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ぜんりつせんがん

前立腺がん

最終更新日:
2024年07月04日
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概要

前立腺がんとは、男性特有の前立腺という臓器に発生するがんです。

前立腺は、尿道を取り囲むように膀胱の真下に位置しています。正常な前立腺は“くるみ大”程度の小さな臓器ですが、精液の一部の成分を産生するなど生殖器として重要なはたらきを担っています。

前立腺がんの患者数は年々増加していますが、前立腺がんは進行が緩やかで早期段階で治療すれば治る見込みが高いがんです。

がんの程度や転移の有無によって、手術や放射線治療、薬物療法を組み合わせて治療が行われます。

原因

同じ家系内に前立腺がん患者がいる人や、60歳以上の高齢の方で発症しやすいことから、遺伝や加齢によるホルモン(アンドロゲン)バランスの変化が関与していると考えられていますが、明確な発症メカニズムは解明されていません。肥満や喫煙、動物性脂肪やカルシウムの過剰摂取などが発症に関与しているとして、さまざまな研究が行われています。

症状

前立腺がんは早期の段階ではほとんど症状は現れません。進行して徐々にがんの組織が大きくなると前立腺の内部を走行する尿道を圧迫し、尿が出にくい、尿の回数が増える、排尿後も尿が残った感じがする、下腹部に違和感があるといった症状が現れます。

検査・診断

前立腺がんが疑われる際は、次のような検査が行われます。

血液検査

前立腺がんを発症しているか否かを調べるには、血液中の“PSA(前立腺特異抗原)”濃度の測定が有用です。

PSAは前立腺がんのいわゆる“腫瘍(しゅよう)マーカー”と呼ばれる物質です。がんや炎症によりPSAは増加しますが、高値でも必ずしも前立腺がんではありません。前立腺炎前立腺肥大症といったほかの病気でもPSAが増加することもあります。

画像検査

前立腺の状態を調べるために、肛門に超音波の機器を挿入して直腸から前立腺を描出する経直腸的前立腺超音波検査や、MRI検査を行います。

前立腺がんがリンパ節や骨、臓器などに転移しているかを確認するためにCTや骨シンチ検査などを行います。

前立腺生検

前立腺がんの確定診断に必須となる検査です。肛門から特殊な器具を挿入して前立腺、または陰嚢と肛門の間にあたる部分(会陰部)から針を刺して前立腺組織を採取します。採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、がん細胞の有無を確認します。

近年では、画像を見ながら組織の採取ができる“MRI-超音波融合画像ガイド下前立腺生検”という方法も登場し、がんの検出率を高め、正確な悪性度の診断ができるようになっています。

治療

前立腺がんの治療は、主に次のような治療が行われます。

手術

摘出が可能な場合は、前立腺を摘出する手術を行います。

手術方法は腹部を切開して行う“開腹手術”、腹腔鏡を挿入して行う“腹腔鏡下手術”のほか、手術用ロボットを用いた“ロボット手術”があります。近年は手術用ロボットの普及に伴い、体への負担が少ないロボット手術が主流となっています。

放射線治療

放射線を照射してがんを縮小させる治療法です。早期がんから局所進行がんまで、幅広いケースで行われます。

放射線を照射する方法は、体表面から行う“外照射療法”と、前立腺の内部に放射線を放つ物質を挿入して行う“小線源療法”があります。

外照射療法

外照射療法は、X線を利用する三次元原体照射と強度変調放射線治療、粒子線を利用する粒子線治療があります。

三次元原体照射と強度変調放射線治療はいずれも放射線をがんの形に合わせて調整し、周囲の正常な細胞への影響を抑えつつ照射する方法です。さらに強度変調放射線治療は放射線の量も調整できるため、副作用リスクを軽減しつつ、がんがある部位に集中的に放射線を照射することができます。

粒子線治療は陽子線や重粒子線を利用する治療法です。X線を用いる放射線治療と比べて、より効果的にがんがある部位に高い量の放射線を照射することができます。なお、粒子線治療は実施できる施設が限られるほか、治療の対象となる方も限られているため希望する場合は医師に相談しましょう。

小線源療法

超音波で観察しながら低量の放射線を放つヨウ素125線源を前立腺内に挿入し、前立腺内のがん細胞に放射線を照射する方法です。治療の対象となるのはがんが前立腺内に留まっている場合のみです。

薬物療法

前立腺がんは、アンドロゲンの分泌やはたらきを抑えることで進行を抑制できることが分かっています。そのため、手術が難しい場合や放射線治療を行う前後の補助的な治療として、アンドロゲンの分泌・はたらきを抑える薬剤を用いた“ホルモン療法”が行われることがあります。

また、転移がある場合やホルモン療法の効果がない場合(ホルモン抵抗性前立腺がん)に対して、より強力なホルモン療法薬(新規ホルモン療法薬)による治療や抗がん薬治療を併せた治療なども行われています。そのほか、ホルモン抵抗性前立腺がんに対しては、PARP阻害薬やラジオアイソトープによる治療が行われることもあります。

予防

現在のところ前立腺がんを確実に予防する方法はなく、推奨されている検診もありません。気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することが重要です。

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