HIVと聞くと、真っ先にエイズのことを思い浮かべる方が多いことでしょう。しかし、HIVに感染したからといってすぐにエイズになるわけではありません。今回はHIVに感染したあとの症状について臨床経験豊富な尾上泰彦先生にお話を伺います。
HIVは免疫をコントロールするヘルパーTリンパ球(CD4リンパ球)に感染します。HIVは感染したCD4リンパ球を壊して減少させていきます。そのため、身体を病気から守っている免疫機能が低下し、健康な状態では発症しないような症状を呈してしまいます。HIVはこの時の症状によって感染初期・無症候期・エイズ発症期の3つの時期に分けられます。
HIVに感染した初期の段階では、ウイルスが急激に増加します。50〜70%の患者さんには感染してから3〜6週間後に、発熱・頭痛・筋肉痛などのインフルエンザのような症状が現れることがあります。この症状のことを急性HIV感染症といいます。
しかし、この症状からだけではHIVに感染しているかどうかは判断できず、検査することによって始めて感染しているかどうかを確認できます。また、症状はピークを過ぎるとほとんどの方は自然に軽快します。
急性期の症状が治まると、自覚症状があらわれない無症候性期が数年〜10年程度続きます。しかし、この無症候の期間は個人によって異なり、2年ほどで症状があらわれる場合や、15年経過しても症状があらわれない場合もあります。この時期は特にこれといった自覚症状はないですが、体内ではHIVが少しずつ増えていきます。また、CD4リンパ球の数も減っていくので、免疫機能も徐々に下がっていきます。免疫機能がある程度まで下がっていくとエイズを発症してしまいます。
免疫機能が低下すると、急激な体重減少やしつこい下痢、ひどい寝汗などがおこるようになります。しかしこの時期になると免疫機能が低下しているのために、健常な方では免疫機能で抑えることができるウイルスや細菌などによる病気に感染してしまいます。この時の感染のことを日和見感染といいます。
厚生労働省では、このように免疫機能が低下することで発症する疾患の中で、カンジダ症やサイトメガロウイルスなどの代表的な23疾患を決めており、23の疾患の内1つでも明らかに認められればエイズと診断するようにしています。
現在では、HIVの治療薬も進歩しているので、適切な治療により症状を抑えることができるようになってきています。しかし、適切な治療をつなげるためには早期の検査・診断が大事といえるでしょう。HIV感染が心配な方は早めに検査を受けましょう!
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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