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インタビュー

危険度の低い前立腺がん-焦って治療を受けてはいけない

危険度の低い前立腺がん-焦って治療を受けてはいけない
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

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この記事の最終更新は2016年05月15日です。

前立腺がんと診断されたら、治療法やQOL(生活の質)について、がんのケアチームと話をしてみてください。

ケアチームには、泌尿器科医、放射線腫瘍医がいることが望ましいでしょう。腫瘍科医からのアドバイスも受けられます(詳しいケアチームの説明については後述します)。一般的な治療は、手術治療と放射線治療です。

しかし、さらにもう一つ、知っておくべき方法として「監視療法」あるいは「待機療法」というものがあります。これは、危険度の低い前立腺がんの男性が対象になります。監視療法では、ケアチームが病勢を注意深く経過観察することになります。検査により、がんが進行していると判明すれば治療が開始されます。監視療法についてケアチームと相談するのが良いでしょう。以下にその理由を述べます。

危険度の低い前立腺がんの男性の多くは、即座に手術治療か放射線治療を受けていますが、多くの場合、治療は必要ありません。それどころか、治療をすることで、性機能、排尿や排便の障害などが起こることもあります。

前立腺がんの多くは、PSA検査によって見つかりますが、危険度は高くありません。その理由として以下が挙げられます。

  • 腫瘍が小さい
  • 前立腺の中に収まっている
  • 非常にゆっくりと進行しているので、命に関わることが考えにくい

危険度の低い前立腺がんの男性の死因は、前立腺がん以外であるのが一般的で、これは治療を受けているかどうかで変わりません。

この方法では、PSA検査や直腸診などをはじめ、いくつかの検査を定期的に受けることになります。前立腺の生検も必要に応じて受けることになるかもしれません。がんが進行しはじめたらいつでも治療を開始することができます。

危険度の低い前立腺がんの男性の多くにとって監視療法は有用で、副作用はありません。高齢者あるいは、健康状態が悪い人には特に向いています。

手術療法あるいは放射線治療による副作用には以下のようなものがあります。

  • 勃起不全 – 性交渉に十分な程度の勃起が起きなくなる
  • 尿失禁 – 膀胱機能が完全に喪失することがあります。それほど高い頻度ではありません。
  • 頻発で急におこる出血性の痛みを伴う腸運動

前立腺がんが進行したり、危険度が高ければ、すぐに治療を開始する必要があるでしょう。危険度が高いがんには以下のような兆候があります。

  • PSA値が高いか急激に上昇している
  • 検査により前立腺の外に腫瘍が見つかった場合、もしくは、がんの進行が早く前立腺の外に広がると考えられる場合
  • グリソンスコアで、高リスクに分類されたとき

これらの徴候があるかどうかをケアチームに尋ねてみてください。もしあるのならば、監視療法は良い選択とは言えないでしょう。

ケアチームからアドバイスを受けることはとても重要で、人によっては、危険度の低いがんで、治療に副作用があるとしても、即座に治療した方が良いこともあるでしょう。どのような治療の選択肢があるのかを話し、生活の質(=QOL)についても議論してみてください。

危険度の低い前立腺がんの男性の多くには、治療の選択肢について吟味する時間があります。選択する上で、以下のヒントが役に立つかもしれません。

がんのケアチームに、ご自身や家族の病歴を伝えてください。年齢や全身の健康状態がどのくらい治療に影響するか、また、治療の危険性が上昇する可能性があるような状態にないかどうか尋ねてください。例えば、糖尿病心疾患、腸疾患は性機能、排尿や排便の障害を招きかねません。

以下のようなことを、配偶者あるいはパートナーと話し合ってみてください。

  • 性機能、排尿の障害が起こるとしても、がんを取り除きたいと思うだろうか?
  • どのような副作用が自分にとっても最も困るものだろうか?
  • 不安になったり、さらに診察に行く必要があったとしても、監視療法を行うことに納得できるだろうか?

選択肢に関しては、メリットとデメリットどちらについても尋ねてみてください。医師によっては、自分が最もよく知る選択肢しか提示しない場合があるでしょう。がんケアチームには、最低限以下のような専門職がいるべきです。

  • 放射線腫瘍医は監視療法と放射線治療について説明できます。
  • 泌尿器科医は手術治療について説明できます。
  • 腫瘍科医は将来がんが進行したときに、どのような治療が必要になるかを説明できます。

病院あるいはがんセンターに、こういった医師たちに一度の通院で診察を受けられないかを尋ねてみてください。また、かかりつけ医には、どのような選択をしたか伝えてください。

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム

監修:小林裕貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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