新型コロナウイルス感染症
- 同義語
- COVID-19,新型コロナウイルス関連肺炎
概要
新型コロナウイル感染症は、新型コロナウイルスである“SARS-CoV2”による感染症のことです。WHOはこのウイルスによる感染症のことを“COVID-19”と名付けました。2019年12月以降、中国湖北省武漢市を中心に発生し、短期間で全世界に広がりました。2020年7月20日現在、全世界での感染者数は約1400万人にのぼり、死者は約60万人となっています。
新型コロナウイルスは中国で発生したと考えられていますが、アメリカやブラジルなどの南米諸国、スペイン、イタリアなどのヨーロッパ地域でも爆発的な流行が生じ、感染者・死者ともに発祥地の中国を大きく上回った状態となっているのが現状です。日本国内でも、7月19日時点で確認された感染者は全国で約2万4000人にのぼり、984人が命を落としているとのことです。
新型コロナウイルスは世界を震撼させていますが、現在のところ感染経路、治療法、感染してからの経過など、明確には解明されていない部分が多々あります。そのため、世界中の研究機関が新型コロナウイルスの解明に向けてさまざまな調査・研究を急ピッチで進めています。
現状では、エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビルがCOVID-19の治療薬として認可されたことにより、日本でも2020年5月7日に国内初のCOVID-19治療薬として正式に承認されました。今後もさらなる治療薬やワクチンの開発が進むことが期待されています。
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原因
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は新たに発見されたSARS-CoV2に感染することによって発症します。
どのような経緯でSARS-CoV2 が生み出されたのか、またヒトに感染するようになったのかは、いまだに不明です。しかし、中国武漢市の海鮮売場に関連した人で集団発生したことや、後に野生動物の取引エリアからもウイルスが検知されたことから、そこに何らかの原因が潜んでいるとも考えられています。一部にはウイルス研究所などで人為的に作成されたウイルスであるとの懐疑的な意見もありますが、WHOはその見解を否定し、野生動物が起原である可能性が高いと表明しています。
また、新型コロナウイルスは、平均的な感染者よりも著しく多くの人々に感染を広げる“スーパースプレッダー”が爆発的な感染拡大に影響していると考えられており、国内でも特定の集団や利用施設、医療機関から多数の感染者が発生しています。
コロナウイルスは、ヒトを含めた哺乳類、鳥類などに広く存在するウイルスです。コロナウイルスの特徴として、エンベロープ(ウイルス表面の脂質性の膜)上にコロナ(王冠)のようなたんぱく質の突起を持っていることが挙げられます。これを名前の由来とする1本鎖のRNAウイルスです。ウイルスにはエンベロープを持つものと持たないものがありますが、コロナウイルスを含めエンベロープを持つウイルスはアルコールで失活する、変異を起こしやすいという特徴があります。
コロナウイルスは、一般的な風邪をひき起こすウイルスでもありますが、上記のように変異を起こしたり、動物界のウイルスがヒトに感染したりして重大な被害を与えることがあります。なお、2002年に中国広東省から発生したSARS、2012年に中東地域を中心に発生したMERSなどもコロナウイルスの一種です。
症状
新型コロナウイルス感染症は、発熱(37.5℃以上)、喉の痛み、咳、痰などの風邪のような症状で終わる場合が多いとされていますが、なかには高熱、胸部不快感、呼吸困難などが出現し、肺炎へ進展する事例もあります。
また、発症当初は軽度な風邪症状のみしかないにもかかわらず、急激に悪化し人工呼吸での管理が必要な肺炎に進行するケースも多く報告されています。これらの重症化は高齢者や基礎疾患(心血管疾患、糖尿病、悪性腫瘍、慢性呼吸器疾患など)を有する人で多く見られる一方、小児や若年層の中には感染してもほとんど症状が現れない無症状病原体保有者が数多く存在することも判明しました。また、重症化するケースでは免疫作用を担うリンパ球の著しい減少が認められるとの報告もあり、ヒトの免疫異常に何らかの影響を及ぼすことが示唆されています。
中国の国営メディア“新華社通信”の報告によれば、新型コロナウイルス感染症は典型的な肺炎症状だけでなく、下痢や吐き気などの消化器症状、頭痛、全身倦怠感といった一見肺炎とは関係ないような症状が現れることも多いとのことです。このため、診断の遅れにつながり、感染を拡大する可能性もあるとして注意喚起がなされています。
また、日本国内では新型コロナウイルス感染による髄膜炎や重度な副鼻腔炎を発症したケースも報告されています。さらに、新型コロナウイルスは鼻の奥に存在する“嗅上皮”と呼ばれる粘膜に何らかの異常を引き起こす可能性も指摘されており、嗅覚や味覚の異常が生じるケースもあることが分かっています。
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検査・診断
新型コロナウイルス感染症の診断は、これまでの各自治体の地方衛生研究所、国立感染症研究所での遺伝子検査(PCR法)に加えて、3月6日から一部医療機関での保険診療による検査が行われるようになりました。いずれも、症状や感染している人との接触歴などから“肺炎”の発症が疑われる場合に行うこととされていますが、診察した医師の判断で検査が実施できるようになっています。
