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横須賀市立うわまち病院における安全で効果的なIMRT(強度変調放射線治療)

横須賀市立うわまち病院における安全で効果的なIMRT(強度変調放射線治療)
大泉 幸雄 先生

横須賀市立うわまち病院 高精度放射線治療センター センター長

大泉 幸雄 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年02月24日です。

記事1『IMRT(強度変調放射線治療)とは?-その原理や治療効果』では、主にがんに対する新たな放射線治療であるIMRT(強度変調放射線治療)の治療効果についてお話していただきました。IMRTによる治療の大きなメリットは、放射線を照射する照射野(照射する範囲)と線量をコントロールすることにより副作用の軽減につながる点です。また、複雑な照射も可能にすることで、腫瘍の状態に合わせたより効果的な治療を実現することができるという特徴があります。

今回は、実際にIMRTを導入している横須賀市立うわまち病院ではどのような治療を行っているのか、引き続き、同病院の高精度放射線治療センター センター長の大泉 幸雄先生にお話していただきました。

IMRTの利点や適応について記事1で説明しましたが、実際にIMRTができるかどうかは、2人の医師が判断します。患者さんが希望されても、できないことがありますので、主治医の先生を通じてご相談にいらしていただければと思います。

ここでは、適応になった場合の治療の流れについてご説明します。

IMRTを受けていただくにあたっては、準備の期間が7〜10日間ほど必要となります。私たちうわまち病院でIMRTを受けていただく場合、事前の準備に通常10日間ほど必要です。しかし緊急を要する患者さんの場合は、1週間以内に実施することもあります。また、患者さんの状態によっては、通常の放射線治療から治療をはじめ、途中からIMRTに切り替えることも可能です。

素材提供:PIXTA

素材提供:PIXTA

IMRTの実施にあたって、専用のコンピューターへ腫瘍や臓器の状態を入力することが非常に重要になります。そのため、患者さんはまずCT画像(X線を利用して身体の内部を撮影した画像)を撮影します。あとは、医師がこのCT画像を基に患者さんの腫瘍や臓器の位置や形状を専用のコンピューターに丁寧に描出します。その上で、どの部分にどれくらいの量の放射線を照射するかコンピューターに指示します。すると、コンピューターが指示通りに計算をはじめ、線量の分布を出してきます。医師は、条件をいろいろ変えてコンピューターに指示を出し、より良い計画を選択します。

コンピューターで求めた最も良い計画は、診療放射線技師や医学物理士のチェックを受け、間違いがないか安全かなどダブルチェックをします。そして、その計画が実際に正しいかどうか予備の照射を事前に実施し、計画の線量と実際に測定した線量が一致することを確認します。このように、より安全で確実な治療を実現するためには、厳しいチェックに通る必要があります。

次に、治療計画を基に実際の治療に移るわけですが、高精度のIMRTを行うにあたり腫瘍の位置を正確に把握する必要があります。せっかくの高度な治療も照射の位置がずれていては、意味がないどころか危険を伴ってしまうからです。そこでIGRT(画像誘導放射線治療)という新しい技術が使われます。うわまち病院では、照射の直前に装置に取り付けられたX線を使って患者さんのCT画像を撮り、治療計画の基となったCT画像と重ね合わせ、3方向のずれのみならず回転のずれも高精度の治療台を動かして補正します。ですから、計画通りの位置での照射が可能となります。

IMRTの照射は、通常の照射より少し時間がかかりますが、上記でご説明したIGRTの時間を含め、患者さんが治療台に横になられている時間は10分~15分です。IMRTにはいくつかの方法がありますが、最近ではVMAT(強度変調回転照射法)という照射法をよく使用しています。これは、照射装置を回転させながら照射するIMRTの方法をいいます。他のIMRTの方法とそれほど変わりなく、より短い時間で治療ができる点が最大のメリットです。

照射装置
IMRTの照射装置(大泉 幸雄先生ご提供)

