ダビンチ®によるロボット支援手術には、さまざまなメリットがあります。
まず、傷が小さくなり、出血量が減ります。出血量が減ると、患者さんへの負担は少なくなります。同時に、医師にとっては非常にきれいな視野で手術が出来ることになります。
また、ダビンチ®は鮮明な三次元画像を見ながら手術をすることができます。それは「患者さんの中に入って手術をしているよう」と表現されます。これらにより、神経や尿禁制(尿失禁を防止しようとするメカニズム)などの機能温存も精度が高くなってきました。
このように多くのメリットがある一方で、デメリットは存在するのでしょうか? ダビンチ®による前立腺がん手術のメリットとデメリットについて、横浜労災病院泌尿器科部長の永田真樹先生にお話をお聞きしました。
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なんといっても最大のメリットは、出血量が圧倒的に少なくなったことです。これは医師にとっても、患者さんにとっても良いことです。
今までの開腹手術では、自己血を準備していました(事前に自分の血を抜くことにより、輸血用に準備をすること)。
一方、ダビンチ®では、輸血をすることはほとんどありません。そのため、自己血の準備もほとんど必要なくなってきました。今では神経温存など特殊な例を除き、この必要はなくなっています。
出血量が多くなると合併症も多くなります。これは、術野(手術をするときの視野)が悪くなるからです。出血量がコントロールされるのは医者にとっても非常に良いことなのです。きれいな術野で、さらにダビンチ®のハイビジョンによって拡大することすらできるということは、まさに「患者さんの中に入って手術をしているようなもの」であり、安全に手術を行うことができます。
もちろん、出血量が少ないのは患者さんにとっても良いことです。出血量は手術後の体力の回復に大きく影響します。ダビンチ®での手術後の患者さんは、手術をしたことがわからないほど元気であることもあります。すると当然、術後の回復・社会復帰も早くなります。
ダビンチ®で行う手術では傷が小さくなります。元々横浜労災病院では開腹手術でも小さい傷で行っていました(下腹部5~6cm)。しかしダビンチ®では、ひとつひとつの傷がさらに5~12mmにまで小さくなります。
ただし、ダビンチ®では短い傷を複数つくるため、傷の長さを合計すると大きな差はなくなります。それでもひとつひとつの傷が小さいことはメリットといえます。それは連続して長いことよりも、短い傷がいくつかある方が手術後の痛みや感染の危険性が少なくなるからです。
しかし「言われていたよりは痛い」という患者さんもいらっしゃいます。これは、ロボット支援手術であっても、骨盤内を操作する範囲がそれなりに大きいためと推測されます。
ダビンチ®では、執刀医が座りながら手術ができます。前立腺の手術のように深い部分を操作する際には、執刀医が腰を痛めることが多くありました。それに対して、ダビンチ®の手術では腰を痛めることがありません。
横浜労災病院では腹腔鏡を用いた前立腺全摘手術は施行していなかったため、比較は知人を通しての話となりますが、腹腔鏡下手術とは手術のしやすさがまったく違うという意見が多数あります。「なんだ、こんなに楽だったのか!」という感覚だそうです。
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患者さんにとっては明らかなデメリットはありません。
医師の負担という意味では、「腰は楽になったが、モニターに入りっぱなしなので目が疲れてしまう」等の意見もあります。「3D画像の映画をずっと見続けていたら目が疲れた」という状態に近いといえます。
また、これも前述のとおり、一時的に手術時間が長くなります。ただし手術時間に関しては、執刀医やスタッフの熟練度が上がれば、いずれ短くなっていくでしょう。
※ダビンチ®の画像は、インテュイティブサージカル合同会社ウェブサイトより許可を得て転載しております。
横浜労災病院 泌尿器科 部長
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