
性感染症のひとつである毛じらみ症は、吸血性昆虫のケジラミが寄生することで発症します。このケジラミは陰毛部位に寄生することが多く、激しいかゆみと下着に茶色い粉が付くのが特徴です。今回はこの毛じらみ症の原因であるケジラミについて、性感染症治療に長年携わってこられた尾上泰彦先生に解説をしていただきました。
体長はメスの成虫で1.0~1.2mm、オスの成虫では0.8~1.0mmで、やや褐色を帯びた白色をしています。アタマジラミと比べると円形に近く、3対の脚と触角を持つ小さな頭部を持ちます。
ケジラミは「カニジラミ」と呼ばれることもあります。これはケジラミの第2・第3脚にカニのような大きなツメがあることに由来します。 ケジラミは1日に数回吸血し、吸血した血液を栄養源として成長と脱皮を繰り返し成虫となります。
ケジラミの生活史は3~4週間と言われており、4~5日で成虫となったケジラミは、この3~4週間のあいだに30~40個の卵を産みます。この卵は灰色がかった白色で光沢があり、毛の根本に近い部分がセメント様の物質で固定され毛に斜めにつきます。
ケジラミは陰股部に寄生するのが大半ですが、肛門周辺・腋毛・胸毛・大腿部のほかに、ひげや眉毛、まつ毛に寄生することもあります。まつ毛に寄生した場合、目やにのように見えることもあります。 毛質の関係からこれまでケジラミは頭髪には寄生しないといわれてきましたが、幼少児や女性、ごくまれですが男性も頭髪にケジラミが寄生することが報告されています。
毛じらみ症の治療には、3~4日ごとに3~4回の薬剤使用によるケジラミの駆除と、ケジラミの寄生部位の毛を剃るという2種類があります。ケジラミは住処がなくなると他の部位へと移動する可能性があるため、ケジラミが好む部位にあえて住ませておいて薬剤による一斉駆除を推奨しています。
現在日本でケジラミの治療薬として認可されているのは 0.4%フェノトリンパウダーと0.4%フェノトリンシャンプーです。これらの薬剤は卵には効果が弱いため、卵の孵化の期間を見込んだ治療が必要になります。 ケジラミはヒトの血液を吸って生活しているため茶色い血便を排出します。そのため毛じらみ症の治療期間中は白い下着を着用していただき、ケジラミの動向を確認する必要があります。
ヒトに寄生するシラミは「ケジラミ」のほかに、ケジラミと同じシラミ目に属する「アタマジラミ」と「コロモジラミ」があげられます。この3種類のうち、性感染症の原因となるのは「ケジラミ」のみです。 第二次世界大戦以降ほかのシラミ類とともにケジラミの数は激減したものの、1970年中頃以降よりほかの性感染症と同様に増加の一途をたどりました。ケジラミが増加した原因としては、毛じらみが国内で生存し続けていたこと、国際交流が活発化するにつれ成人男性に寄生したケジラミが国内に流入したことが一因と考えられています。その当時はシラミに対する有効な薬剤がなかったことも、アタマジラミとともに毛じらみ症感染者数増加の原因となりました。
毛じらみ症感染者はその後減少しましたが、1990年以降より再び増加傾向にあります。
毛じらみ症の感染はコンドームで防ぐことはできません。ケジラミ感染者とのスキンシップや性行為等のほか、寝具や浴場の脱衣カゴなどからも簡単に感染してしまいます。サラリーマンがうつる性感染症の第6位にランクインするほど悩まれる方の多い性感染症ですが、適切な治療を行えば治らないものではありません。かゆみなどの違和感があらわれたら、すみやかに専門医による検査治療を受けるようにしましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
関連の医療相談が10件あります
前立腺肥大症について治療(投薬・手術・慣れる等)を考えのアドバイスを下さい。
