毛じらみ症とは、シラミの仲間のケジラミが寄生することで強い掻痒感(かゆみ)を覚える性感染症です。この毛じらみ症の治療方法について、引き続き性感染症治療に長年携わってこられた尾上泰彦先生にお話を伺いました。
シラミの仲間であるケジラミが寄生することで、皮疹を伴わない激しいかゆみを引き起こします。このケジラミはヒトにのみ寄生し、ヒトの血液を栄養源にして成長します。最終的にこの血液はケジラミの糞として排出されるため、ケジラミが寄生した患者さんの下着には茶色い粉が点々と付着します。
日本で毛じらみ症の治療薬として認可されているのは、0.4%フェノトリンパウダーと0.4%フェノトリンシャンプーの2剤です。これらの薬はケジラミに対して効果はあるものの、ケジラミの卵に対しての効果は弱いです。ケジラミの卵は1週間ほどで孵化するので、この期間を見込んで3~4日ごと3~4回薬を使用してケジラミの駆除を行います。
0.4%フェノトリンパウダー
適量をケジラミの寄生している部位に散布し、1~2時間後に洗い落とします。
0.4%フェノトリンシャンプー
3~5mlを陰毛に使用し、5分後に洗い落とします。 また、フェノトリン耐性ケジラミの出現も危惧されていますが、現在のところ確認されていないようです。 水銀軟膏による治療が行われていたこともありましたが、水銀には毒性があるため水銀中毒や皮膚炎をおこす可能性あるため、現在は使用されていません。
陰部の毛を剃るという選択肢もあります。一番安価かつ確実な方法と言われていますが、ケジラミが陰部以外にも寄生してる場合にはすべての毛髪を剃ることは難しいため、あまりおすすめはしていません。 寄生しているからと言って陰部の毛を剃ってしまうと不完全な剃毛になり、ケジラミが肛門周辺・大腿部・へそ周辺・胸部・脇部などほかの部位へ移動、結果として感染を広げてしまったケースもありました。 (詳しくはこちらをご参照ください「実際にあった毛じらみ症の感染例」)
せっかくケジラミの駆除が完了しても、パートナーにケジラミが寄生したままでは相互感染を繰り返してしまう可能性があります。もし毛じらみ症と診断されたら、パートナーの方も一緒に検査・治療を行う必要があります。
ヒトから離れた後にもケジラミは生存している可能性があります。アイロンをかけるなどの熱処理を行う、もしくはドライクリーニングを行うなど、衣類にも処理をするようにしましょう。
ケジラミの駆除には約2ヵ月かかります。この期間中患者さんには白い下着を着けてもらい、ケジラミが落とす血糞の有無を観察してもらいます。このカスが出ないようになれば毛じらみ症は治癒したと考えてもよいでしょう。 ケジラミの卵は陰毛基部にセメント様の物質で固定されているため、長い間毛に残ります。もしケジラミの卵を確認したら、その卵を採取・観察しその卵の状態を判断します。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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