています。これからはこうした情報を積極的に発信し、地域の皆さんに民間病院についてもっと知っていただくための努力をしていこうと思っています。

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