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編集部記事

前立腺がんの最新トピックス~効果が出にくかった転移・再発したがんの治療の成績向上に向けて~

前立腺がんの最新トピックス~効果が出にくかった転移・再発したがんの治療の成績向上に向けて~
江藤 正俊 先生

九州大学大学院 医学研究院 泌尿器科学分野 教授

江藤 正俊 先生

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前立腺がんとは、膀胱の下に位置する男性特有の臓器“前立腺”に生じるがんのことです。前立腺がんとは、膀胱の下に位置する男性特有の臓器"前立腺"に生じるがんのことです。好発年齢は60歳以上の高齢者で、男性がかかるがんの中では胃がんに続いて2番目に患者数が多いがんとなっています。

今回は、前立腺がんの治療・検査に関する最新トピックスについて、九州大学大学院 医学研究院 泌尿器科学分野 教授 江藤 正俊(えとう まさとし)先生にお話を伺いました。

※本記事は2020年6月23日時点の医師個人の知見に基づくものです。

前立腺がんとは、前立腺に発生するがんのことです。前立腺がんは比較的進行が遅く発症しても生涯気付かれないケースもありますが、早期発見・治療できれば根治する可能性も高まる病気です。早期では尿が出にくい、頻尿になるなどが現れるとされますが、症状が出ないこともあります。また、進行すると血尿が生じたり、骨に転移して腰などに痛みが生じたりすることがあります。

前立腺がんの治療には手術、放射線治療、薬物療法が行われます。全てのがんの中でもっとも生存率が高く、ステージVIの進行がんであっても5年生存率は30%以上です。一方で、手術・放射線治療などの根治療法を行った場合でも、およそ30%の確率で再発するといわれています。転移などを理由に根治療法ができない場合にはホルモン療法が行われます。

とりわけ進行して転移のあるがんや再発したがんの治療が近年大きく変わりつつあります。 これによってこれまでの治療では満足のいく治療効果が得られにくかった、進行したがんの治療も治療成績の向上が図られています。

近年は骨などに転移の見られる進行がんの患者さんに対し、新しいホルモン療法剤の治療やホルモン療法と抗がん剤治療を併せた治療などが行われています。

これまで前立腺がん治療では進行したがんに最初に行う治療として、ホルモン療法が広く行われてきました。前立腺がんはアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンの刺激によって進行するといわれています。そのため、ホルモン療法は精巣の摘出や男性ホルモンの産生を低下させる注射剤の投与などによって精巣由来のアンドロゲンを抑え、がんの進行する勢いを抑える目的で行われていました。しかし、これらの治療方法は長く治療を継続していると効果が弱くなってしまい、最終的にはがんの進行がぶり返すという課題がありました。

そこで最近では、これまで行われてきたホルモン療法に加え、アンドロゲンのはたらきを抑えるより強力なホルモン療法剤(新規ホルモン療法剤)による治療が行われるようになりました。新規ホルモン療法剤にはアンドロゲンががん細胞に作用することを食い止められるもの、アンドロゲンの量をさらに減少できるものなどがあり、内臓転移のあるハイリスクの前立腺がんに対する治療でも使用されることがあります。なお、新規ホルモン療法剤は保険でも認められる治療として通常診療で行うことができます。

また、従来の治療方法であればホルモン療法が効かなくなった後に行っていた抗がん剤治療をホルモン療法と併用して行うことによって、予後がよくなるという報告も出てきています。

最近、転移の見られる箇所が比較的少ない転移がんの患者さんに対し、これまでのホルモン療法に加えて放射線治療を併せて行うことで、生存率が伸びるという報告があります。このように、転移があるもののその範囲や数が比較的少ない状態のことを“オリゴ転移”といいます。オリゴ転移に対する放射線治療はまだ標準治療とはいえませんが、今後広く行われる可能性があります。

ロボット手術の普及に伴い、前立腺がんで一度根治治療を受けた後に再発したケースにもロボットによる手術が行われるようになってきました。ロボット手術とは腹腔鏡手術のように体に小さな穴を開けて行われ、術者がロボットアームを操作することによって行われる手術です。日本は米国に次ぐ世界第二位のロボット大国で、手術用ロボットの設置数は全国で300台以上にも上ります。(2020年7月時点)

前立腺がんにおける根治治療といえば手術治療と放射線治療です。そのため、根治が可能と判断される段階で治療を行う場合、手術か放射線治療を選択することになります。初回治療で手術を選択した場合、万一再発した際にも放射線治療で再度根治を目指すことができます。

一方、初回治療で放射線治療を選択した場合、再発したがんに再び放射線治療を行っても十分な効果が認められないことがあるほか、放射線治療後は癒着が激しいために手術は難しく合併症が生じる可能性も多いため、再度の根治治療は行わないことが一般的でした。 したがって、初回治療で放射線治療を選択し再発した場合には、ホルモン療法をはじめとするがんの進行を抑える治療が検討されていました。しかし前述のとおり、ホルモン療法は治療期間が長期化すると効果が弱くなってしまうことがあるほか、骨や筋肉などの衰えが見られたり、糖尿病脂質代謝異常などを起こしやすくなったりするなどの課題があります。

そこで、最近は放射線治療後に再発した患者さんに対しても、手術用ロボットを用いたロボット手術治療を行うことがあります。これは、ロボット手術が通常の手術や腹腔鏡手術と比較して操作性がよいことから、合併症のリスクを抑えるなど手術のクオリティを高めやすいためです。ただし、たとえロボット手術であっても放射線治療後の手術は尿漏れなどの合併症が起きる可能性があるため、経験豊富な施設で治療を受けることがすすめられています。

新しい治療方法に加えて、診断の面でも新しい検査方法が登場してきています。たとえば、がんの組織採取を行う前立腺生検の方法として、“MRI画像融合生検”という方法が登場しています。この方法は従来の方法と比べ、画像を見ながら組織の採取ができるため、がんが疑われる病巣からより正確に組織を採取することができます。そのため、がんの検出率や悪性度の正確な診断ができるようになっています。

また進行がんのうち、有効性が確立された治療がなくなってしまった場合では、がんの遺伝子変異を調べる検査(遺伝子パネル検査)を行うこともあります。この検査の結果によっては、新しい薬を用いた治療を受けることができる場合があります。ただし、この検査や治療は今のところ厚生労働省の指定した限られた病院でしか受けることができません。

前立腺がんを疑う症状があれば、まずは泌尿器科の受診を検討しましょう。すでに前立腺がんの診断を受けており、治療方法や検査方法について相談したいという場合には、まずは担当医とよく話し合ったうえで、ほかの医療機関からのセカンド・オピニオンを受けることを検討してもよいでしょう。

前述のとおり、ロボット手術に関してはさまざまな取り組みが広がっています。当初ロボット手術は前立腺がんの治療手段として泌尿器科を中心に広がりましたが、2018年には消化器外科・婦人科の病気にも使用されるようになりました。当科では2021年1月に、第13回日本ロボット外科学会学術集会を主催します。本学術集会では、テーマを“ロボット新時代の幕開け”として、多くのロボット手術に携わるエキスパートに参加いただく予定です。

また、現在使用されている手術用ロボットは海外製ですが、近年は国産のロボットの開発が進んでいます。国産のロボットが発売されれば、手術用ロボットの価格が抑えられ、導入をすすめる医療機関も増えることでしょう。

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