ひけっかくせいこうさんきんしょう

非結核性抗酸菌症

同義語
NTM症
最終更新日:
2024年07月30日
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2024/07/30
更新しました
2017/04/25
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概要

非結核性抗酸菌症とは、“非結核性抗酸菌”と呼ばれる細菌に感染することによって、長引く咳や痰などの症状が現れる病気です。

抗酸菌*のうち、結核菌やらい菌**を除いたものを非結核性抗酸菌といいます。非結核性抗酸菌は土や水といった自然環境や水道、家畜など身近な生活環境に生息しており、土ぼこりや水しぶきに含まれる菌を吸い込んだり、傷から菌が入ったりすることによって感染すると考えられています。結核を引き起こす結核菌とは異なり、基本的にヒトからヒトへ感染することはほとんどありません。

非結核性抗酸菌症は、リンパ節、皮膚、骨、関節など体のさまざまな場所に病変を作ります。病変ができる場所としてもっとも多いのは肺で、肺への感染者数は年間8,000人程度とされています。

よくある症状として、長引く咳、痰、血痰、喀血(咳と一緒に血液が出る)、体重減少などが挙げられます。このような症状は結核でもみられますが、いずれも結核に比べると軽度です。病状の進行は非常に緩やかで、数年~十数年かけて進行していきます。

非結核性抗酸菌症になるのは、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)COPD)や間質性肺炎といった肺疾患を持っている人や中高年の痩せ型の女性に多いといわれています。

症状が軽い場合は自然によくなることもあるため、積極的な治療を行わずに様子を見ます。症状や肺の状態が悪化した場合は抗菌薬による薬物療法を行います。非結核性抗酸菌症の進行は緩やかであるものの、効果的な治療法が確立されていません。そのため、長期にわたる薬の服薬が必要になります。

*抗酸菌:顕微鏡で細菌を検査するときには染色法が行われる。染色法の手順には赤や青の色素で染色する、脱色するなどがある。抗酸菌は染色法において、酸を用いても脱色されない特徴(抗酸性)を持つ細菌のこと。酸に強いという意味ではなく、酸で脱色されにくいという意味で名付けられた。

**らい菌:抗酸菌の仲間で、ハンセン病の原因となる細菌。

原因

非結核性抗酸菌症は非結核性抗酸菌に感染することによって発症します。非結核性抗酸菌には190種類以上の種類があるといわれていますが、中でも人に感染しやすいのはマイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーと呼ばれる細菌で、この2つの細菌をまとめて“MAC菌”と呼びます。

日本では肺に生じる非結核性抗酸菌症の約90%はMAC菌の感染によるもので、これらの細菌を原因とする肺非結核性抗酸菌症を“肺MAC症”といいます。そのほかマイコバクテリウム・カンサシによる肺カンサシ症やマイコバクテリウム・アブセッサスによる肺アブセッサス症も非結核性抗酸菌症として知られています。

非結核性抗酸菌は、台所や浴槽、シャワーヘッドなどの水回り、外では池や湖、プール、土の中などに生息しています。主な感染部位は肺で、家庭では主に浴室での作業やガーデニングなど土を扱う作業で空気中に漂う菌を吸い込むことで感染すると考えられています。次いで多いのが皮膚への感染です。傷ついた皮膚から水や食物を介して感染し、皮膚のほかリンパ節、消化器、骨、関節などに病変を作ることもあります。

症状

肺に感染した場合、長引く咳、痰、血痰、喀血(咳と一緒に血液が出る)、体重減少、発熱、体のだるさなどがみられます。多くの場合、結核よりも症状は軽度です。無症状で経過することもまれではなく、検診の胸部レントゲン検査などで発覚することもあります。

皮膚に感染した場合は、菌の種類によって異なりますが、発疹やしこり、*などの皮膚症状が現れます。病変は局所にとどまることもあれば、全身の皮膚に広がることもあります。

*膿瘍:組織に膿が溜まった状態。

検査・診断

肺非結核性抗酸菌症の主な検査は、画像検査(胸部レントゲン検査・胸部CT検査)、喀痰検査です。非結核性抗酸菌症では画像検査で特徴的な影が写ります。喀痰検査では痰を採取して痰に含まれる菌を培養し、菌の存在や種類を確認します。

非結核性抗酸菌症の原因菌の多くは増殖スピードが非常に遅く、検査結果が確定するまでに数週間を要することがあります。また、症状がないこともあるため、喀痰を得ることが難しい場合もあります。こうした場合には、細長い気管支鏡(肺を診るカメラ)を口や鼻から喉に通して気管支の痰を採取する気管支鏡検査が行われます。

皮膚非結核性抗酸菌症では、病変からや組織などを採取して検査します。

治療

非結核性抗酸菌症の治療としては、薬物療法と外科的治療が行われます。

肺非結核性抗酸菌症の場合、軽症であれば自然軽快も期待できるほか、進行も遅いことから特別な治療を行わずに経過を観察する場合もあります。ただし現段階では自覚症状がない患者でも、10年ほどかけて病気が進行することがあるため、医師の指示にしたがって定期的に受診するようにしましょう。

薬物療法

治療では、主に複数の抗菌薬を服用することが一般的です。単剤投与だとその薬剤に対する耐性が発現し、抗菌薬による治療効果が期待できなくなってしまうため、複数の薬剤を用いて治療を行います。

肺非結核性抗酸菌症では、画像検査で肺の空洞*が見られた場合や病気の進行が明らかな場合、痰の検査で多くの細菌が検出された場合に薬物療法が行われます。

使用される抗菌薬は、原因となる細菌によって異なります。肺MAC症の場合はクラリスロマイシンと2種類の抗結核薬の飲み薬で治療を開始するのが一般的です。飲み薬だけでは効果が得られにくい場合は、点滴注射薬や吸入薬を組み合わせて治療を行います。また、薬物療法を行う場合は最低でも1年半以上は投薬を継続します。進行は緩やかですが薬の効果を得られにくい菌のため、菌を体内から完全に排除することは難しい場合が多くあります。治療期間は年単位となり、長期的な経過観察が必要となります。薬物療法で改善がみられない場合には手術を行うこともあります。

皮膚の非結核性抗酸菌症の場合も同様に、複数の抗菌薬による薬物療法を行います。

*肺の空洞:肺の一部が壊れて穴があいた状態。

外科的治療

病気の進行度合いや広がり、痰の中の菌の量などによっては肺の一部を切除するなど、ごくまれに手術治療が検討されることもあります。手術治療を検討する際は、患者の年齢や他の病気、全身状態、肺の機能などを踏まえて、患者の希望も考慮しながら、手術を行うかどうか決定します。

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