KL-6は、肺にあるII型肺胞上皮細胞で作られる物質です。肺の病気の一つである間質性肺炎を発症すると血液中のKL-6が上昇することから、間質性肺炎の診断や活動性を評価する指標としてよく用いられています。
間質性肺炎は、肺胞壁などからなる間質に炎症が起こる病気の総称です。間質性肺炎を発症すると、炎症に伴ってII型肺胞上皮細胞からKL-6が作られ、血液中で高値を示すようになります。肺の病気にはさまざまな種類があり、肺炎に限定しても間質性肺炎のほかに細菌性肺炎やウイルス性肺炎などもあります。KL-6は、間質性肺炎で高値を示し、ほかの多くの肺の病気や細菌・ウイルス性肺炎などではほとんど上昇しないため、KL-6の数値を参考にすることで、間質性肺炎かどうかを鑑別する手がかりになる場合があります。また、間質性肺炎では急激に病状が悪化することがありますが、病状が悪化するとKL-6が顕著に上昇していきます。このように、KL-6は病状を反映して数値が上下することから、診断が確定した間質性肺炎の病勢(病気の勢い)の把握や治療効果の判定にも有用です。
間質性肺炎でよくみられる乾いた咳や息切れの症状がある場合や、ほかの検査によって間質性肺炎が疑われる場合に、血液検査でKL-6が測定されることがあります。ただし、結核や悪性腫瘍といった病気で上昇することもあるため、KL-6が異常値を示したからといって間質性肺炎と決めつけることはできません。
また、KL-6は血液検査で比較的簡単に測定できることや、間質性肺炎の病状を反映して数値が上下することから、治療効果を評価するために利用される場合もあります。
検査前に注意すべきことは特にありません。
KL-6は採血によって検査を行います。長袖を着用している場合、袖周りがきついと採血の妨げになるほか、採血後に血液が漏れやすくなってしまいます。そのため、袖周りにゆとりのある服装で検査に臨むようにしましょう。冬場においては、着脱しやすい服装でいくとスムーズに検査ができます。
特に問題なく採血ができれば数分程度で終わるでしょう。採血の際にチクっとした痛みを感じる場合がありますが、一般的な血液検査と同じ程度の痛みであると考えられます。
KL-6の結果は数値で表され、基準値は500U/mL未満であるのが一般的です。ただし、検査の方法や検査機関によって基準値が異なる場合があります。結果については医師から直接確認するようにしましょう。
KL-6が異常値を示す病気には、間質性肺炎のほかに結核や悪性腫瘍などもあるため、KL-6の値だけで間質性肺炎と断定することはできません。したがって、病気の有無や種類を特定する段階でKL-6が異常値を示した場合は、その後に精密検査が実施されることが考えられます。間質性肺炎を確定させるためにまず実施される検査は、胸部X線や胸部CTといった画像検査です。また、病状を把握するために、呼吸機能検査や気管支鏡検査、肺生検などが行われる場合もあります。
KL-6は、間質性肺炎の治療効果を判定するためや、経過をみるために用いられることもあります。この場合においては、KL-6の数値が異常値を示していてもほかの検査結果も含めて医師が問題ないと判断すれば、特別な対応を必要とせず、現行の治療や経過観察が継続されることも考えられます。
KL-6は主に間質性肺炎が疑われるときに測定されるものです。しかし、これだけで診断を下すことはできず、正確に診断するためにはさまざまな検査を行う必要があります。追加の検査は後日行われることも多いため、忘れずに検査を受けるようにしましょう。ただし、検査の中でも気管支鏡検査や肺生検は身体への負担が比較的大きいため、医師から実施をすすめられた場合にはよく相談した上で決めるようにしましょう。
間質性肺炎と診断された方には、薬物療法や酸素療法などの治療が必要になる場合もあります。経過観察でよいと判断された場合でも、タバコは間質性肺炎を悪化させてしまうだけでなく、ほかの肺の病気を引き起こす危険因子になることから、喫煙者には禁煙指導がなされるでしょう。また、風邪などをきっかけに急激に病状が悪化することがあります。風邪の予防対策など日常生活で注意すべきことも多いため、医師からの説明をよく聞き、指示に従って治療や経過観察を行うようにしましょう。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。