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インタビュー

ごく早期の前立腺がん治療におけるアクティブサーベイランス(待機療法)について

ごく早期の前立腺がん治療におけるアクティブサーベイランス(待機療法)について
江藤 正俊 先生

九州大学大学院 医学研究院 泌尿器科学分野 教授

江藤 正俊 先生

前立腺がんと診断されても、その全てで治療が必要というわけではありません。早期でしかも悪性度の低いおとなしいがんの場合には、アクティブサーベイランスという待機療法を行うこともあるのだといいます。

九州大学大学院泌尿器科学分野教授の江藤正俊先生にアクティブサーベイランスの現状についてお話をうかがいました。

前立腺がんの治療は、がんの進行度や悪性度、患者さんの年齢や全身状態などを考慮して選択されます。がんが前立腺内に限局している早期の段階であれば根治療法が望めるため、手術療法や放射線療法などで完治を目指します。しかし、診断の時点でがんが遠隔転移していたり、あるいは再発したりしている場合には、病状に応じて手術療法や放射線療法のほか、ホルモン療法などが行われます。

私が医師になったのは、1986年のことですが、その当時は前立腺がんと診断された方のおよそ半数は診断された時点で骨転移などがみられました。しかし現在では、初診時に骨などへの転移を有する方は全体の10%程度です。つまり、前立腺に限局した早期のがんが発見されるようになったわけですが、その背景にはPSA(前立腺特異抗原)検診の普及があります。ほかのがんでも同じことがいえますが、検診が普及すればするほど、ステージマイグレーションといって早期の段階のがんが発見されるようになるのです。

PSA検診に関しては、根治の望めるがんが多く発見されるようになった一方で、みつけなくてもいいがん、つまり治療の必要のないがんまで拾い上げてしまうという欠点があるのも事実です。PSAによるスクリーニングにおいては、アメリカの予防医療タスクフォース(USPSTF)が、2008年に前立腺がんのスクリーニングに対して、「PSA検診の推奨グレードをDとする」という勧告を出しました。推奨グレードDとは、「推奨しない」の意味です。日本泌尿器科学会はすぐに反論として、PSA検診は有効性があるとする声明を出しましたが、PSA検査を推奨しないとする勧告が出された背景には、PSAの有効性を否定する論文がアメリカから出されたことにあります。しかし、その研究デザインや精度の低さなどに加え、その後PSAの有効性を示す精度の高い研究論文などが報告されたことなどから、論争は現在では収束しているところです。

しかし、実際に治療の必要のない前立腺がんがPSA検査によって発見されているのも事実です。そこで、すぐには治療の必要のないおとなしいがん、つまり命に直接かかわる可能性の低い早期の前立腺がんに対しては、アクティブサーベイランス(待機療法、待機的管理)を選択肢のひとつとして患者さんに提案しています。その対象となるのは、「Gleasonスコアが6以下」「生検陽性コア数が2本以下」「PSA値が10ng/mL以下」の場合です。

この三つに該当する場合は、例えほかの施設からダヴィンチ手術を目的として紹介されてきたとしても、すぐに治療の必要はないことなどを患者さんに伝えます。患者さんとしては選択肢が広がるわけですが、それでも治療を希望するという方については治療を行います。

アクティブサーベイランスは、がんがあることを把握した上で治療をしないわけですから、慎重な対応が求められます。1年後には必ず病状を再評価するためのプロトコール生検を行い、そこでGleasonスコアが6以下であればそのまま継続して待機療法を行いますが、スコアが7以上となった場合は治療の対象となります。患者さんの中には、こういった定期的な検査が面倒だからといって治療を希望される方もおられます。

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