うわまち病院では、お話してきたようなIMRTとともに定位照射も採用しております。定位照射は、いわゆるピンポイントの治療です。小さい腫瘍のときに適応となり、正常組織にはあまり当たらないので1回ないし数回の治療ですみます。一方、IMRTはむしろ通常照射の改良版ですので、通常照射の適応のように広い範囲の照射も可能です。治療回数も通常照射とあまり変わりません。

脳定位照射とは、開頭手術をすることなく、頭蓋内に多方面から放射線を集中して照射する治療法です。最小4ミリ径の細い照射を可能にしており、周囲の正常組織への照射を最小限に抑えることが可能です。主に脳転移や良性腫瘍、AVM(脳動静脈奇形)などが適応とされています。

脳定位照射の例
脳定位照射の一例(大泉 幸雄先生ご提供)

体幹部定位照射とは、体幹部のがんに対してピンポイントに照射することができる治療法です。これは、主に肺や肝臓などにできた5センチ以下の原発性腫瘍や転移(2個まで)に適応されます。副作用が非常に少なく、数日の治療ですむ点が特徴です。

IMRTの話に戻りますが、IMRTは保険適用されている治療法です。そのため、もともとは100万円前後の治療費用が保険適用により35万円程度で受けることができるようになりました。正確な費用は患者さんの保険の負担割合によって異なりますが、保険が適用されたことで治療を受けやすい体制が整ったことは大きなメリットだと思います。しかし、保険が適用されたといっても、総額で何十万円もする高額な治療であることは変わりません。そのため、治療を受ける場合は、一定の自己負担額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度の利用をお勧めします。

IMRTは、高度な技術であり、治療を行うスタッフ・技術・設備がある程度整っている必要があります。現状では、大学病院など比較的規模が大きな医療機関を中心に採用されている治療法です。このように実施する医療機関が限られていることが治療を受けるまでの待ち時間を長くしており、結果的にIMRTを必要とする患者さんに治療が届いていないという悲しい現状があります。私たちうわまち病院では、IMRTが必要な患者さんへ治療を届けられるよう、体制を整えています。

IMRTを導入する医療機関では、医師が2名体制で治療にあたることが条件になっています。私たちうわまち病院では、IMRTの治療のために放射線治療専門医師が常勤しておりますので、安心して治療にあたっていただけると思います。また、医師に加えて診療放射線技師、看護師などが協力し合って治療をしています。診療放射線技師は、放射線治療における機器の精度管理や照射計画の検証と実際の照射を担当しています。また、医学物理士は、物理工学の基盤をもとに放射線治療計画および品質管理の立案・支援にあたっています。

素材提供:PIXTA
素材提供:PIXTA

このように、私たちの病院では医師をはじめ高い技術を持つスタッフ全員でIMRTの治療にあたっています。

記事1においてお話したように、IMRTは特に適応が多い前立腺がんの治療において高い効果が認められています。また、頭頚部腫瘍もIMRTが推奨されています。その他、腹部や骨盤部も副作用減少の点で意義があると考えられています。まだ推測の域を出ませんが、膵臓がんのように治療が困難とされているがんにも有効であるかもしれません。少なくとも通常治療よりは副作用が少ないことは確かです。IMRTは非常に応用範囲が広く、通常照射と比べてメリットがある場合にはどんどん使っていくべきだと思っています。今後、治療実績が増えるに従い、効果も立証されていくでしょう。

大泉先生

IMRTは、まだ認知度が低い治療法ですが、ここ数年でその高い効果が認められるようになりました。今後はがんの放射線治療において、さらに採用されていくことが考えられます。繰り返しになりますが、私たち横須賀市立うわまち病院では、放射線治療専門医が常勤しています。そして、高い技術を持つ診療放射線技師とともにIMRTの治療にあたっています。私たちの病院のスタッフは皆、親切かつ丁寧に対応することを心がけておりますので、安心して治療を受けていただけるのではないでしょうか。

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  • 横須賀市立うわまち病院 高精度放射線治療センター センター長

    大泉 幸雄 先生

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