半年前に肺がん(9年前手術)の経過観察でPSA値が高いと指摘され、本日造影MRIを撮影しました。がんに関しては問題ありませんでしたが、画像で前立腺肥大(約5cm)を指摘されました。がん専門の大病院のため、詳細は泌尿器科へ紹介状を出すとの説明を受けました。 「前立腺肥大症」という言葉は聞いたことはありましたが、深く考えたことはなく、少し調べると「前立腺が卵ほどに大きくなり、尿の勢いが弱くなる・頻尿になる」とありました。今日の医師の話では、「尿の出が悪くなれば治療を検討」「頻尿はあまり関係ない」「投薬は一時的な対処で、根治には腹腔鏡手術」「大きくなるかは人それぞれ」とのことでした。 私は還暦を過ぎ、実際に尿の勢いが弱く、夜間も1〜2時間おきにトイレに行きます。ただし、加齢により排尿機能や体力が衰えるのは自然なことと考え、ある程度は受け入れてきました。老眼なら眼鏡を新調すれば済みますが、前立腺の腹腔鏡手術は身体的にも経済的にも負担が大きく、できれば避けたいと感じています。次回は来年2月に再診予定(画像検査なし)です。 AIに相談したところ、以下の回答が得られました。 ・軽症なら経過観察+薬物療法 ・生活に強い支障があれば手術 ・手術後は改善が見込めるが、加齢に伴い再肥大の可能性もある ・治療方針は「生活の質をどの程度改善したいか」で決めるのが現実的 私としては、命に直結しない限り、治療負担や予後の不確実さを考えると手術は避けたい気持ちです。今後の生活において、どのような考え方や対応が望ましいか、アドバイスをいただければ幸いです。
心気症について
心気症について悩んでます。 今日抗うつ薬を貰いました。 2度房室ブロックモビッツという病気を調べてしまいそれになってしまったらどうしようと勝手に思い込んでしまい不安と恐怖で日常生活に支障が出てしまっています。 まだなってもいないものに怯えてますこれは心気症でしょうか? 直すにはやはり薬を飲んでゆっくり寝てるしかないのでしょうか?
肝門部胆管がんステージ4の寛解に向けた今後の治療方法について
2024年4月の血液検査でガンマーGTが350を超えていて、ALPも250くらい、主治医からは肝臓でしょう、飲みすぎ等の指摘受けましたが、念のために5月上旬に再度検査受けて、連絡なかったので安心していたら腹部膨張感を感じたのが5月中旬、尿がすこしずつ黄色になったのが5月25日くらい、5月31日黄疸症状がありCT検査より胆管がんの疑いありと診断され、大分別府(自宅のある)の大学病院で再検査、6月3日より入院検査、胆管がんステージ4の確定診断、それからステント ERCPの治療、膵炎や薬物アレルギー、胆管炎をおこしながらも、6月17日より イミフィンジ(免疫阻害チェックポイント剤)とランダ、ジェムザールの抗がん剤の治療開始、当初は副作用、脱毛、口内炎、便秘等あったがクールがすすむにつれて改善、白血球(好中球)減少はあるものの、6クールまで進捗している、8月22日の造影CTで当初3センチほどの腫瘍は2.5センチ、10月18日の造影CTでは更に腫瘍が小さくなり2センチ、リンパ転移も縮小、播種なしの状態、身体もすごく調子が良い状態です、8クールまでは今のままの治療で、そこからはイミフィンジだけで経過観察していくとの事です、根治、寛解に向けて他の治療方法はないでしょうか、例えば重粒子や陽子線等 部分寛解まできているので完全寛解を目指していきたいと思います
治療半年後で痛みが続く場合
昨年3月にMRI検査の後、腰椎骨折と診断され治療開始しから半年以上経過していますがまだ痛みが続いています。昨年4月からコルセットによる固定で、経過は良好との診断のようですが痛みが取れず、日常生活に支障がある状態が半年以上続いています。これは正常なのか、セカンドオピニオンをするべきかお伺いしたいです。買い物は行けますが、長時間の歩行はできない状態です。太ももから腰にかけての痛みが続いています。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「シラミ症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。