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腎血管筋脂肪腫(腎AML)の治療

腎血管筋脂肪腫(腎AML)の治療
江藤 正俊 先生

九州大学大学院 医学研究院 泌尿器科学分野 教授

江藤 正俊 先生

目次
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前のページでは、結節性硬化症の代表的症状である腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:腎AML)の概要を、九州大学大学院医学研究院 泌尿器科学分野 教授の江藤 正俊(えとう まさとし)先生にお話しいただきました。今回は、腎血管筋脂肪腫(腎AML)の治療方法について、より詳しく解説していただきます。

腎血管筋脂肪腫(腎AML)に対する治療では、腫瘍(しゅよう)内の動脈瘤(どうみゃくりゅう)の破裂による出血を回避し、腎機能を保つことが、一番の目標です。

具体的には、以下の方法により、腫瘍が大きくなることを防いでいきます。

動脈瘤が破裂して出血が起こった場合の第一選択として、前のページで、動脈塞栓術を紹介しました。

これに加え、腫瘍が大きくなって破裂のリスクが高まった状態の腎血管筋脂肪腫(腎AML)に対して、予防的に動脈塞栓術を施行することもあります。

腎血管筋脂肪腫(腎AML)における動脈塞栓術では、腫瘍近くの動脈を閉塞し、腫瘍を壊死させます。

結節性硬化症の原因となる遺伝子異常に伴う病態を、内服薬で抑えます。2020年1月現在この治療に用いられているのは、エベロリムスという分子標的薬です。エベロリムスは、結節性硬化症の症状を引き起こす原因タンパクmTORのはたらきを抑制し、症状を軽減します。

エベロリムスによる治療の詳細は後ほど詳しく述べます。

2020年1月現在、九州大学では凍結療法に関する医師主導臨床研究*の準備中で、間もなく開始する予定です。凍結療法とは、皮膚に刺した針の先端を急速冷凍することで、腫瘍を壊死させる方法です。凍結療法については、次のページにて詳しくご紹介します。

このほか、塞栓術による止血が困難な場合や悪性腫瘍と鑑別がしにくい場合、腫瘍がかなり大きく腹部圧迫が強い場合などには、腎臓を部分的または全体的に切除する方法が選択されることもあります。

*凍結療法に関する医師主導臨床研究:“結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に対する凍結療法の安全性と有効性の検討”

エベロリムスによる内服治療では、結節性硬化症の症状を軽減する効果はすでに明らかにされていますが、その一方で、副作用についても報告されています。

結節性硬化症は、がんを抑制する特定の遺伝子(TSC1TSC2)に異常が生じることが原因で起こるといわれています。

これらの遺伝子に異常があると、mTORというタンパクのはたらきが強くなり、腎血管筋脂肪腫(腎AML)をはじめとする症状を引き起こします。

エベロリムスは、このmTORのはたらきを抑え、腫瘍の増大を防ぎ、症状を軽減する効果が認められています。

エベロリムスには免疫を抑制する作用もあるため、内服中は肺炎などの感染症に注意が必要です。

また、妊娠している患者さんに対するエベロリムスの安全性は、2020年1月現在、まだ明らかにされていません。将来的に妊娠を希望する患者さんを含めて、慎重に使用することが推奨されています。

過去の試験において、エベロリムスの内服中は、腎血管筋脂肪腫(腎AML)による腫瘍が小さくなっていくことが報告されています。

その一方で、エベロリムスは結節性硬化症そのものを治す薬ではないため、内服をやめると腫瘍が再び大きくなる可能性が指摘されています。

そのため、腎血管筋脂肪腫(腎AML)の進行を抑え続けるためには、長期にわたる服用が必要となりますが、免疫機能低下などの副作用の問題もあります。服用期間や休薬のタイミングなど、より安全な薬の使い方を確立していくことが、エベロリムスによる薬物療法の今後の課題といえます。

腎血管筋脂肪腫(腎AML)の治療における課題の解決策として、先にご紹介した動脈塞栓術や薬物療法、凍結療法などの治療法を上手に組み合わせることで、腎血管筋脂肪腫(腎AML)の進行を抑制する治療法が検討されています。

これからの腎血管筋脂肪腫(腎AML)に対する治療は、既存の治療法を組み合わせながら繰り返していくことで、末期腎機能障害に陥るまでの時間を遅らせることが目標となるでしょう。

次のページでは、私たちが研究を進めている腎血管筋脂肪腫(腎AML)に対する凍結療法についてお話しします。

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