概要
肺がんとは、気管支や肺胞(酸素と二酸化炭素のガス交換を行う場所)の細胞ががん化したものです。
全身を流れた血液は、心臓へ戻った後に肺へ流れるため、肺には大腸や肝臓、乳房などのさまざまな部位に発生するがんが転移しやすいといわれています。ただし一般的に肺がんとは、ほかの臓器にできたがんが肺に転移して生じるものではなく、最初に肺にできるがん(原発性肺がん)を指します。
肺がんは60歳以降の男性に多くみられます。早期段階では自覚症状がないことも多くあります。
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原因
肺がんの70%は喫煙習慣が原因であると考えられています。たばこにはさまざまな有害物質が含まれており、中にはがんの発生を促す物質も多く含まれていることが分かっています。ただし、近年はたばこを吸っていない人に生じる、原因が分からない肺がんも増加しつつあります。
そのほか、頻度は低いもののアスベスト、ラドン、ヒ素、クロロメチルエタノール、ニッケルなどの化学物質に長期間さらされることで発症するケースもあります。そのため、これらの物質を扱う職業の方や、これらの物質による大気汚染がある地域に居住している方などは肺がんの発症率が高くなります。
症状
肺がんは発症した部位や進行度によって症状が大きく異なります。
近年は喫煙習慣のない方を中心に、気管支の末梢にできるがんが増えています。一方、喫煙を原因として肺がんが生じた場合は、太い気管支の周囲にがんが発生することが多いといわれています。
いずれの場合も肺自体には痛みを感じないため、早期の段階では自覚症状を認めないことが多くあります。進行すると次第に慢性的な咳、痰、胸の痛み、だるさ、体重減少などの症状が現れます。
検査・診断
肺がんが疑われるときは次のような検査を行います。
喀痰細胞診検査
痰を採取し、その中にがん細胞が含まれているかを調べる検査です。主に喫煙習慣のある人を対象に行われます。肺がん検診で実施されることもあり、簡便に肺がんの可能性を探ることができます。
画像検査
肺にがんがあるか調べるために画像検査を行います。
肺がんはX線にも描写されるため、一般的にまずは簡便に実施できるX線写真撮影を行います。X線写真でがんが疑われる病変が確認された場合は、大きさや位置などをさらに詳しく調べるためにCT検査を行います。また、他臓器への転移が疑われるときは、PET/CT検査やMRIによる全身の検査が行われることもあります。
気管支鏡検査
気管支に内視鏡を挿入して内部の状態を詳しく調べる検査です。通常はCT検査などで腫瘍の位置を特定してから行います。
気管支鏡検査では病変部の一部の組織を採取することが可能です。採取した組織を用いて、顕微鏡で詳しく観察してがん細胞の有無を調べる病理検査を行うことも可能です。また、がんの遺伝子検査を行うこともあります。
がん遺伝子検査
がんの組織を採取し、がん細胞にどのような遺伝子変異が生じているかを調べる検査です。遺伝子変異を明らかにすることによって、より効果のある治療薬を選択できる可能性があります。
腫瘍マーカー検査
肺がんを発症すると血液中に腫瘍マーカー*という物質が増加するため、血液検査で腫瘍マーカーの値を調べます。なお、肺がんは病変部から採取した組織の特徴によっていくつかのタイプに分けられ、タイプによって増加する腫瘍マーカーが異なります。そのため、診断のためだけではなく、治療方針を決定するために肺がんのタイプを特定する際にも有用な検査です。
*腫瘍マーカー:がん細胞が生産する、またはがん細胞に反応した周囲の細胞が作るタンパク質やホルモン、酵素などの物質。
治療
肺がんの治療は手術治療・薬物治療・放射線治療が3本柱となっており、進行度やがんのタイプによって治療方針を決定します。
比較的早期の段階で発見された場合は手術による切除が行われます。薬物治療や放射線治療は、場合によって単独で行われたり組み合わせて行われたりします。
薬物治療としては抗がん薬による化学療法が一般的でしたが、近年は免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの治療薬も用いられます。免疫チェックポイント阻害薬は免疫の力を利用してがんを縮小させ、分子標的薬はある特定の分子にはたらきかけることでがんの増殖を抑制します。
放射線治療ではX線を照射してがんを縮小させます。放射線治療にはX線のほか、陽子線や重粒子線などの“粒子線”を利用する粒子線治療があります。従来のX線を利用した放射線治療は、がんがある部位の手前や奥にある正常な細胞にも影響が及ぶため、体への負担を考慮し十分に照射できないこともあります。一方で粒子線は、がんがある部位で高い量の放射線を照射し、そこで消滅します。病変部に集中的に作用し、正常な細胞への照射範囲を少なくすることができます。なお、粒子線治療は実施できる施設は限られるほか、治療の対象が限られているため希望する場合は医師に相談しましょう。
これらの治療が適応できない方には、CTや超音波画像をみながら腫瘍に針を刺してラジオ波電流で腫瘍に熱を与えて壊死させるラジオ波焼灼療法(RFA)というIVR(画像下治療)が適応になる場合もあります。
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予防
肺がんの70%は喫煙習慣が原因で引き起こされると考えられています。長期間にわたって喫煙を続けると肺の細胞にダメージが加わって遺伝子変異が起こり、最終的にがんを発症すると考えられています。また、たばこに含まれる発がん性物質は、喫煙者本人だけでなく周囲の人に及ぶ煙の中にも含まれています。そのため、同居家族などに喫煙者がいる場合、長期間にわたってたばこの煙にさらされ続けると肺がんを発症するリスクの1つになります。
肺がんを予防するためには禁煙外来などを利用して禁煙を目指すことが大切です。たばこの煙に含まれる発がん性物質は周囲の人にも影響を及ぼすことが分かっているため、たばこの煙を受ける場所は避けるようにしましょう。
また、早期発見のため定期的に肺がん検診を受けましょう。40歳から、1年に1度胸部X線撮影を行うことが推奨されています。50歳以上で喫煙している、または過去に喫煙していた方は、あわせて喀痰細胞診を行うことが勧められます。
- 2024/07/30
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- 2024/06/27
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- 2020/07/22
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- 2017/04/25
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