中国では血液中のウイルスに対する抗体の有無を判定する“イムノクロマト法”による迅速検査キットが承認されており、検査キットの輸入・販売が開始されました。検査キットでは特別な機械を要さずに15分で判定が可能かつ95%の精度を持つとされており、今後の活用が期待されています。また、国内でも抗原検査として、鼻咽頭ぬぐい液からその場で30分程度で判定できる簡易抗原検査(迅速キット)と鼻咽頭ぬぐい液に加えて唾液からも専用の機器を用いて判断する定量抗原検査が使用できるようになりました。後者では機器がある場所まで検体を運ぶ必要がありますが、検査に要する時間は30分程でPCR検査との一致率も高いとされています。一方で各種の抗体検査も利用できるようになりましたが、IgG又はIgMの陽転化が発症後2週間以降であるために直接の診断には利用することはできませんが、流行の影響度を判断するために疫学調査での活用が期待されています。
そのほか、肺炎の重症度を評価する目的で、経皮的な酸素飽和度の測定や、胸部X線検査、胸部CT検査などが行われます。レントゲン写真では分かりにくい病変が、CT検査では分かりやすいなどの特徴も判明しています。
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治療
新型コロナウイルス感染症の治療法は、風邪のような症状の場合には対症療法(熱や咳などの症状を抑える治療)を行いますが、肺炎の場合は酸素投与、全身循環管理に加えて抗ウイルス薬の投与が奏効する場合があります。特に重症な場合には、体外式模型人工肺(ECMO:人工肺とポンプで肺の代替を行う装置)を使用しなければならないこともあります。
抗ウイルス薬としては、アメリカでエボラ出血熱治療薬である“レムデシビル”が新型コロナウイルス感染症治療薬として正式に認可されてことに伴い、厚生労働省も5月7日に国内初の治療薬として承認したことを発表しました。そのほかにも、抗HIV治療薬の一種である“ロピナビル・リトナビル”や新型インフルエンザ用治療薬である“ファビピラビル”などの臨床試験が行われています。また、気管支喘息治療薬である“シクレソニド”も新型コロナウイルスの活性を失わせることが確認されています。
なお、日本感染症学会は“50歳以上で酸素投与が必要な患者”、“基礎疾患があり酸素投与が必要な患者”、“年齢にかかわらず呼吸状態が悪化傾向にある患者”に対して、これらの試験的に使用されている抗ウイルス薬の適応を検討すべきとの見解を示しており、必ずしも感染が確認された全ての患者に適応となるわけではありません。
予防
現在のところSARS-CoV2 は、ヒトからヒトへ感染することが分かっており、主な感染経路は飛沫感染(咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸入)と接触感染(感染者の飛散した唾液や痰などにより汚染された環境に触ることで感染)です。医療の現場では、検査や処置の際にエアロゾルが発生することで感染する(空気中にいつまでも漂う形の病原体によって感染)可能性も指摘されています。
また、感染してから症状が現れるまでの期間は3~5日(最大14日)とされており、それまでの間でも感染を広げる可能性も示唆されています。さらに、新型コロナウイルスは感染したとしても症状が出ないケースが多いことも分かっており、無症状病原体保有者も症状がある感染者と同程度のウイルスを持つとの報告もなされています。そのため、気付かないうちに周囲に感染を広げているケースも多々あると考えられています。
飛沫感染や接触感染の予防には、手洗いや手指消毒を徹底し、マスクの着用が有効です。現在、感染予防のため“マスクの買い占め”が世界的に問題となっていますが、WHOや厚生労働省の見解によれば、医療従事者など発症者と密な接触をする場合は飛沫感染対策として、また咳などの呼吸器症状がある人が着用することは咳エチケットとして、その有用性が認められています。一方で、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、症状がない場合でも外出時はマスクやスカーフなどで鼻と口を覆うよう新たに推奨しており、感染予防についてもさらなる解明が進められているところです。
全国で換気の悪い閉鎖空間における接触感染と思われる事例が散発しており、4月7日には東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県に移動制限や外出自粛を強く要請する緊急事態宣言が発令されました。しかしながら、7月中旬以降、首都圏を中心としたクラスターが発生し、さらには関西地区、中京地区、九州・沖縄地区においても感染者数が多く報告されるようになりました。
イベントに参加した若年者を中心とした発生から、接待を伴う会食に関連したもの、さらに仲間同士の会食、家族内感染、保育所での発生などさまざまな感染が確認、報告されています。まさに第二波の到来といえる状態となりました。軽症者や無症状者は宿泊(自宅)療養が、肺炎などの中等症以上の人には都道府県が指定する医療機関への入院療養となりますが、重症例が増加したり院内感染が発生したりすると医療崩壊のきっかけとなりますので注意が必要です。
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