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結節性硬化症による腎血管筋脂肪腫(腎AML)とは

結節性硬化症による腎血管筋脂肪腫(腎AML)とは
江藤 正俊 先生

九州大学大学院 医学研究院 泌尿器科学分野 教授

江藤 正俊 先生

目次
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こちらのページでは、小児科の立場からみた結節性硬化症について、九州大学医学部 小児科成長発達医学分野 准教授の酒井 康成(さかい やすなり)先生にお話を伺いました。

今回は、結節性硬化症でみられる症状の1つである腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:腎AML)について、九州大学大学院医学研究院 泌尿器科学分野 教授の江藤 正俊(えとう まさとし)先生に解説していただきました。

結節性硬化症は、全身に過誤腫(かごしゅ)と呼ばれる良性の腫瘍(しゅよう)が形成されることで多様な症状が現れる病気です。なかでも、腎臓に合併症が現れるリスクは大きく、結節性硬化症の患者さんの60~80%の方に、がん嚢胞(のうほう)など、何らかの腎病変が認められるとされます。この腎病変の中でも、非常に多くみられる病態が、腎血管筋脂肪腫(腎AML)です。

腎血管筋脂肪腫(腎AML)は、腫瘍が小さい初期段階では症状がないことが多く、血液検査でも異常値として現れません。徐々に腫瘍は増大し、やがて4cmを超えるサイズになると、脇腹が痛む、脇腹に腫瘤(しゅりゅう)ができる、血尿が出るなどの症状が現れるようになります。

9歳以下の患者さんには、腎血管筋脂肪腫(腎AML)はあまり多くみられません。そもそも、結節性硬化症の患者さんが医療機関を受診するきっかけは、乳幼児期に発症するてんかんなどの精神神経症状であることが多いとされます。

ところが患者さんが10歳代になると、結節性硬化症による腎血管筋脂肪腫(腎AML)の発症頻度は急激に増加します。そのため、腎血管筋脂肪腫(腎AML)の出現を見逃さないようにするために、結節性硬化症と診断された患者さんは、10歳を超える頃に泌尿器科を受診し、泌尿器を専門とする医師に腎病変の有無を診てもらうのが望ましいと考えられます。

腎血管筋脂肪腫(腎AML)でみられる腫瘍は、発症後徐々に大きくなっていきます。その過程で、腫瘍内部に動脈瘤ができることがあります。腫瘍が大きいほど動脈瘤も大きくなり、腫瘍の大きさが4cm、動脈瘤の大きさが5mmを超えると、動脈瘤が破裂し出血するリスクが高くなるといわれています。

万が一動脈瘤が破裂すると動脈性の大量出血が起こり、ショック状態となったり、腎機能が低下したりと、命に危険が及ぶ恐れがあります。

腎機能が著しく低下してしまうと将来的に透析治療が必要となる場合もあるため、できるだけ腎機能を保てるよう、速やかに治療を行います。

動脈瘤が破裂した状態で搬送された患者さんに対しては、動脈塞栓術(どうみゃくそくせんじゅつ)を行うことが第一選択とされます。

動脈塞栓術は、手術と比べると患者さんの体への負担は比較的少ないとされていますが、塞栓術に伴う合併症のリスクとして、場合によっては腎臓の血管を損傷する危険性があります。

このように、動脈瘤が破裂したときの緊急対応は定められていますが、まずは動脈瘤の破裂を未然に防ぐため、腎血管筋脂肪腫(腎AML)の早期発見と早期治療を実現することが重要であるといえます。

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