
毛じらみ症になると、陰部に激しいかゆみを感じるほかに茶色い粉が下着につくようになります。今回は実際にあった毛じらみ症の感染例について見ていきたいと思います。
年齢:20代後半
性別:男性
主訴:陰茎部根元がかゆい
患者さんの陰部を観察したところ、陰毛から陰毛へと移動するケジラミを3匹確認することができました。この患者さんの場合ケジラミだけでなく、陰毛の根元部分に産みつけられた卵も多数確認することができました。 毛じらみ症は毛じらみ症感染者とのスキンシップでうつります。ほかの性感染症と異なり、コンドームを使用していても予防することはできません。
毛じらみ症の治療とは「ケジラミを駆除する」ことと言い換えられます。現在日本では市販薬の0.4%フェノトリンパウダーと0.4%フェノトリンシャンプーが毛じらみ症の治療薬として認可されています。
ケジラミはヒトの血液を吸って生活しているため、ケジラミが寄生している患者さんの下着に茶色い粉が付くという特徴があります。ケジラミの生活動向を確認するため、治療期間中は患者さんには白い下着を着用してもらう必要があります。この期間中は性行為等は控えていただく必要があります。
年齢:30代
性別:男性
ケジラミかもしれないということで、この患者さんは自身で外陰部の毛を剃ってしまいました。 毛じらみ症の治療方法のひとつとして、確かに陰毛を剃るという選択肢はあります。しかし、すみかを失ったケジラミは新しい居場所を求めて緊急避難を開始するため、結果として外陰部から・肛門周辺・大腿部・へそ周辺・腋下部などへと寄生部位を拡大させてしまうおそれがあります。この男性の状態を調べたところ肛門周辺に幼虫1匹、大腿部に成虫1匹を確認することができました。
このように、不完全な剃毛はかえってケジラミの駆除を難しいものにしてしまいます。しかし個人で完全に剃毛をすることも難しいので、毛じらみ症の治療方法は「剃毛をせず陰毛に住み着いたケジラミを医薬品で一斉に駆除」のが最良と言えるでしょう。毛じらみ症の治療には約2ヵ月かかりますが、治らないものではありません。かゆみや違和感はそのまま放置せず、早めに専門医による検査・治療を受けるようにしましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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