前の記事では、現在の医療においてHIV感染症はどのような病気であるととらえられているかについてお話ししました。今回は日々進歩しているHIVの治療やHIVの感染経路について、千葉大学医学部附属病院 感染症内科 助教の谷口俊文先生にご説明頂きました。
HIVの治療は、ほかに合併症を持っていなければ基本的に1日1回1錠の薬を飲むのみという非常に簡単なものになってきています。一方で治療費は月に約21〜22万円かかり、保険を適用しても約7〜8万円はかかります。この金額では治療を受けられない方も出てくるため、国は身体障害者手帳制度や自立支援医療制度(更生医療)により、HIVの治療費を負担しています。自立支援医療制度は、収入に応じた定額を支払うことでHIVの検査や治療が受けられるというものです。
HIV感染症の治療は日々進化しており、非常に簡単な治療ができるようになった一方で、課題も出てきました。
HIV感染症は一度感染すると完治することはないため、累計のHIV感染者は増加していきます。そのぶん治療費は増え、医療経済の圧迫を招きます。
HIV感染症は、これまでに述べたようにうまく付き合っていける病気になり、治療も簡単になりました。また治療費も国が補助してくれるという認識が徐々に広まってきました。しかし、これらの認識がHIVに感染してもあまり怖くないという意識の低下をもたらしています。
治療は進歩しているものの、HIVを予防するワクチンの完成までにはまだまだ時間がかかると見込まれているため、HIVに感染しないよう気をつけることが重要です。
HIVに感染すると、HIVは血液・精液・膣分泌液・母乳などに多く分泌されます。感染は、粘膜(腸管・膣・口腔内など)および血管に達するような皮膚の傷(注射針)からであり、傷のない皮膚からは感染しません。つまり、キス・抱擁・握手といった日々の接触や個人で使用する物・食品・水を共有することでは感染しません。
主な感染経路は以下の3つです。
HIVの感染予防の中で、コンドームによる予防は多くの方にとって気になるところでしょう。コンドームの使用によりどの程度HIV感染が予防できるか、最新の論文を紹介します。
コンドームの有効性の指標は100ペイシングイヤー(100患者年数)といい、「観察期間の年数×患者さん=100」で表します。つまり、50人の患者さんを2年間観察するのと、100人の患者さんを1年観察するのは同等となります。これに基づき、以下のような結果が出ています。
(アフリカのデータ; Cochrane Database Syst Rev. 2002;(1):CD003255.)
コンドーム不使用の場合、HIVに感染する人は5〜6人
コンドーム使用の場合、HIVに感染する人は1〜2人
(アメリカのデータ; J Acquir Immune Defic Syndr. 2015 Mar 1;68(3):337-44.)
被挿入側、コンドーム不使用の場合、HIVに感染する人は12〜16人
被挿入側、コンドーム使用の場合、HIVに感染する人は2〜4人
挿入側、コンドーム不使用の場合、HIVに感染する人は6〜7人
挿入側、コンドーム使用の場合、HIVに感染する人は1.5〜3人
男性同士のセックスの場合、挿入側より被挿入側のほうが感染率は高くなるといわれています。ここで注意が必要なのは、コンドームを使用すると感染率は下がりますが、100%防げるわけではないということです。
千葉大学医学部附属病院 感染制御部・感染症内科 准教授
関連の医療相談が12件あります
HIV感染の初期症状について
日本に住んでいる外国の方と性行為をすることがありそのときにオーラルセックスもしました。 一ヶ月くらいに39度代の発熱がありました。熱は病院の薬で2日ほどで治りました。そのあとからエイズではないのかと悩んだいます。 可能性は高いでしょうか?
保健所検査にて
HIV検査を受けて、要確認検査となりました。ゴムを付けない性交渉を1ヶ月半前にしてしまい、その2週間後に38.5の発熱を10日間程、持病の扁桃炎、切れ痔と重なりました。 この症状が気になり、検査を受けた次第です。初期症状としてみてよいものでしょうか?
脇のしこり
昨日ふと脇を触ると皮膚がポコっとなっているところがありました。脇の下というと広範囲なのですが私の場合は脇毛など毛が生える丸い範囲内です。小豆サイズでなにか中のものに引っ付いてる感じです。妊娠中ですが上の子がまだ左乳を飲んでいます。ですがこのしこりがあるのはもう全く飲んでいない右側です。リンパのがんや乳がんでしょうか?
左臀筋内脂肪腫における普段の生活、手術、入院期間等について。
骨盤内がんドックをうけたところ、癌の結果は問題なかったのですが、左臀筋内脂肪腫疑いと結果が出ました。「左腸骨の外側、臀筋内に脂肪と等信号の腫瘤あり。脂肪腫と思われます。サイズは大きいが脂肪以外の軟部組織など脂肪肉腫を積極的に疑う所見は指摘できず。」画像を見るとかなり大きいようで、半年前くらいから時々ある下腹部、子宮周辺の痛みの原因はこれだとわかり早く手術をしたいと思っていますが、なかなか病院の予約が取れず、まして緊急性もないようでこのご時世では手術するのも先になりそうです。サイズは10cm以上はありそうな感じです。①一般的に手術、入院期間、等はどのくらいか例などありますでしょうか。②また普通に生活で破れたり問題はないのでしょうか。③体力維持、ダイエット目的でストレッチ、筋トレ水泳等を行っていますが問題はありますでしょうか。
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