がんとは、細胞の遺伝子に傷がつくことで発生する悪性の腫瘍です。がんの種類や患者の状態などによって異なりますが、がんは早期に発見できれば治癒の可能性が高まるといわれており、早期発見・治療のために各機関ではがん検診などさまざまな取り組みが行われています。
しかし、2020年は新型コロナウイルスの流行に伴い、がん検診の実施数の減少や、がん治療を受けることへの懸念を持つ方が増えました。前記事では新型コロナウイルスの流行に伴うがん検診への影響についてお話ししましたが、今回はがん治療をテーマに新型コロナウイルスが社会にもたらした影響について、がん研有明病院 院長の佐野 武先生にお話を伺いました。
※本記事は2020年9月3日時点の医師個人の知見に基づくものです。
がんは治療後も再発や再燃の可能性があるため、定期的な検査やフォローアップが必要な病気です。
しかし、新型コロナウイルスが流行し始めた当初は新型コロナウイルスに感染することを過度に恐れるがん患者さんが多く、検査やフォローアップのための通院をキャンセルする方も増えました。これによって、これまで2~3か月に1回の通院を等間隔で行っていた方の受診が一気に5~6か月ほど間が空いてしまうことになり、その間にがんが再発してしまっていたり、がんが大きくなっていて適切な治療ができなくなってしまっていたりする事例もすでに発生してきています。
また、一度受診をキャンセルした後、いまだ感染を怖がって来院されない方もいて、こちらから電話して来院を促すことも少なくありません。たしかにがん患者さんは治療中や治療から間もない場合には、新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高いといわれていますので心配な気持ちもあるでしょう。
しかし、医療機関では感染防止対策を行っていますし、ご自身がいわゆる3密を避け、マスクを着用し、こまめに手を洗っていれば感染は最大限予防できます。そのため、過度に恐れず定期的な医療機関の受診を続けていただきたいと思います。
不安なこと・気になることがあれば1人で悩まずに担当医に相談していただきたいです。新型コロナウイルスが流行し始めた頃は医師もまだ分かっていないことも多く、がん治療について“患者さんが新型コロナウイルス感染症にかかった場合、この抗がん剤は使って大丈夫か”などの判断が難しい部分がありました。
しかし、今は世界各国からさまざまな情報が集まってくるため、治療に必要な判断がスムーズにできるようになってきています。仮にがんの治療中に新型コロナウイルス感染症にかかってしまったとしても、薬の量などを加減しながらほとんどの治療は続けることができますので怖がりすぎないようにしていただきたいです。
逆に、がん患者さんが新型コロナウイルス感染症にかかってしまった場合に控えるべき治療も明らかになってきています。たとえば、肺炎が明らかな場合には、やはり肺そのものに関わる手術はリスクが高いため慎重に検討する必要があります。また、ニボルマブなどの免疫療法も新型コロナウイルス感染症に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。それ以外の治療方法は様子を見ながら継続して行えるものがほとんどです。自分の治療や体調などについて不安なことがあれば、ぜひ担当医に相談してみてください。
新型コロナウイルスの流行による情報の混乱は、残念ながら今も続いています。報道では感染者数や死亡者数が大々的に取り上げられがちですが、日本では実際に重症化して命に関わっている方はごくわずかです。
もちろんまったく気にせずに感染予防対策をしないというのは危険ですが、過度に恐れすぎず正しく恐れて正しく予防することを意識していただきたいです。幸い、新型コロナウイルスは感染経路がはっきりしていますので、マスクの着用やソーシャル・ディスタンス確保で飛沫感染を予防し、こまめな手洗いで接触感染を予防していれば感染する確率を大きく下げられます。
特にがん患者さんは、重症化を恐れて不安な日々を送っていると思います。新型コロナウイルスのことやご自身のがんのことなど、分からないこと・不安なことがあれば、担当医に相談しながら治療を進めていくようにしましょう。
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