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エイズ

目次

エイズとは

 エイズ(後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome; AIDS))とは、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus; HIV)に感染することで引き起こされます。HIVに感染し適切な治療を受けないと、免疫力が低下することになり、正常な免疫力を有する健康人であれば問題になることのない感染症を発症したり(日和見感染症と呼びます)、悪性疾患を引き起こしたりします。この状態のことをエイズと呼びます。
 世界におけるHIV感染者数は3500万人に昇ると報告されており、毎年100万人以上の方がエイズにより亡くなっています。日本に目を向けると、2015年までに年間1000人前後の新規感染者があり、400件前後のエイズ患者新規発生が報告されており、HIV感染者とエイズ発症者は男性が大半を占めています。
 HIVに対しての薬剤に関しての進歩は目を見張るものがあり、エイズを発症しないようにコントールすることは、以前に比べて格段に容易になってきています。その一方で、日本におけるHIV新規感染者数とエイズ患者については、ここ数年横ばいの状況が続いており、さらに積極的な啓蒙活動や治療介入が必要な状況です。
その他、こちらの記事もご参考ください。
【HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とは】
【尾上 泰彦先生のプロフィール】
【HIVの感染者について】

原因

 エイズは、HIVに感染することで発症します。HIV感染後の症状は主に3期に分類することができ、感染初期、無症候性期、エイズ期と次第に進行していきます。HIVに感染したのみでは、明らかな自覚症状は伴いません。しかし、HIVが体内で増殖をすると、徐々に免疫機能に影響が及ぶようになり、およそ5〜10年ほどの年数を経たのちに、健康な状態ではかからないような様々な疾患を発症するようになります。こうした疾患には、主に①日和見感染症(正常な免疫であれば問題になることのない感染症)と②HIVに関連した悪性腫瘍、の二つに分類することができます。こうした続発する感染症や悪性腫瘍に関連した症状が前面に出るようになります。
 HIVウイルスの感染原因には、性行為による感染、注射器の使いまわしなどによる血液感染、母体や母乳などを介する母子感染、非加熱製剤による感染があります。入浴やプールなど水を介してなど、日常生活で感染することはありません。
 これら感染経路のうち、日本で最も多く見られるのは性行為による感染です。母児感染については、感染予防策を講じることがなければ30%ほどの確率で母親から子どもにHIVがうつると考えられています。また、日本ではHIVが輸血製剤に混入しているかどうかのスクリーニングがされており、輸血に関連したHIV感染のリスクは少ないと考えられています。しかしながら、検査の限界もあり100%防止できる訳ではありません。
その他、こちらの記事も参照下さい。
【HIVの感染について】

より詳しい情報はこちら

症状

 HIVの感染後の経過は、①感染初期、②無症候性期、③エイズ期、の三つに分類することができます。
① 感染初期
 HIVが体内に侵入してすると、3〜6週間後にウイルスが急速に増殖する時期があり、この時期を感染初期と呼びます。この時期には、発熱、筋肉痛、全身倦怠感などインフルエンザに類似した症状が出現します。しかしながら、感染者すべてに対してこうした症状が出現する訳ではなく、積極的な治療介入をせずとも数日から数週間の経過で自然に改善します。
 また、こうしたインフルエンザ様の症状に加えて、HIV感染の初期には皮膚症状を多くの患者さんで認めることも特徴です。大きさは1cm前後の赤い発疹であり、同様に自然に改善します。
② 無症候性期
 感染初期の症状が収束すると、HIVのウイルス量はある程度免疫反応により抑制されます。数ヶ月から10年ほど、HIVの治療をせずとも無症状で経過します。こうした無症状の時期は、感染者本人も治療の必要性を感じることがありません。そのため、治療介入が遅くなると同時に、他人へHIVを知らず知らずのうちに移してしまう危険性もはらんでいる時期です。
③ エイズ期
 無症候期は自覚症状に乏しいとは言え、HIVは徐々に感染者の免疫機能に障害を与え続けています。ある一定レベルまで免疫機能が障害されると、普段は感染することのない病原体に対して感染症状(日和見感染症)を示すようになります。さらに、正常の免疫があれば発症するリスクの少ない悪性腫瘍を発生することもあり、この時期をエイズ期と呼びます。
 症状の出現の仕方には個人差がありますが、帯状疱疹を発症した場合には皮膚に水ぶくれが生じヒリヒリとした痛みを伴うようになります。またニューモシスチス肺炎と呼ばれる肺炎を発症すると、咳や痰などを訴えるようになります。さらに病状が進行すると、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍を発生することもありますし、HIVそのものにより引き起こされるHIV脳症に至ることもあります。HIV脳症では意識状態の変容が起きたり、認知症の症状が出現したりします。
 慢性的に経過する時期であるため、下痢や全身衰弱、体重減少等も出現するようになります。
その他、こちらの記事も参照下さい。
【HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が引き起こす症状について】
【HIVに感染すると発疹ができることがある-HIVの皮膚症状について】

