編集部記事

本人や家族に対するがん告知の方法とは?〜患者の希望や体の状態などを考慮したうえで適切な形で行われる〜

本人や家族に対するがん告知の方法とは?〜患者の希望や体の状態などを考慮したうえで適切な形で行われる〜
磯崎 哲男 先生

医療社団法人小磯診療所 理事長

磯崎 哲男 先生

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がんの告知を受けることは患者にとって非常に衝撃が大きいことですが、がんに向き合い受け入れることが治療の第一歩になります。そのため病院では、検査結果からがんであると確定した後、速やかに患者本人に病名や状態を伝える方針を取っていることが一般的です。また、告知後も治療を進めていくうえで、担当医などの医療者との信頼関係が何より大切です。分からないことがあれば遠慮なく質問し、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。

患者本人に告知する場合

数十年前の日本では患者に対してがんの告知を行わないことが当たり前で、家族に対してのみ告げるということも少なくありませんでした。しかし、現在では患者本人に告知することが一般的になっています。がんと告知されると誰でも大きな衝撃を受けるものであるほか、担当医からの説明を聞ける状態にない場合も想定されるため、患者本人に告知する際には家族などの同席をすすめられることもあります。

先に家族に告知する場合

患者の同意がある場合や患者が病気のことを知りたくない場合、患者の理解・判断能力が欠けている場合などには家族にだけ先に告知します。また患者が希望しない場合には、家族にも告知しないこともあります。患者の希望と家族の希望が異なる場合は、患者の希望が優先されることが一般的です。

ただし、これらはあくまで一般的なものであって告知の方法は病院によって異なります。また、がんの状態(早期がんか末期がんか)や、患者の精神状態、本人の認知力、患者の年齢(成人か子どもか、子どもであれば年齢はいくつか)などによっても異なります。いずれにしてもがんの告知の方法は明確に決まっているわけではなく、患者の希望を含めさまざまなことを考慮したうえで適切な形で行われます。

がんの告知を受けた患者の心の状態は時間の経過とともに変わっていくことが多いといわれています。

まず告知を受けた直後は強い衝撃を受け、ショックや絶望感、不安や落ち込みが見られます。その後の心の変化については個人差がありますが、一般的には現実逃避をしたり怒りの感情が現れたりして、次第に現実に目を向けようとし、最終的には現実を受け入れてがんに向き合うというプロセスを辿るとされています。以下の図は、段階別の一般的な患者の心の変化をまとめたものです。

がん告知

最善の治療を行うには医師などの医療者と患者との間でしっかりと情報を共有し、信頼のうえで協力して治療にあたることが重要です。そのため、患者の気持ちの整理がついてから治療についての細やかな説明、治療の選択を行っていくことになります。

がんに対する主な治療法には外科的にがんを切除する“手術”、抗がん剤で治療を行う“薬物療法(化学療法)”、がんやその周囲に放射線を照射する“放射線療法”があります。どの治療法が適しているかは、がんの部位や進行度、患者の状態などによって異なります。

治療法については担当医から詳しい説明が行われますが、どの治療法を選ぶかは患者と家族です。それぞれの治療法にはメリット・デメリット、副作用や合併症のリスクもあるため、担当医の説明をよく聞き、分からないことがあれば理解できるまで質問しましょう。また、自分自身で調べることも大切です。

治療法を選択した後、その治療を開始することになりますが、入院治療だけでなく外来通院で治療を行うこともあります。また、治療が短期間で終了する場合もあれば長期間継続する場合もあるほか、治療中に仕事や家事などができる場合もあります。

しかし、いずれにしても個別の状況によって大きく異なります。治療に際して不安や疑問、気になる症状がある場合は、遠慮せずに担当医や看護師に相談しましょう。

治療で起こりうる合併症や副作用

がん治療では、さまざまな合併症が懸念されます。たとえば、手術治療後は傷の感染や痛みが生じることがあるほか、腹部の手術では腸閉塞などの合併症がみられることもあります。また、放射線治療では体のだるさが生じたり出血しやすくなったりするなどの副作用が生じることがあります。さらに薬物療法では薬によってさまざまな副作用が生じることがあるため、治療前に説明を受け、気になる症状があれば相談するようにしましょう。

このようながん治療による合併症や副作用は、治療後すぐに生じるものもあれば、治療から数か月・数年経過した後に生じるものもあります。そのため、長期的に観察が必要です。

がんは再発や転移の可能性があるため、ひととおりの治療が終わっても通院して検査を受ける必要があります。経過観察の期間は一般的に5年程度といわれ、初めは2か月や3か月に1回程度の頻度で通院する必要があります。徐々に通院の間隔は広くなっていき、最終的に1年に1回程度のペースで済む場合もあります。

がんの告知を受けると誰でも大きな衝撃を受けるものです。そのため、家族や担当医、看護師、がん相談支援センター、がん情報サービスサポートセンターなどに今の気持ちを話してみるとよいでしょう。

治療方針に納得できない場合には、セカンドオピニオンを求めることもできます。セカンドオピニオンとは、がんの診断や治療について今診療を受けている担当医とは別の医師に第2の意見を求めることをいいます。これを受けることによって同じ病気について専門家のさまざまな意見を聞くことができ、病気への理解が深まるほか、納得して治療に取り組むことができるようになります。

一方セカンドオピニオンを受けると、今の担当医との関係が悪くなってしまうのではないかと心配になるかもしれません。しかし、多くの医師はセカンドオピニオンが一般的なことと理解しているため、患者が希望したからといって関係が悪くなるという心配はありません。そのため、セカンドオピニオンを受けたい場合には、遠慮せずに担当医に相談してみましょう。担当医に言い出しにくい場合には、がん相談支援センターやほかの医療スタッフなどに相談することも検討しましょう。

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