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喀血とは?吐血、血痰との違いや血を吐く原因を解説

喀血とは?吐血、血痰との違いや血を吐く原因を解説
石川 秀雄 先生

医療法人えいしん会 理事/病院長、岸和田リハビリテーション病院 喀血・肺循環センター長/呼吸リ...

石川 秀雄 先生

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肺や気管支から出血が起こる“喀血(かっけつ)”は、咳や呼吸困難の症状を伴うことが多いことから、生命の恐怖を感じる症状といえます。その喀血の治療がご専門の石川 秀雄(いしかわ ひでお)先生は、「いつまた喀血を起こすかわからない恐怖から患者さんを救い出すことが、喀血治療を専門に行う私たちの役割である」とおっしゃいます。

今回は、岸和田リハビリテーション病院 喀血・肺循環センターのセンター長である石川秀雄先生に、喀血についてお話を伺います。

喀血は、肺や気管支から出血が起こることで、口から血液を吐き出すことを指します。原因不明で起こる喀血もありますが、多くの場合は何らかの病気の症状として現れます。

一般的に喀血によって吐き出された血液は真っ赤であり、血液に泡が含まれていることが多いとされます。これは、血液が気道を通って吐き出されるためです。また、咳や呼吸困難などの呼吸器症状を伴うことが多いです。

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喀血と同じように、口から血を吐き出す症状に“吐血(とけつ)”と“血痰”があります。吐血は胃や食道、十二指腸などの消化管から起こる出血のことで、血痰は呼吸器から出た血が混じっている状態の痰を指します。

これらは詳しい検査を行うことで鑑別ができますが、症状だけでは判断に迷うケースが多々あります。症状の違いについて強いて挙げるとすれば、以下のようなことが挙げられます。

吐血した血液は、喀血と違い赤黒いことが多いです。これは、吐血の血液は胃液によって酸化されることで、黒く変色するためです。

例外的に、食道からの吐血の場合は血液が胃を通過しないため、喀血と同じように赤い血液が吐き出されます。

血痰とはその名前のとおり、痰の中に呼吸器からの出血が混じっているものを指します。

血痰は喀血と同様に、血の色は鮮やかな赤である傾向があります。一般的に、痰に血液が混じっている程度の出血量であれば“血痰”、吐き出されたものが血液そのものといえるほどの出血量であれば“喀血”と呼ばれます。

喀血を引き起こす原因には、以下のような呼吸器疾患があります(上から発症頻度が多い順*)。

そのほか、肺動静脈奇形の破裂や、呼吸器以外の病気として、大動脈が裂ける“大動脈解離”の急性期や手術後に喀血が起こることもあります。

*喀血・肺循環センターにおける喀血患者の基礎疾患別分類(2006年5月15日〜2013年10月31日の喀血患者連続833例)

多くの喀血は何らかの原因となる病気に伴って起こります。しかし、検査を行っても喀血に至るような病気が見つからず、原因の分からない喀血も存在します。これを“特発性喀血症”と呼びます。なお、特発性喀血症は特に喫煙者に多いとされています。

また、喀血を引き起こし得る病気の1つに“肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)”があります。肺血栓塞栓症は“エコノミークラス症候群”とも呼ばれ、突然の胸の痛みや呼吸困難を生じる病気です。長時間同じ体勢でいることや、強いストレスなどによって発症することが分かっています。

近年では大きな地震が起こった後の現場や避難所での発症が多くみられ、命に関わるケースもあることから注目されています。

喀血が起こった場合、たとえ少量であっても何かしらの病気が原因で喀血を引き起こしている可能性があるため、必ず呼吸器内科を受診しましょう。

まれに肺がん結核など命に関わる病気が隠れていることもあるため、なるべく早めに受診するようにしましょう。

先方提供
石川 秀雄先生ご提供

喀血がティッシュペーパーで処理できる程度であれば少量であると考えられます。ただし、少量の喀血であっても、原因の特定のために呼吸器内科を受診しましょう。

おちょこ1杯ほどの喀血が起こった場合(中等量)は、体を可能な限り安静にして、速やかに受診しましょう。

コップ1杯以上など大量の喀血が起こると、呼吸不全を引き起こし、人工呼吸を必要とする場合もあります。また、血液によって窒息が起こり、命を落とす危険性もあります。

迅速な治療が必要になるため、救急車を呼ぶなどすぐに受診するようにしましょう。

当院では喀血の患者さんに対して、造影CT検査(以下CTアンギオ)を行います。CTアンギオで調べることは、喀血の原因疾患と喀血を引き起こしている血管の2つです。

CTアンギオでこれらを調べたあとに、喀血を引き起こしている血管を詰める気管支動脈塞栓術(BAE)などの治療を行います(※BAEについては記事2『喀血の根本治療“気管支動脈塞栓術(BAE)”――喀血患者さんを救うBAEの可能性』で解説しています)。

