めんえきふぜんしょうこうぐん

免疫不全症候群

同義語
免疫不全疾患,免疫不全症
最終更新日:
2024年11月15日
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2024/11/15
更新しました
2018/08/24
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概要

免疫不全症候群とは、細菌やウイルス、真菌などの病原体から体を守るための免疫が正常に機能しないために、感染症を繰り返したり重症化したりする病気の総称です。免疫不全疾患や免疫不全症と呼ばれることもあります。

免疫不全症候群は、主に先天的な原因によるものと後天的な原因によるものに分けられます。先天的な免疫不全症候群は“原発性免疫不全症候群”と呼ばれ、遺伝子の変異などによって免疫がうまく機能しなくなることで症状が現れるようになります。

一方、後天的な原因による免疫不全症候群は“続発性免疫不全症候群”と呼ばれ、抗がん薬や免疫抑制薬などの薬、放射線の副作用によって起こるもののほか、糖尿病などの病気や、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染による後天性免疫不全症候群(エイズ)などがあります。

免疫不全症候群は、ときに重篤な感染症を引き起こし、命に関わることもあるため適切な感染予防や治療、管理が必要です。

原因

免疫不全症候群には、主に先天的な原因によるものと、後天的な原因によるものがあります。それぞれの原因として、以下のようなものが挙げられます。

原発性免疫不全症候群

原発性免疫不全症候群は、生まれつきの遺伝子変異によって、免疫を担う細胞が正常に機能しなかったり作られなかったりすることで引き起こされます。原発性免疫不全症候群にはさまざまなタイプがあり、原因となる遺伝子変異は400以上あることが分かっています。

続発性免疫不全症候群

続発性免疫不全症候群は、抗がん薬や免疫抑制薬などの薬、放射線の使用、免疫の機能に異常をきたす糖尿病白血病などの病気が原因となります。また、HIV感染によって引き起こされるエイズも続発性免疫不全症候群の1つです。HIVに感染すると、免疫を担う白血球という細胞の一種がダメージを受け、免疫機能が正常にはたらかなくなります。

そのほか、低栄養の状態が続くと免疫の機能が低下するとされており、高齢の方や入院している方に免疫不全症候群が起こることもあります。

症状

免疫不全症候群では、細菌、ウイルス、真菌などの病原体に繰り返し感染し、重症化しやすくなります。免疫機能が正常にはたらいていれば症状が出ないような病原体であっても、免疫機能が低下している状態では、強い感染症症状が現れることがあります(日和見感染症)。発熱、悪寒、体重減少などの症状は多くの患者にみられます。

特に、空気にさらされることの多い鼻やのど、肺などの呼吸器に感染が生じやすくなります。鼻汁、咳や痰、喉の痛み、喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼーとした呼吸音)、息苦しさなどの症状がみられ、重症化した場合には、肺炎を発症することもあるため注意が必要です。

また、免疫不全症候群は消化器系や皮膚にも症状が現れることがあります。具体的には下痢や血便、腹痛、嘔気・嘔吐、皮膚の(のうよう)、びらん(ただれ)、潰瘍(かいよう)、出血などがみられることがあります。特に乳幼児では下痢が続きやすくなったり、発育の遅れがみられたりする場合があります。

免疫不全症候群の一部では、リンパ節、肝臓や脾臓の腫れ、自己免疫疾患(免疫が自分の体の一部を攻撃することで起こる病気)、がん・リンパ腫などの発症につながる場合もあります。

検査・診断

免疫不全症候群が疑われるときは、以下のような検査が行われます。

血液検査

どの免疫細胞の機能が低下しているかを確認するための検査が行われます。採血をして、白血球の総数や好中球、Bリンパ球、Tリンパ球、抗体などの数や種類、機能を調べます。また、HIV感染が疑われる場合は、感染の有無を調べるための血液検査も必要です。

遺伝子検査

原発性免疫不全症候群が疑われるときは、原因となっている遺伝子変異を明らかにするために血液を採取して遺伝子の状態を調べる遺伝子検査を行うことがあります。専門医に相談し、遺伝カウンセリングを受けるようにしましょう。

画像検査

免疫不全症候群は、肺炎リンパ節炎などを引き起こしやすい病気です。そのため、これらの合併が疑われるときは、必要に応じてX線、超音波、CT、MRIなどによる画像検査が行われます。

治療

感染症を起こしている場合には、病原体に対して効果が期待できる抗菌薬や抗真菌薬、抗ウイルス薬、免疫グロブリン製剤による治療が行われます。また、免疫不全を起こしている根本的な原因に対する治療介入も必要です。エイズであれば、HIVをコントロールするための抗ウイルス薬が使用されます。治療によってウイルスの量を減らし、免疫機能を回復・維持させることが重要です。また、がん糖尿病などの病気、薬の副作用が原因の場合は、原因となっている病気の治療や薬の変更などが必要となります。

原発性免疫不全症候群の場合は、遺伝子の変異によって引き起こされるため、治療方法は病気のタイプによって異なります。一般的には感染症を予防するための抗菌薬の投与や、免疫グロブリン製剤の定期的な投与などが行われます。また、重症の場合には根本的な治療法として、造血細胞移植が検討されます。

造血細胞移植:血液中の白血球・赤血球・血小板の元となる造血幹細胞を、ドナーの骨髄、末梢血あるいは臍帯血バンクに保存してある臍帯血から提供を受けて移植する治療法。

予防

原発性免疫不全症候群は、生まれつきの遺伝子異常によるものであり、予防することはできませんが、早期発見により予後の改善が期待できます。

最近では、もっとも重症な免疫不全症である重症複合免疫不全症(SCID:スキッド)、B細胞欠損症(BCD:ビーシーディー)に対する新生児スクリーニング(生まれたばかりの赤ちゃんのかかとの血液を少量とって行う検査)が、全国で開始されており、予後の改善が期待されます。

HIV感染によるエイズは、感染者の体液を介して感染することによって発症する病気であるため、コンドームの着用、他者の血液や体液に直接触れないことなどを徹底すれば予防することが可能です。また、がん糖尿病などの病気が原因で引き起こされる免疫不全症候群は、原因となる病気に対して適切な治療を継続することが予防につながります。

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