りゅうしせんちりょう

粒子線治療

最終更新日:
2024年08月27日
Icon close
2024/08/27
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

粒子線治療とは、陽子線や重粒子線(炭素イオン)を利用した放射線治療です。

放射線治療は、がんに対して用いられる治療法の1つです。放射線治療で利用する放射線は、電磁放射線(X線・γ線)と粒子放射線(α線・β線・電子線・陽子線・炭素イオン線・中性子線)の2種類に大きく分けられます。

粒子線治療は、粒子を加速器で光速の約70%まで加速して体に照射します。X線やγ線と異なり、陽子線や重粒子線はブラッグピーク(Bragg-peak)という体深部の一定の距離で照射を停止させることができる特徴を持つため、腫瘍(しゅよう)の深さに合わせたピンポイントの治療を行うことができます。粒子線治療の最大のメリットは、腫瘍周囲の正常な組織へのダメージを減らしつつ、治療効果を高められることです。また、X線と比較すると同じ線量でも腫瘍に与える効果が高いといわれており、これまで放射線が効きにくいと考えられてきた肉腫などの腫瘍に対しても治療効果が期待されます。

目的・効果

粒子線治療の対象となるのは腫瘍(がん肉腫)です。粒子線治療の特徴を生かし、腫瘍の根治を目的として治療を行います。

適応

2024年8月現在、陽子線と重粒子線共に保険適用となっている病気は、以下のとおりです。

治療が適応となる条件として、最初にがんが発生した部位(原発巣)以外に遠隔転移がないことがあげられます。そのほかにも細かい条件があるため、詳しくは専門医にご相談ください。

また、現時点で保険適用とはなっていないものの先進医療*として粒子線治療が行われている病気には、食道がん、胆道がん(肝門部領域胆管がんや肝外胆管がん、胆嚢がん)、腎がん、膀胱がん精巣腫瘍、転移性腫瘍(肝転移、リンパ節転移、肺転移)などがあります。

*先進医療:高度な医療技術を用いた治療などのうち、公的医療保険の対象ではないが、厚生労働大臣が承認し一般の保険診療との併用が認められたもの。

目的(メリット)

粒子線治療はがん病巣にのみ集中的に照射し、周囲の正常な臓器への影響を減らすことができるため、X線を利用した放射線治療よりも副作用を抑えて高い治療効果が期待できます。また、体への負担も少ないことから、高齢の方や体力のない方にも治療を行うことができます。

重粒子線のメリットは、陽子線と比較してさらに周囲の正常な臓器への影響を減らし、副作用を抑えられることです。また、陽子線の治療期間は2~8週間程度ですが、重粒子線の治療期間は1~4週間程度と短く、短期間で治療を終えることができるのもメリットの1つです。一方、デメリットとしては、重粒子線は重い粒子を扱うため機械や施設の設備が大がかりになり、治療可能な施設が多くないことがあげられます。

治療詳細

粒子線治療は治療開始までに約1~2週間の準備が必要です。

まず、治療中の腫瘍の動きを確認するために照射用マーカーという非常に小さな金属を体内に留置します。その後、治療台に体を固定するための固定具を作製し、CTやMRIなどの画像検査や内視鏡検査などを行ったうえで粒子線治療のシミュレーションを作成します。そして、作成した治療計画の下実際に患者と治療リハーサルを行い、粒子線治療を開始します。

リスク

粒子線治療はX線を利用した放射線治療よりも副作用を抑えることができますが、副作用がまったくないわけではありません。副作用の症状は照射部位によって異なり、頻度や重症度は実際の粒子線治療によってさまざまです。

代表的な副作用としてみられる可能性があるのは以下のとおりです。

  • 皮膚炎…照射から数週間で皮膚の発赤やかゆみが現れ、数か月経つと浅黒く色素沈着が生じる。
  • 肺臓炎…正常の肺組織が被曝することで照射から数か月後に間質性肺炎を生じる。
  • 消化管粘膜炎…照射から数か月後に消化管の粘膜の発赤がみられ、まれに出血や穿孔(せんこう)が生じる。
  • 肝障害…照射から数か月後に肝機能の低下がみられる。
  • 排尿障害…照射から数週~数か月で頻尿や排尿困難、排尿痛などが生じる。

治療の経過

がんの部位によって異なりますが、多くの場合、治療期間は重粒子線治療で1~4週間程度、陽子線治療で2~8週間程度です。

重粒子線では週4回、陽子線では週5回の照射を行い、予定されている回数まで繰り返します。1回の治療時間は照射室への入室から退室まで15~30分程度、そのうち粒子線の照射時間は数分ほどです。

治療中は定期的に血液検査や画像検査を行い、治療の効果を確認します。基本的に粒子線治療の場合、体への負担は少ないため通院での治療が可能です。体調不良時には入院での治療を行う場合もあります。粒子線治療終了後は、定期的にCTやMRIなどの画像検査、血液検査などを行い、治療効果を評価します。

費用の目安

粒子線治療にかかる費用は、病気によって異なり、保険診療の場合は160万円~250万円程度です。これに加え検査代、薬剤費、入院費などがかかります。自己負担が一定の金額を超えた場合は、高額療養費制度による払い戻しが受けられます。自己負担の上限額は年齢や所得によって異なるため、厚生労働省のホームページなどで確認してください。

先進医療(保険外診療)の場合、かかる費用は医療機関によって異なりますが、280~300万円程度で全額自己負担となります。検査代、薬剤費、入院費などについては公的医療保険が適用されます。医療機関によって対象者は異なりますが、減免制度を設けている施設もあります。また、民間の保険会社などでは先進医療特約や一時金といった先進医療に関わるプランを用意している場合があるため、ご自身が加入している民間保険の詳細も確認しておくとよいでしょう。

粒子線治療を実施している施設については厚生労働省のホームページにある「先進医療を実施している医療機関」の一覧を参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「粒子線治療」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

粒子線治療

Icon unfold more