
性感染症はウイルスや細菌が体内に侵入することが原因となることが多いです。しかしなかには「ケジラミ」というシラミの仲間が寄生することで、かゆみなどの症状を引き起こすこともあります。
今回はこのケジラミの寄生が原因の「毛じらみ症」の症状や検査方法についてのお話です。性感染症治療に長年携わってこられた尾上泰彦先生にお話を伺いました。
ケジラミはヒトにのみ寄生して、ヒトからのみ吸血します。陰毛のある陰股部のほか、肛門周辺・腋毛・胸毛・大腿部などにも寄生し、湿疹を伴わない激しいかゆみを感じることがケジラミ症の特徴です。
ケジラミの体は褐色を帯びた白色をしていますが、栄養源として吸い取ったヒトの血液が消化管に取り込まれるとケジラミの体は赤茶色になります。この吸血したヒトの血液は最終的に茶色い便となって消化管から排出されるために、ケジラミが寄生している患者さんの下着にはケジラミの血糞である茶色い粉末が付くようになります。
長期にわたりケジラミが寄生していたと考えられるケースでは、ケジラミの刺咬による「ヘモジデリン沈着」とみられる0.1~1cmの不形成の青灰色斑を認めることもあります。
成人した男女が陰部のかゆみを訴える場合は、まずケジラミ症を疑います。拡大鏡を使用しながら、ケジラミが寄生していると考えられる陰毛の根本部分を調べます。褐色を帯びた白色の物体を見つけたら、ピンセットで採取しスライドグラスにのせ顕微鏡でケジラミなのかを確認します。
すでにお話ししましたが、ケジラミが寄生するとヒトの血を吸って栄養とするため茶色い血糞を排出します。この茶色い血糞もケジラミが寄生しているかを判断するひとつの目安になります。
かゆみを訴えているにも関わらずケジラミを確認することができない場合には、ケジラミの卵が産みつけられているかを確認します。ケジラミは血を吸っていない状態だと発見するのは難しいのですが、ケジラミの卵は白色をしているので発見は容易です。ケジラミの卵を発見したら顕微鏡で観察して、本当にケジラミの卵なのか、もし卵であれば孵化前なのか孵化後のものかを確認します。
毛じらみ症の場合、潜伏期間は生じないものと考えます。
一般的に毛じらみ症の患者さんは、陰部を掻きむしってしまうほどの激しいかゆみを訴えることが多いようです。ケジラミは吸血をするときに唾液成分を注入するのですが、この唾液に対して免疫反応が起きるため、かゆみが生じるものと考えられています。ケジラミの唾液に対してどのように反応するかには個人差があるため、なかにはかゆみをそれほど感じないという患者さんもいらっしゃいます。
ほかにも副腎皮質ホルモン外用剤を使用している方や悪性リンパ腫の方がケジラミに寄生されていたにもかかわらず、かゆみを訴えなかったという例も報告されています。
かゆいからといって掻きむしってしまうと、「掻破性皮膚炎」という皮膚炎を起こす可能性があります。かゆみなどの違和感があるときには、早い段階で専門医による検査を受けるようにしましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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