
「性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。
さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「ケジラミ症」についてのお話です。
ケジラミ症とは主に性行為で感染する感染症で、吸血性の昆虫であるケジラミ(Phthirius pubis)が陰毛などに寄生することにより発症します。ケジラミは主に陰毛に寄生しますが、他にも肛門周囲、腋毛、胸毛、太ももの短毛、鬚、睫毛、眉毛や頭髪にも寄生します。
ケジラミは幼虫から成虫まで、ヒトの血液を吸って栄養にしています。また、ケジラミはヒトにだけ寄生し、ヒトからだけ吸血します。血液を1日に数回吸って成長し、脱皮を繰り返して成虫となります。成虫となったメスは交尾した後に産卵します。その際、卵を毛の根元の近くに産み付け、毛の基部近いほうにセメントのような物質で固定します。
卵は7日前後で孵化し、5~6日で脱皮し、その後8~11日で成虫となり、そのまた1、2日後には産卵し始めます。成虫は3~4週間生存し、その間に30~300個の卵を産むと言われています。ケジラミの成虫の体長は、メスで1.0~1.5mm、オスで0.8~1.0mmであり、体の色は褐色を帯びた白色であり、楕円形である頭ジラミに対して円形に近い形です。頭部は小さいが触覚を2本持ち、身体には3対の脚を持ちます。
一対目の脚の先端には細い爪があり、残りの脚の先端にあるカニのような大きな爪で陰毛をつかみます。この大きな爪を持つことから蟹ジラミ(crab lice)とも言われています。
ケジラミの症状の特徴として、寄生部位の激しいかゆみがある一方で皮疹がないということが挙げられますが、あまりかゆみを感じないという人もいます。それ以上に特徴的なのは、下着に点状の茶色い粉が付着するという点です。この茶色い粉の正体は、ケジラミが人から吸って栄養とした血液の糞便です。
ケジラミ症は主として性行為などの直接接触によって感染しますが、寝具や浴場の脱衣かごなどにより間接的に感染することもあります。
ケジラミの虫体が毛の根元に付着しているのを見つけることができたら、顕微鏡で低倍率にして虫体を確認します。虫体は吸血していると褐色となり比較的見つけやすいですが、吸血していないとほぼ肌色で見つけるのが困難になります。もし虫体が見つからない場合は虫卵を探します。虫卵は白色なので容易に見つけやすいからです。これを顕微鏡で虫卵かどうかを判断し、さらに虫卵であった場合は生卵か抜け殻かを調べます。
ケジラミの治療薬は諸外国で多くありますが、国内で許可されているのは市販薬である「0.4%フェノトリンパウダー」と「0.4%フェノトリンシャンプー」のみです。フェノトリンパウダーは寄生部位に適量を散布して1、2時間後に洗い流します。フェノトリンシャンプーを使用する場合は、3~5mlを寄生部位に使い5分後に洗い流します。しかし、これらの薬剤は卵には効果が弱いので、1週間前後の卵の孵化期間をみこんで3~4日毎に3~4回の薬剤使用を繰返し行います。そして、白い下着を約2ヶ月間つけ、ケジラミの生活反応があるかどうかで完治したかどうかを確認します。完治してない場合は再治療が必要です。
水銀中毒や皮膚炎を引き起こすリスクがある「水銀軟膏」は使用しないようにしましょう。また、ケジラミの寄生部位の剃毛はかなり難しく、不完全な場合は他の体毛部にケジラミが移る恐れがあるので、毛深い人は特に剃らない方が良いでしょう。
ケジラミは相互感染を繰り返すことや家族内で感染することもあるので、セックスパートナーや家族全員の治療も行う必要があります。衣服は熱処理またはドライクリーニングを行い、感染を防ぎましょう。
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プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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