インタビュー

HIVの検査

HIVの検査
谷口 俊文 先生

千葉大学医学部附属病院 感染制御部・感染症内科 准教授

谷口 俊文 先生

この記事の最終更新は2015年10月14日です。

前の記事では、HIVの感染経路への認識と早期発見が重要であるとお話ししました。今回は、早期発見に非常に重要なHIV検査について、千葉大学医学部附属病院 感染症内科 助教の谷口俊文先生にご説明頂きました。

HIVの検査の目的は、エイズ後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスであるHIVに感染しているかどうかを調べることです。HIVに感染すると、まず体内でHIVが増殖し、その後、HIVに対する抗体(HIVに結合して排除するたんぱく質)が産生されます。この感染〜抗体産出のメカニズムを利用して検査を行います。以下に、主なHIVの検査5つを挙げます。

  • 抗体検査:血液の中にHIVに対する抗体があるかどうかを調べるものです。これは保健所などの迅速検査で使用されるものです。
  • 核酸増幅検査(NAT検査):HIVが増殖しはじめた段階でウイルス遺伝子を調べるものです。
  • 抗原検査:HIVのもとになるたんぱく質があるかどうかを調べるものです。
  • 抗原抗体同時検査:抗体と抗原(HIV)が同時に測定できるものです。この検査は第四世代の抗体検査で、現在主要となっています。
  • ウェスタンブロット:HIV特有の蛋白質を検出する検査です。身体障害者手帳の申請にウェスタンブロットの検査結果が必要になります。

HIV検査では、「スクリーニング検査(HIVに感染している可能性があるかどうかを判定する検査)」と「確認検査(陽性反応が本当にHIVによるものかを確認する検査)」の2段階の検査を行うのが望ましいです。これによりHIV感染による「真の陽性」と、HIVに感染していないのにも関わらず、非特異反応により陽性となる「偽陽性」を見分けることができます。

風俗(コマーシャル・セックス)に行く機会がある方や男性同士のセックスをされる方は定期的に検査を受けてください。全国の保健所で、無料・匿名で検査を受けることができます。

アメリカでは、病院を受診すると、断らない限りは検査を受けることが推奨されています。これはHIVの有病率が高いために、積極的にHIV感染者を早期発見するためです。一方、日本は有病率が低いため、アメリカと同様に全員に検査を受けさせようとしても偽陽性が増え、費用対効果が低くなる(検査にお金をかけても、発見できる感染者数が少ない)という課題が出てきます。

日本では、エイズが発症して初めてHIVに感染していたことが判明する方がいます。このようなHIV感染を放置していた方は非常に予後が悪くなります。これを防ぐには、検査前確率を上げられるような、たとえばエリアを絞ったり、リスクが高そうな人間には積極的に検査を受けてもらうということを今後行っていくことが重要かと思っています。(検査前確率=検査で発見される前から、その集団にどのくらい疾患を持っている者がいる可能性があるかという確率)

HIVの検査キットというものが市販で売られていることを目にした方もいるのではないでしょうか。中には品質の良い検査キットもあるかと思いますが、品質の良し悪しを調べるのは難しいことです。保健所や病院で使用されているものはある程度品質が担保されているので問題ありませんが、市販の検査キットで検査される場合は、陰性となっても必ずしも陰性とは限らないことに注意してください。検査結果に少しでも不安を感じるようであれば、保健所や病院で検査を受けることをお勧めします。

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