概要
窒息とは、異物が喉に詰まることなどによって呼吸が阻害され、血液中の酸素濃度が低下して二酸化炭素濃度が上昇し、脳などの臓器に機能障害が起こった状態を指します。
窒息の原因として、大人の場合は食べ物を喉に詰まらせるケースが多く、特に飲み込む力が低下した高齢者に多くみられます。また、飲み込む力が未発達の乳児や幼児がピーナッツや飴、硬貨、おもちゃなどを飲み込んでしまうことで窒息を起こすことがあります。
窒息を起こすと、まず咳き込む症状が現れ、喉が完全にふさがると声を出すことができなくなります。また、呼吸が徐々に弱くなり、顔が真っ青になったり、けいれんを起こしたり、意識を失ったりする場合もあります。
窒息を起こした場合、気道に詰まった異物を取り除くため直ちに応急手当が必要です。
原因
窒息の多くは気道に異物を詰まらせることで生じます。原因となる異物は、主に食品と食品以外に分けられます。
食品
食品自体の硬さや弾力性、噛み切りにくさ、大きさ、形状などが窒息の発生に関連するといわれています。
大人では餅や大きな肉の塊、こんにゃく入りゼリーなどが原因となる場合があります。特に高齢者では、加齢に伴って噛む力の低下や歯を失うことで、食品が十分に噛み砕かれないまま喉へ送り込まれ、窒息を引き起こす場合があります。
子どもの場合は、丸い飴やナッツ、ブドウ、ミニトマトなどが詰まることで窒息を生じることがあります。
食品以外
食品以外による窒息は、特に0〜3歳の子どもに多くみられます。具体的な例として、おもちゃや硬貨、ボタンなどが挙げられます。子どもは生後5~6か月頃から、自然と手にしたものを何でも口に持っていく行動を取るため十分な注意が必要です。
症状
窒息を起こすと、最初に咳き込む症状が現れます。
咳き込みが激しく声を出せなかったり、喉の辺りをかきむしるような動作をしたりする場合もあります。また、呼吸が弱くなり、甲高い声を出すこともあります。
ほかにも、顔が青くなったり、けいれんを起こしたり意識を失ったりすることもあります。
検査・診断
窒息を起こした患者が医療機関に搬送された場合、状態を素早く把握して速やかに蘇生処置を行う必要があります。状態を把握するために問診や診察のほか、さまざまな検査によって気道閉塞や体内の酸素濃度の確認などが行われます。
治療
窒息を起こした場合、以下のような応急手当を行い、直ちに気道内の異物を取り除く必要があります。意識がなく脈が触れない場合には心肺蘇生法が行われます。
なお、掃除機を使ってのどに詰まったものを吸い出す方法は、気管や肺を傷つける恐れがあるほか、細菌感染のリスクがあるため控えましょう。
腹部圧迫法(ハイムリッヒ法)
腹部圧迫法(ハイムリッヒ法)は、腹部を急激に圧迫して胸部や気管内の圧を上げることで異物を吐き出させる方法です。内臓損傷の恐れがあるため、妊婦や乳児には行ってはいけません。
まず、窒息を起こした人の背後にまわり、片手で拳を握ってその人のみぞおちに置きます。次に、その人を抱き抱えるようにし、反対の手で手首を握ります。手首を握っている手でそのまま勢いよく、握った拳をみぞおちに押し付け腹部を圧迫し、異物を吐き出させます。
背部叩打法
窒息した人の肩甲骨の間に手のひらの付け根を当て、強く何度も叩く方法です。
呼吸や意識のない乳児に対しては、気道を確保するために仰向けの状態にして顎を上げます。人工呼吸を2回行い、片手で胸と下顎を支えて頭を胴体より下になるようにして、背中を数回叩きます。次に指2本で胸を数回圧迫し、口の中に異物が見えないか確認します。異物が確認できた場合は指で取り出します。異物が取り出され、呼吸が再開するまで以上の動作を繰り返します。
予防
窒息を予防するためには、以下の対策が重要です。
食べ方に注意する
食べ物は食べやすい大きさにしてよく噛み、姿勢を正して食べるよう意識しましょう。窒息しやすい食品の具体的な対策として以下が挙げられます。
- ミニトマトやブドウなど球状の食品は、そのまま食べずにカットしてから食べる
- 5歳以下の子どもは、豆のように硬くて噛み砕く必要のある食品は避ける
- 餅は、1cmほどの大きさに切ったうえで水分と一緒に食べる
子どもの口に入るものを置かない
子どもの口の大きさは約4cmで、これはトイレットペーパーの芯の直径とほぼ同じ大きさといわれています。そのため子どもの手に届く範囲には、トイレットペーパーの芯に入るものを置かないよう心がけることが重要です。
応急処置を把握する
また、窒息に対する応急手当を把握しておくことも役立ちます。万が一窒息が起こったときのため、背部殴打法や腹部圧迫法(ハイムリッヒ法)の手順を確認しておきましょう。
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