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インタビュー

新型コロナウイルス感染症を含めた感染症予防における“口腔ケア”の重要性

新型コロナウイルス感染症を含めた感染症予防における“口腔ケア”の重要性
大毛 宏喜 先生

広島大学病院感染症科教授

大毛 宏喜 先生

目次
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世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。私たち人間はこれまでに多くの感染症と闘ってきました。感染症を予防するための方法にはいくつかの種類がありますが、近年では、新型コロナウイルス対策として口腔ケアをしっかりと行うことの重要性が示されています。新しい生活様式の実践が求められる今、私たちはどのような点に配慮するべきなのでしょうか。広島大学病院 感染症科 教授の大毛(おおげ) 宏喜(ひろき)先生に、感染症予防における口腔ケアの重要性についてご解説いただきました。

微生物とは、目に見えない小さな生物の総称です。微生物はどこにでも存在し、私たちの体表面や体内にもたくさんの微生物がいます。微生物には、ウイルス、細菌、真菌、原虫など多くの種類があります。常日頃、私たちはこのように多くの微生物と共に生きています。通常、微生物がいることだけで感染症は起こりませんが、なんらかの要因で微生物が増殖し、体に病的変化を与えることがあります。これを“感染症”と呼びます。たとえば、ウイルスが原因で上気道(口、鼻から喉までの部分)に炎症が起こることを“風邪”と呼び、それよりも先の肺胞を中心に細菌やウイルスで炎症が起こると“肺炎”になります。

素材提供:Pixta

微生物の侵入経路は、口、皮膚、粘膜、性交渉などさまざまです。たとえば、飛沫感染では咳などで出た飛沫を吸い込んだり、飛沫が目や鼻などの粘膜に付着したりすることで感染しますし、接触感染では病原体が付着した物に触れることで感染します。

それでは、感染症を予防するためには何が必要でしょうか。ここでは、インフルエンザを例にご説明します。まず、感染症は病原体(感染源となるもの)、感染経路、宿主(しゅくしゅ)(ウイルスが子孫ウイルスを残すために利用する人間・動物の体など)という3つの要素がそろうことで起こります。そのため、これらの要素を考慮して感染症対策を行うことが重要です。

病原体を排除し、感染経路を遮断するために、日常生活における手洗い・うがいなどをこまめに行うことが大切です。手洗いの方法としては、液体せっけんと流水を使った洗浄、あるいはエタノール含有消毒薬による手指の消毒などがあります。また、くしゃみや咳の飛沫は1〜2m飛ぶといわれていますので、咳エチケットとしてマスクを着用したり、マスクがない場合にはハンカチやティッシュで口と鼻を覆ったりすることも重要です。さらに、宿主となる自分たちの体の免疫力を落とさないために、規則正しい生活を送る、3食欠かさずにバランスのよい食事を取る、十分に睡眠をとる、といった体調管理に努めることも大切です。このような感染症対策については、新型コロナウイルスに対しても同様に心がけるとよいでしょう。

下の画像は、健康な人の口腔内粘膜をこすり取り、顕微鏡で観察した画像です。ピンク色の部分や紫色の点状の部分は全て細菌です。唾液1mlあたり100万個以上の細菌がいるといわれていることからも分かるように、私たちの口の中には相当な数の菌が存在するわけです。

口腔内粘膜の細胞と細菌
口腔内粘膜の細胞と細菌

口腔は、粘膜であると同時に消化器官の一部として外の空気に触れる、特殊な臓器です。口腔ケアを怠るとプラーク(歯に付着した細菌が繁殖した塊)が増加し、歯周病などの病気が発症しやすい環境となります。インフルエンザに関しては、口腔ケアによって口腔内の細菌数を抑えることで、ウイルス感染を起こしにくい環境がつくられると考えられています。つまり、口腔ケアをしっかりと行い清潔な口腔環境を整えることが感染症の予防につながるのです。

しかしながら、自分で行う口腔ケアには限界があります。そのため、毎日の歯磨きなどセルフケアに加えて、定期的に歯科医院でクリーニングを行うことが重要だと思います。一般的に、歯科医院ではむし歯の治療、歯石除去、歯面清掃、必要に応じて口腔内乾燥の治療などが行われます。当然のことながら自力で行う歯磨きに比べて専門的なケアが可能ですので、まず、むし歯や歯周病などの病気がある場合にはそれらを治療しておくこと、そして定期的に歯科医院でクリーニングを行うことを心がけていただければと思います。

日本では定期的に歯科でクリーニングをするという発想があまりなく、“歯科医院は歯が痛くなってから治療のために行く場所”という認識が強いかもしれませんが、これからは歯が痛くなくても定期的に通い、常に健康な口の状態を維持することが大切だと考えています。それは、感染症の予防にもつながります。そのような意味では、今、私たち一人ひとりの意識や習慣を変えていく必要があるのかもしれません。

自分で行う普段の歯磨きに関しても、歯ブラシだけでは磨ききれない場所があるので、歯間ブラシやフロスなどの清掃補助器具を活用するとよいでしょう。実は歯磨きの方法には人それぞれ癖があるので、歯科医院でクリーニングを行う際、ブラッシングの指導を受け、自分では磨きにくい場所・磨けていない場所を把握することも重要です。クリーニングの頻度としては、半年に1回ほどがよいでしょう。

写真:Pixta
写真:Pixta

インフルエンザの予防・重症化の防止には、手洗いや体調管理のほかに、ワクチンの接種が有用とされています。新型コロナウイルスに対するワクチンは多く研究されていますが、まだ実用化されていません(2020年8月時点)。このようななかでも、毎年きちんとインフルエンザの予防接種を受けることは、感染症全体の予防として重要です。毎年秋・冬になると流行する風邪やインフルエンザといった感染症がある前提に加えて、これからはさらに新型コロナウイルス対策を行う必要があるということです。

私たち人間は、これまでに多くの感染症と闘ってきました。今後新型コロナが収束したとしても、またタイプの異なる感染症が問題になる可能性は十分にあります。

ウイルスや細菌などの微生物はどこにでも存在し、あらゆる経路から侵入します。目に見えないほど小さく、しかも完全に防ぐ手立ては現在のところありません。このような微生物、そして感染症と共にある社会においては、今回お話ししたような歯磨きを含む口腔ケアや体調管理、手洗い、咳エチケットなど自分たちのできることを、毎日続けられる対策をしっかりと積み重ねていくことが何よりも重要ではないでしょうか。

これは私見ですが、私たちは新型コロナウイルスと向こう数年は付き合っていく必要があるでしょう。日本では新型コロナウイルス感染症に対して非常に敏感になっていますし、外出自粛にも力を注いできました。感染対策の意識が上がったことで、2019〜2020年の冬はインフルエンザの罹患数が例年に比べて低かったことも事実です。このように、悪い話ばかりではないと捉えることもできます。徹底的にゼロを目指すと大変かもしれませんので、まずは自分にできることを・できるだけという心持ちで、共に頑張りましょう。

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