下の写真をご覧いただくと分かるように、CTアンギオでは、血管を3Dで映し出すことができます。そのため、治療すべき血管が、どこに、何本、どのような角度で存在しているかを、精密に解析することが可能です。

先方提供

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喀血・肺循環センターにおけるCTアンギオの画像。あらゆる角度から治療が必要な血管(写真内の丸印部分)などを立体的に捉えることができる

喀血が少量の場合には、止血剤による薬物療法が検討されることが一般的です。

喀血が中等量の場合には、体を安静にしたうえで止血剤の飲み薬による薬物療法を数日間継続します。患者さんの状態によっては、原因の精査や治療のために入院が必要となる可能性があります。なお中等量の喀血は、気管支動脈塞栓術(BAE)の相対適応*となります。

*相対適応:患者さんの状態や病気の重症度に応じて治療の必要性が変わること

喀血が大量の場合には、速やかに点滴で止血剤を投与することが一般的です。呼吸不全をともなう場合は、その治療も必要になります。またその一方で、気管支動脈塞栓術(BAE)は必ず実施すべき(絶対適応)とされています。

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喀血に対する血管内治療(気管支動脈塞栓術(BAE))を行う石川 秀雄先生

喀血の多くは何らかの病気に伴って起こります。再発を予防するためにも、まずは原因疾患を明らかにしたうえで、それに対する治療を受けるようにしましょう。また、再喀血の防止に大きな効果が期待できる気管支動脈塞栓術(BAE)を受けることが重要です。

喀血が生じたときには、なるべく我慢せずに、血液を吐き出してください。なぜなら、喀血を我慢すると血液が気道で固まってしまい、呼吸不全に陥ってしまう恐れがあるためです。

しかし、バスや電車など人が多く集まっている場所で喀血すると、「周りの人をびっくりさせてしまうのではないか……」と恐れ、ぐっと我慢してしまう方は少なくありません。そのため、喀血が起こったときに我慢をしないで済むよう、常に袋を持参するなどの工夫をするとよいでしょう。

また、喀血が起きたときに、血液を飲み込んではいけないと考えている方も多くいらっしゃいますが、実際には飲み込んでしまっても問題ありません。飲み込むのは気管ではなく食道だからです。

石川 秀雄先生
石川 秀雄先生

喀血では、真っ赤な血液を吐き出してしまうことに加えて、呼吸困難を伴うこともあるため、生命の恐怖を感じる患者さんは多いでしょう。

そして、一度喀血を起こすと喀血に対して神経質になり、喀血の恐怖にいつも怯えてしまう“喀血神経症”に悩む患者さんはとても多くいらっしゃいます。

たとえば、喀血になると入浴を禁じられることから、「お風呂に入ったら喀血が起きる」と強く思いこんでしまい、長年にわたってお風呂に入っていない方もいらっしゃいます。しかし実際には、血痰や喀血がみられない限り、入浴しても問題ありません。また、いつ喀血になるか分からない恐怖から、バスや電車に乗れない患者さんもいらっしゃいます。

こうした喀血神経症に悩む患者さんは多くいらっしゃるにもかかわらず、止血剤の投与のような対症療法しか受けられておらず、喀血を何度も繰り返している患者さんは少なくありません。そのような患者さん達を救うのが、喀血治療を専門にしている私たちの役割だと考えています。

喀血の主な治療方法には、“気管支動脈塞栓術(BAE)”という治療法があります。つづく記事2『喀血の根本治療“気管支動脈塞栓術(BAE)”――喀血患者さんを救うBAEの可能性』では、この気管支動脈塞栓術(BAE)について重点的にお話しします。

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