概要
肺炎とは、気道を通して侵入した細菌やウイルスなどの病原体が肺内で増殖し、炎症が引き起こされた状態です。肺炎は呼吸器の病気の中でも比較的よく見られます。日本の死亡原因の第5位(2019年)といわれていますが、その要因は人口の高齢化による高齢者肺炎の増加と、これによる死亡者の増加です。
肺炎はどこでかかったかによって市中肺炎と院内肺炎に大きく分けられます。市中肺炎は自宅など日常の生活の中で発症した肺炎、院内肺炎は病院に入院後48時間以降に発症した肺炎を意味します。また日本では、市中肺炎をさ“細菌性肺炎と“非定型肺炎”に分けて考えることを重要視しています。これは、症状や身体所見、検査所見からある程度見分けることが可能で、治療に使用する薬が若干異なるためです。
原因
肺炎にかかりやすくなる要因
肺内に病原体が侵入し、増殖することが原因です。肺炎にかかりやすくなったり治りにくくなったりする要因として下記のようなものが挙げられます。
- 脳血管障害
- 呼吸器疾患(肺気腫、肺結核後遺症、間質性肺炎など)
- 心疾患
- 腎疾患
- 糖尿病
- 悪性腫瘍
- 先天的に免疫が不全の状態(原発性免疫不全症候群(PID))
- 後天的に免疫が抑制された状態(ステロイドや免疫抑制剤、抗癌剤を使用中)
- 誤嚥(飲食物や唾液が誤って気管に入ってしまう状態)など
肺炎の病原体
病原体として、市中肺炎の原因となる頻度が高い微生物は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジアなどです。肺炎球菌とインフルエンザ菌は先に述べた細菌性肺炎の原因となる病原体で、肺炎マイコプラズマと肺炎クラミジアは非定型肺炎の原因となる病原体です。また頻度は少ないですが、ウイルスも原因となる場合があります。
院内肺炎では、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や緑膿菌などの抗菌薬が効きにくい細菌が原因になることが多くなります。肺炎球菌、インフルエンザウイルス、レジオネラによる肺炎は重症化する場合があることが知られています。また、免疫が抑制された状態にあると、ニューモシスチス・ジロベチ(真菌の一種)やサイトメガロウイルスといった病原体でも肺炎になることがあります。
症状
症状は多彩ですが、発熱、咳、膿性痰が主な症状です。肺から胸膜まで炎症が広がることにより胸痛が生じる場合もあります。
重症になると呼吸が困難になったり、意識が悪くなったりすることがあります。また病原体によっては、筋肉痛や腹痛・下痢といった一見肺炎とは関連がなさそうな症状が出たり、高齢者では典型的な症状が目立たず、食欲低下や全身倦怠感などが主な症状となったりする場合があるため注意が必要です。
非定型肺炎は、頑固な咳がある、痰がない、基礎疾患がないあるいは軽い、年齢が若い、血液検査で白血球数が上がらないなどが特徴とされています。肺炎が治った後も、咳はしばらく続く場合があります。これを感染後咳嗽といいます。
検査・診断
肺炎の診断は、症状、身体所見、血液検査、胸部X線写真、胸部CTなどを総合して行います。血液検査では体内で炎症が起こったときに上昇する白血球やCRPの値を参考にします。胸部X線写真や胸部CTでは、肺炎はスリガラス影や浸潤影と呼ばれる肺内の白い影として写ります。また、病原体を検索するために尿や血液、咽頭ぬぐい液の抗原・抗体を調べたり、痰の中の菌を培養して調べたりすることも治療のうえで重要となります。
治療
原因により異なりますが、細菌が原因と考えられれば抗菌薬を用いて治療します。ウイルスが原因であれば抗ウイルス剤を用いる場合もあります。検査で病原体が特定できれば、これに応じた薬が使用されます。
軽症で全身状態がよければ、通院で内服薬を飲みながら治療できますが、高齢者の場合や脱水がある、食事が取れない、体内の酸素の数値が低い、意識が悪い、血圧が低いといった中等症・重症の肺炎が疑われる場合は入院し注射薬を使う必要があります。呼吸不全が強くなると、酸素の吸入や人工呼吸器の装着も必要になる場合もあります。
予防
予防という点では、特に高齢者ではインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が重要です。インフルエンザワクチンが重要な理由は、インフルエンザ感染により、気道の粘膜が荒れて細菌などの病原体が侵入しやすい状態になり、肺炎を合併することがあるためです。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎の原因として頻度が高い肺炎球菌による肺炎を防ぐ効果が期待できます。しかし、肺炎を完全に予防できるわけではないため注意が必要です。
また肺炎の原因として誤嚥の関与がある場合には、食事中や食後に座位を保つことや、口腔内を清潔に保つ、誤嚥を悪化させる可能性がある睡眠薬や抗うつ剤などの薬を減量・中止するといった予防法があります。
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