HIVに感染すると、エイズを引き起こしてしまうことはほとんどの方が知っているのではないでしょうか?今回はHIV感染症の経過と免疫再構築症候群について、引き続き尾上先生に伺います。
HIVがヒトのCD4陽性リンパ球に感染して増殖すると、徐々に免疫機能を低下させていきます。無治療のままでいると、HIVは感染機会後3〜6週間の潜伏期間を経てインフルエンザのような症状を呈します。これを感染初期(急性期)といいます。その後、数年〜10年間なにも症状が起きない期間があります。この期間を無症候期といいます。無症候期を経ると様々な日和見感染を引き起こし、エイズを発症します。この期間をエイズ期間といいます。
上述した経過は、何も治療を行わなかった場合にたどる経過です。実際には適切な治療を行うことでHIVの量を減らし、エイズの発症を遅らせることができます。現在、HIV感染症に使われている治療法がART(多剤併用療法)です。ARTによってHIV感染症の治療は劇的に進歩しました。しかし、ART中の患者さんの中には様々な症状を引き起こす免疫再構築症候群を引き起こす方もいます。
免疫再構築症候群とは、HIV感染者が治療法であるARTによって免疫機能が回復し、再構築するときに見られる炎症を主体としたさまざまな症状のことをいいます。ARTを開始してから16週程度であらわれます。
日和見感染症、エイズ関連悪性腫瘍、肝炎などを示しますが、非典型的であることのほうが多いです。日本では、抗HIV治療例全体の約13%にみられるといわれています。
HIVはCD4陽性リンパ球に感染し破壊していくので、体内のCD4陽性リンパ球は減少していきます。このCD4陽性リンパ球は免疫機能を司るので、減少すると免疫機能は低下します。そのためHIV陽性との判定が下されるとCD4陽性リンパ球数350を目安に、抗HIV治療であるARTを開始します。
ARTの開始によってHIVの増殖は停止し、次第に減少して行きます。すると、CD4陽性リンパ球は増加し、免疫機能も次第に回復してきます。この免疫機能が、体内に存在しているウイルスや細菌などの病原体を攻撃することで起きるのが免疫再構築症候群です。
日本で見られる頻度の高い免疫機能症候群には、帯状疱疹、非結核性抗酸菌症、サイトメガロウイルス感染症、ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)、結核症、カポジ肉腫などがあります。
免疫機能症候群への対処としてステロイドやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、抗菌薬、抗ウイルス薬の投与などがあります。 現時点では、免疫機能症候群を発症した場合には抗HIV治療を継続することが原則とされています。しかし、免疫機能症候群によって生命を脅かされる場合やステロイドが無効な場合などでは抗HIV治療を考慮します。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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HIV感染の初期症状について
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脇のしこり
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