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ニューモシスチス肺炎

別名:ニューモシスチスカリニ肺炎
肺

目次

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概要

ニューモシスチス肺炎とは、真菌の一種類である「ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)」により引き起こされる感染症のひとつを指します。以前は、ニューモシスチス・カリニ (Pneumocystis carinii) による肺炎とされ、「カリニ肺炎」と呼ばれました。

その後、ラットから見つかったニューモシスチス・カリニとヒトで肺炎をおこすニューモシスチスは異なる種類であることが判明したため、ニューモシスチス・イロベチイに命名し直され、これによる肺炎はニューモシスチス肺炎に名称変更されました。免疫力が正常な健康な方に対しては発症することはありませんが、免疫力が低下した状態ではよくみられる日和見感染の一種になります。

ニューモシスチス肺炎をきっかけとしてエイズと診断される方も多いです。その他、ステロイドや免疫抑制剤を使用している方、血液腫瘍に罹患している方なども免疫状態が普段よりも低下しているため、ニューモシスチス肺炎を発症する可能性があります。ニューモシスチス肺炎は、適切な治療が行われなければ死に至ることもある病気です。

原因

ニューモシスチス肺炎は、真菌の一種類である「ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)」により引き起こされる感染症です。ニューモシスチス・イロベチイは、以前は原虫に分類されていましたが、遺伝子解析の結果、真菌の一種であると判明しました。ニューモシスチス・イロベチイは、咳や痰を介して感染が拡大する「飛沫感染」がひとつの感染様式として想定されています。

免疫力が正常な状態であれば病原性を発揮することはありませんが、免疫抑制状態になると重篤な肺炎症状を引き起こすことがあります。医療施設内での免疫不全患者におけるニューモシスチス肺炎のアウトブレイク事例の発生が報告されています。

エイズ発症時や、関節リウマチその他の自己免疫疾患などに対する各種生物学的製剤やステロイド、免疫抑制剤を長期間内服している状況、血液腫瘍を含む悪性腫瘍の罹患時、造血幹細胞・固形臓器移植患者などは免疫力が低下しています。したがって、こうした背景があることが、ニューモシスチス肺炎発症のリスクになります。

特にエイズの場合は、そもそもHIVに感染していることが明らかになっておらず、ニューモシスチス肺炎の発症をきっかけとしてはじめてエイズであることを指摘される場合もあります(いきなりエイズとも呼びます)。ニューモシスチス肺炎の初発症状は長引く咳であることが多く、特徴的な症状があまりないことも多いです。したがって、HIV感染を指摘されていない患者さんの場合は、ニューモシスチス肺炎であることを積極的に疑わなければ診断が遅れることもありえます。
 

症状

ニューモシスチス・イロベチイは肺に病変を生じ、ニューモシスチス肺炎を引き起こすことから、呼吸器関連の症状(発熱、乾性咳嗽、呼吸困難が3主徴)が主体になります。具体的には、1〜2か月ほど持続する痰が絡まない咳(乾性咳嗽)を認めることがあります。通常の細菌性肺炎ではこれほど長くなる前に診断がつくことも多いです。

病状が進行すると呼吸障害は重症化してきて、呼吸困難を伴うほどになります。その他、感染症に伴う全身症状として発熱や体重減少をが認められることもあります。また胸痛や血痰をみられることもあります。

ニューモシスチス肺炎はエイズを代表的とした免疫不全状態に発症する感染症であり、日和見感染症の一種です。そのため、ニューモシスチス肺炎以外の日和見感染症を同時に併発していることもあります。患者さん本人が気づきやすいものとしては、口腔カンジダ症が挙げられます。口腔カンジダ症では、白色のミルクかすのようなものが口の中に生じる状態であり、食べ物を食べるときにしみたり、痛みを生じたりすることがあります。
 

検査・診断

ニューモシスチス肺炎は、血液検査や画像検査、気管支内視鏡をもとに診断されます。血液検査では、真菌に感染していることを確認するために「β-Dグルカン」を測定します。ニューモシスチス肺炎では、この値が高くなることが知られています。

また血液検査では、呼吸状態の評価を行うために動脈血酸素濃度を測定することがあります。さらに、LDHやCRPといった項目も重症度や他の疾患との鑑別を行うためにも有用です。
ニューモシスチス肺炎では、胸部単純レントゲン写真(すりガラス状陰影が特徴)や胸部CTなどの画像検査において特徴的な像を確認することも重要です。
これらの検査でニューモシスチス肺炎が疑われる場合には、病原体を証明するために気管支内視鏡検査が行われます。本検査を通して病原体であるニューモシスチス・イロベチイが体内に確認されれば、ニューモシスチス肺炎が確定されます。

微生物学的検査としては、ニューモシスチス・イロベチイは人工培地で培養できないので顕微鏡観察と遺伝子検査が主体となります。検体材料は原則としてBALF(気管支肺胞洗浄液)を用い、顕微鏡観察を行ったり、ニューモシスチス・イロベチイの特異的遺伝子をPCRで検出したりします。

ニューモシスチス肺炎は、患者さんのベースラインに免疫不全状態があることが発症に深く関与します。エイズはその代表的疾患であり、エイズの原因ウイルスであるHIV検査を行うこともとても重要です。
 

治療

ニューモシスチス肺炎の治療は、ST合剤、ペンタミジン、アトバコンなどが存在していますが、第一選択はST合剤です。呼吸不全が強い場合には、人工呼吸管理やステロイドの併用がなされることもあります。

ニューモシスチス肺炎の急性期症状が改善した後も、基礎に免疫不全状態が残っていると病状が再燃します。そのため、再発予防を目的としてST合剤を使用しますが、急性期よりも使用量は少ないです。もしエイズをきっかけとしてニューモシスチス肺炎が発症している場合であれば、HIVのコントロールも重要になります。

したがって、抗ウイルス薬を併用することも発症予防にはとても有効です。
 

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