
国内では2月17日から新型コロナワクチンの医療関係者向け先行接種が始まりました。今後、重症化しやすい高齢者や基礎疾患のある人など、そして一般の方へと段階的に接種が行われます。日本で使われるワクチンには、どのようなものがあるのでしょうか。2月25日時点で分かっている情報をまとめました。
厚生労働省によると、2021年1月20日現在、日本政府は海外3社との間で計3億1400万回分の新型コロナワクチンの供給を受ける契約を締結しています。いずれも2回接種が必要なため1億5700万人分に相当します。
日本でもっとも早く手続きが進んだのが米ファイザー社・独ビオンテック社のワクチンです。欧米では日本に先駆けて承認を取得して接種が行われていました。日本では2月14日に正式承認され 、同17日から医療関係者を対象に先行接種が始まりました。3週間(21日)の間隔を置いて2回の接種が必要です。臨床試験での有効率は95% です。
米製薬ベンチャーのモデルナ社が開発したワクチンは、現在国内臨床試験による検討段階にあり、今後承認申請、審査を経て正式に薬事承認されれば使用可能になります。このワクチンは4週間(28日)の間隔で2回目を接種します。海外で行われた臨床試験では有効率が94%とされています。
英アストラゼネカ社のワクチンは、英オックスフォード大学と共同開発したもので、日本での使用に向けて承認審査中です。このワクチンも4週間間隔で2回接種。有効率は70%とされています。この数値は、異なる2つの投与方法の平均値で、初回の投与量を予定の半分に落とした場合の有効性は90%と報告されています。ただし、これは予定されていた投与方法ではなかったため、90%の有効性に再現性があるのか、現在も臨床試験で確認中です。また、このワクチンは日本のJCRファーマ社が国内で原液を製造する契約を結んでいます。
日本政府との間で供給契約は結ばれていませんが、ジョンソン&ジョンソン(ヤンセンファーマ)のワクチンは間もなくアメリカ政府から緊急使用許可が得られる見込みと伝えられています。 このワクチンはほかと異なり1回接種で済むのが最大の特徴です。中等度~重度の感染予防効果が平均で66%、地域ごとでは米国72%、ラテンアメリカ61%、南アフリカ64%とされています。また、このワクチンに関しては臨床試験における重症化予防率が米国86%、南アフリカ82%だったことも示されています。
米ノババックス社のワクチンは、日本政府との契約はありませんが、EUへの供給契約締結が見込まれています。国内で承認されれば武田薬品工業が原液から製造販売する予定です。
注意していただきたいのは、いずれのワクチンも臨床試験は継続中で、数値については「中間分析」の結果だということです。また、臨床試験が始まってからあまり時間がたっていないため、予防効果の継続性は十分明らかになっておらず、特に先行するファイザー社とモデルナ社のワクチン以外は中長期的な安全性もまだデータがないのが実情です。
いくつかのワクチンで「有効率」の数字を示しました。この有効率は、単純に「95%の人が新型コロナウイルスに対する免疫を獲得した」という意味ではありません。同数のワクチンを接種した人としなかった人で、発症した人数の比率がどれだけ違ったかを表します。
具体的には、ワクチン接種群と対照(プラセボ<偽薬>接種)群をそれぞれ100人ずつのグループに分けたとします。一定期間が経過したところから発症した人数を数え、対照群で20人、ワクチン接種群で1人だったとします。ワクチンを接種したことによって発症者を20人から1人に下げることができたと考えられるため、有効率は(20-1)/20=95%となります。
ただ、数字だけが示されてもそれだけでは高いのか低いのか分かりにくいでしょう。
一般的な感染症に対するワクチンの多くは小児期に接種しますが、新型コロナワクチンは16歳以上が対象とされています。そこで、大人もうつインフルエンザワクチンを比較対象として例示します。インフルエンザウイルスにはさまざまな変異株があり、流行が予測されるウイルス株に対するワクチンを製造、接種します。そのため年によってばらつきがありますが、医学誌ランセットで2016年に公開された論文では、成人に対するワクチンの有効率はおおむね50~60%だったが一部の型では20~30%だったと報告されています。
これと比べて、新型コロナワクチンはいずれも高い数値を示しており、医師からは「率直に驚いた」という声も聞かれるほどです。
現在、世界でもっとも人口当たりのワクチン接種が進んでいるのは中東のイスラエルです。世界の接種状況をまとめているオックスフォード大学などによる集計では、2月23日現在、国民の約36%にあたる315万人が接種を終えています。
イスラエルでの接種後の効果について、イスラエル工科大学と会員制医療組織マッカビーによる共同研究論文(査読前)が2月7日に公開されました。それによると、1回目のワクチン接種から12~28日後の感染者のウイルス量が、対照群と比べて4分の1に減っていたとしています。このことは、ワクチンによる感染性の低下を示唆していると研究者は述べています。
日本の製薬メーカーも新型コロナワクチンの開発を進めています。ただ、表に掲げた各社の開発状況は、進んでいるものでも小規模な第3相臨床試験の段階です。承認に向けて必要な大規模第3相臨床試験が開始されたものはありません。
新型コロナウイルス感染症は世界規模の問題で、ワクチン争奪戦が勃発する恐れもあります。万が一、契約を締結している海外メーカーからの供給が予定どおり進まないことも想定し、国内メーカー製ワクチンの早期実用化が期待されます。
CoV-Navi(こびナビ) 副代表
日本救急医学会 救急科専門医日本外傷学会 外傷専門医
2010年大阪大学卒。大阪の3次救急を担う医療機関で9年間の臨床経験を経て、2019年にフルブライト留学生としてハーバード公衆衛生大学院に入学。2020年度ハーバード公衆衛生大学院卒業賞"Gareth M. Green Award"を受賞。卒業後は米国で臨床研究に従事する傍ら、日本の公衆衛生の課題の1つであるHPVワクチンの接種率低下を克服する「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」や、新型コロナウイルスワクチンについて正確な情報を発信するプロジェクト「CoV-Navi(こびナビ)」を設立。公衆衛生やワクチン接種に関わる様々な啓発活動に取り組んでいる。
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