検査・診断

 エイズの治療を成功させるためには、早期にHIVを同定し早期に治療介入を開始することがとても大切です。HIVの感染様式は主に性交渉であることから、不特定多数の人と性交渉をしたり、コンドームを使用しなかった場合等には感染のリスクを考慮する必要があります。
 HIVの感染が疑われる病歴がある時には、保健所や病院等でスクリーニングを目的とした血液検査を受けることができます。この検査ではHIVに対する抗体を検討するものであり、スクリーニングの性格上、陽性者を極力拾い上げるように設定されています。そのため、実際には感染していない場合でも陽性結果が出ることもあり得ます。また、HIVに感染後およそ6〜8週間はウインドウピリオドと呼ばれる期間があります。この期間は、HIVに感染していたとしてもスクリーニングの検査が陰性になる可能性があります。スクリーニングの結果を正しく判断するためには、この時期を避ける必要があります。
 スクリーニング検査で陽性結果が出ると、最終確定をするための確認検査が行われます。日本ではウェスタンブロット法と核酸増幅法と呼ばれる検査を併用して最終的にHIVを確定します。2014年6月、米国においては「第4世代HIV抗原抗体同時検出法」がスクリーニングとして推奨されました。この方法により、より簡便により正確な診断が可能になると期待されており、日本における導入も検討されています。
 また治療期間中には、HIVのウイルス量を低く保つことが目標の一つになります。薬による治療効果判定の指標として使用する目的があり、血液中ウイルス量も重要な検査になります。さらに、日和見感染症を発症しないためには、白血球(特にCD4陽性リンパ球)の数を一定レベル以上に保つ必要があります。CD4陽性リンパ球は、人の免疫をコントロールする司令塔的な役割を担っており、HIVが感染する細胞です。治療効果がうまくいっている場合には、CD4陽性リンパ球がうまく機能していることを意味し、日和見感染症のリスクも減らすことができます。
その他、こちらの記事も参照下さい。
【HIVの検査の手順について】
【HIVの陽性反応】
【HIVを治療するにあたって必要な指標、CD4陽性リンパ球と血中RNA量(HIV RNA量 )とは?】
【HIVの検査キットについて】
【HIVの即日検査について】

治療

 エイズの治療の第一目標は、いかにHIV量をコントロールしてそもそもエイズを発症させないかです。
 HIVのウイルスをコントロールするために、現在までのところ数多くの薬が使用されています。HIVの治療は、抗HIV薬を3剤以上使用した、多剤併用療法(ART)とよばれる治療方針がとられます。多剤を併用する理由の一つは、一剤のみではHIVの薬に対する効果が比較的早期になくなってしまう(薬剤耐性と呼びます)ことがあり、多剤併用により薬剤耐性の危険性を少しでも軽減するためです。HIV治療中は、無症状であることもあり、いかに薬を忘れずに飲むかも重要な観点です。そのため、1日1回の内服でも効果が期待できる薬も多く使用されるようになっています。具体的に日本で使用可能なHIV治療薬は、ヌクレオシド系逆転者酵素阻害薬、非ヌクレオシド系逆転者酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬、CCR5阻害薬、の5種類に分類することができます。これらの薬剤を複数種組み合わせることで、治療成績の向上に大きく寄与しています。
 以上のような薬を内服しながら、エイズの発症を遅らせることが治療の第一目標です。ひとたびエイズが発症すると、数多くの感染症や悪性疾患に罹患するようになり、適宜、抗生物質、抗ウイルス薬、抗がん剤などを使用する必要がでてきます。エイズになると免疫機能は、正常状態と比べて格段に障害を受けており、積極的な治療介入でもうまくいかないことが懸念されます。
その他、こちらの記事も参考下さい。
【HIVの治療について】
【HIVの治療薬】

参考
【エイズとは(国立感染症研究所)】
【厚生労働省エイズ動向委員会】
【HIV/AIDS(WHO)】
【AIDS(CDC)】

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