やくざいたいせい

薬剤耐性

同義語
AMR
最終更新日:
2023年07月04日
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2023/07/04
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概要

薬剤耐性(AMR)とは、病原体に対して効果があったはずの治療薬が効きにくくなること、あるいは効かなくなることをいいます。

細菌やウイルス、寄生虫などの病原体に感染することによって生じる病気を“感染症”といい、特に細菌に対して効果を示す治療薬は“抗菌薬(抗生物質・抗生剤)”と呼びます。抗菌薬の起源となるのは、1928年にフレミング博士が発見した“ペニシリン”で、その後現在に至るまでさまざまな抗菌薬が開発されてきました。一方で1940年代ごろから薬剤耐性を持つ細菌が登場し、時代とともに増加してきたことにより、従来効果があったはずの抗菌薬ではうまく治療ができない薬剤耐性菌感染症も増えてきました。このような薬剤耐性菌は、今後も増えていくことが懸念されています。

薬剤耐性菌の数が増加している一方で、新たな抗菌薬の開発は世界的に減少傾向にあります。これにより、今まで治療をすれば軽症で済んでいた感染症が重症化しやすくなったり、時に命に関わったりする危険性もあります。そのため、近年は世界中でこれ以上薬剤耐性菌を増やさないよう、抗菌薬の不適切な使用の中止が呼びかけられているほか、薬剤耐性菌に対応した新薬の開発、新しい薬剤耐性菌の監視徹底など、薬剤耐性に対する取り組みが行われています。

原因

病原体に薬剤耐性が生じてしまう主な原因は、治療薬の不適切な使用にあります。

たとえば、不適切な種類の抗菌薬を使用したり、抗菌薬を不必要なタイミングで使用したりしてしまうと、体の中に存在する細菌がその抗菌薬への薬剤耐性を持つようになります。また処方された抗菌薬を飲みきらず「症状がよくなったから」などと個人の判断で服用を中止してしまった場合にも、体の中に残った細菌から薬剤耐性菌が出現する可能性があります。このようなきっかけで発生した薬剤耐性菌が周囲の人々に広がることで、 “薬剤耐性菌感染症”が広がってしまいます。

薬剤耐性が引き起こす問題

薬剤耐性を持った細菌が増加し、それが薬剤耐性菌感染症として広まると、これまで効果のあった抗菌薬がうまく効かなくなることにより、感染症が重症化しやすくなったり、命に関わったりすることがあります。また治療がうまくいかなくなることで、感染症流行のリスクも高まります。このような感染症はどのような人でもかかる可能性がありますが、特に乳幼児や妊婦、高齢者、持病のある人など、免疫力の低下が生じている人に感染すると、重症化しやすく、命に関わりやすいため注意が必要です。

また近年は“サイレント・パンデミック”も危険視されています。サイレント・パンデミックとは、体の中に薬剤耐性菌が存在しているものの感染症を発症していない方が、ほかの人と接触することにより、知らないうちに薬剤耐性菌をほかの人へと感染させ、これにより薬剤耐性菌が広くまん延してしまう状態を指します。

対策

現在は世界中で薬剤耐性菌の増加を抑え、感染拡大を防ぐための対策が行われています。2015年には世界保健総会で“薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン”が採択され、加盟国は2年以内に国家行動計画を定めるよう求められました。

日本では、2016年4月5日に“薬剤耐性(AMR)アクションプラン2016-2020”が発表されました。アクションプランでは、薬剤耐性に関する知識の啓発のほか、新たな薬剤耐性菌の登場を注意深く監視するといった動向調査、感染症対策、抗菌薬の適正使用推進、薬剤耐性に関する研究や新薬の開発、他国との協力などが目標に掲げられています。この方針を引き継ぐように2023年4月7日に“薬剤耐性(AMR)アクションプラン2023-2027”が新たに発表され、国として薬剤耐性への継続的な取り組みをしています。

セルフケア

薬剤耐性の拡大を防ぐためには、各個人が感染症を予防し、病気にかかった際に医師や薬剤師の指導のとおりに治療薬を服用することが大切です。

正しい治療薬の服用

医療機関では不用意に抗菌薬を処方しないよう、さまざまな取り組みを行っています。医療機関にかかる際は、いつからどのような症状があるのか、ほかにかかっている病気はあるのかなど、医師が診断するにあたって必要な情報を詳しく説明し、適切な治療薬を処方してもらうようにしましょう。

また、処方された治療薬は決められた時間帯に決められた日数服用することが大切です。たとえば「1日2回、必ず5日間飲み切るようにしてください」といわれたら、症状が軽快しても服用を中止せず、指示どおりに飲み切るようにしましょう。加えて自宅に抗菌薬が余っていたからといって、自己判断でそれを服用することは控えてください。治療薬を飲み忘れてしまった場合など困ったことがあれば、まずはかかりつけの医師や薬剤師へ相談しましょう。

感染症予防

薬剤耐性菌感染症の予防として、普段から抗菌薬を使うような感染症にならないように心がけることが大切です。まずは毎日の手洗い、手指などのアルコール消毒、マスクの着用、うがいなどが挙げられます。また日頃から生活習慣を整え、食事や休養をしっかり取るなど、健康を意識した生活を送ることも大切です。

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