年間の発生数が10万人あたり6例に満たないまれながんのことを「希少がん」といいます。希少がんは数が少ないために実態が分かっておらず、治療の向上や均てん化*が困難です。そこで近年、希少がんの研究開発や希少がんに対するがんゲノム医療を推進する「MASTER KEY project」が、国立がん研究センター中央病院を中心に発足しました。2019年よりMASTER KEY project実施施設として活動している北海道大学病院のがん遺伝子診断部長・教授の木下一郎先生にMASTER KEY projectの概要や参加できる条件などについてお話を伺いました。
*均てん化:医療格差を減らし、地域を問わずがんの標準的な専門医療を受けられるようにすること
希少がんとは年間の発生数が10万人に6例未満というごくまれながんのことを指します。主な希少がんとしては、肉腫、脳腫瘍、眼腫瘍、神経内分泌腫瘍などが挙げられ、現在200ほどのがんが希少がんと分類されています。1つ1つのがんの患者数は少ないものの、希少がん全体を合計した場合の患者数はがん全体の15~22%といわれているため、希少がん全体の患者数は決して少なくありません。
MASTER KEY projectとは、患者数が少ないために実態がつかみにくい希少がんのデータを収集し、治療法開発やがんゲノム医療を推進するプロジェクトです。国立がん研究センター中央病院を中心に大学病院や製薬会社などが協力し、産学共同で取り組んでいます。現在行われている主な活動として、希少がんの患者さんについてのさまざまな情報を登録し、その経過を前向きにたどっていくレジストリ研究が挙げられます。
レジストリ研究は前向き観察研究とも呼ばれ、特別な治療方法を試すようないわゆる治験や臨床試験は行いません。患者数が少ないためになかなかまとまったデータを集めることのできない希少がんについて、通常の治療を行いその結果を追うことはもちろん、どんな特徴があるのか、血液検査やがん遺伝子プロファイリング検査の結果はどうか、遺伝子の異常はどうかなどの経過を事細かに記録し、大規模なデータを蓄積します。
さまざまな希少がんの患者さんを長期的に追うことによって、これまでまとめられてこなかった希少がんの特徴が分かり、将来的には新薬の開発などよりよい治療方法の開発に役立つことが期待されています。
2017年5月から開始したこの固形の希少がんに対するレジストリ研究は、当初1000例を目標として開始されました。しかし2021年2月現在のデータですでに1535例となるなど、活動が広がっています。
またMASTER KEY projectでは、レジストリ研究に登録していただいた患者さんのうち、希望される方、適応のある方に対して副試験としていくつかの臨床試験を行っています。希少がんは1つ1つのがんの患者数が少なく、臨床試験を行うことが困難です。そこでこの臨床試験では臓器別などのがんの種類によるものだけでなく、がん遺伝子プロファイリング検査などのバイオマーカーの結果に応じた臨床試験を実施しています。副試験として行われる臨床試験には、企業が主導するものや医師が主導するものなどさまざまなものがあり、現在はおおよそ15件程度の臨床試験(全て治験)が行われています。
MASTER KEY projectでは「年間発症数が10万人に6例未満」のいわゆる「希少がん」の患者さんはもちろん、肺がん、大腸がんなどメジャーながんであっても珍しい病理組織型の患者さんや小児の患者さんも登録の対象となります。また、すでにがん遺伝子プロファイリング検査または分子学的検査(免疫組織化学染色、FISH等)など何らかのバイオマーカー検査を受けている方、あるいはこれから受けることに同意された方が対象です。
なお、現在MASTER KEY projectの実施医療機関は国立がん研究センター中央病院、京都大学医学部附属病院、北海道大学病院、九州大学病院、東北大学病院の全5施設で、参加を希望する方は実施医療機関からの登録が必要となります。これらの医療機関では希少がんの治療・研究はもちろん、とりわけ難しいといわれる希少がんの診断も行っていますので、診断・治療について気になることや知りたいことがあれば、ぜひご相談いただきたいと思います。
北海道大学病院は2019年4月よりMASTER KEY projectに参加し、腫瘍内科を中心に各関連診療科が協力して数多くの希少がんの患者さんの治療を行ってきました。私自身も、兼任する腫瘍内科の中で積極的にMASTER KEY projectに取り組んでいます。今後も院内の連携はもちろん、ほかの実施医療機関と協力して希少がんの治療・研究にあたっていきます。
北海道大学病院 がん遺伝子診断部 部長・教授、同 腫瘍内科 (兼任)、同 腫瘍センター (副センター長、兼任)
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