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新型コロナウイルス感染症の治療法~重症度別の治療法や治療薬の研究・開発状況を解説~

新型コロナウイルス感染症の治療法~重症度別の治療法や治療薬の研究・開発状況を解説~
谷口 俊文 先生

千葉大学医学部附属病院 感染制御部・感染症内科 講師

谷口 俊文 先生

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年11月19日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症にかかった場合、どのような治療が行われるのでしょうか。現在の医療体制や重症度別の治療法、自宅療養時の注意点、最新の研究・開発情報など、CoV-Navi(こびナビ) 幹事、千葉大学医学部附属病院 感染症内科 講師の谷口 俊文(たにぐち としぶみ)先生にお話を伺いました。

現在は新たな感染者が少なくなっているので、ベッドには余裕がある状態です。

ただし、コロナ病床を一般の診療に振り替えてもよいのか、第6波に備えて病床を空けておくべきなのかは判断が難しく、今後の感染状況などを見て判断しようとしているところです。

軽症の場合は基本的に対症療法を行います。ただし、高齢者や基礎疾患がある方は、発症から7日以内であれば中和抗体による治療が受けられる場合があります。

抗ウイルス薬の投与は難しい

ウイルス薬(レムデシビル)も存在はしますが、適応は中等症以上になっています。本当は軽症の段階からレムデシビルを使うのが望ましいと考えていますが、レムデシビルは点滴の薬なので、自宅療養やホテル療養では使いづらいというのが現状です。

そのため、将来的にレムデシビルと同じくらいの効果がある経口薬が出てくることがあれば、軽症の患者さんにも幅広く使われるだろうと思っています。

基本的には肺炎がある状態が中等症に分類されます。厚生労働省のガイドラインでは、酸素が不要な患者さんを中等症I、酸素投与が必要な患者さんを中等症IIとしています。

まずは抗ウイルス薬を使う

中等症I、IIどちらも最初に抗ウイルス薬(レムデシビル)を使うことが原則です。また患者さんを診ていると、抗ウイルス薬を使うのが早ければ早いほど回復も早くなる印象です。

第5波の時は患者さんが多く、発症して時間が経ってから病院にいらっしゃる方が多かったので、抗ウイルス薬だけでは治療できないこともありました。

抗ウイルス薬を使った後、さらに酸素を必要とする患者さんに関しては、免疫抑制薬であるステロイド(デキサメタゾン)を使います。

ただし、患者さんの体の中でウイルスが増幅している時にステロイドを使ってしまうと、ウイルスが暴走し、より重症の肺炎になってしまいます。そのため、使用するタイミングの見極めが重要です。

たくさんの酸素(高流量酸素)を必要としている患者さんや、人工呼吸器、人工心肺装置(ECMO)が必要な患者さんに対しては、抗ウイルス薬(レムデシビル)とステロイド薬(デキサメタゾン)に加えて、IL-6受容体拮抗薬*(トシリズマブ)、JAK阻害剤**(バリシチニブ)も併用します。

また、新型コロナウイルス感染症にかかると血栓ができやすくなるので、抗凝固薬(ヘパリン)を併用することもあります。

*IL-6受容体拮抗薬:IL-6受容体を阻害して炎症を抑える薬。新型コロナウイルスに感染するとIL-6が放出され、IL-6受容体と結びつくことで炎症によるさまざまな症状を引き起こす。

**JAK阻害剤:細胞の中にあるJAK(酵素)のはたらきを抑えて炎症などを防ぐ薬。

感染症法に基づき、新型コロナウイルス感染症を発症した方は基本的に全員入院する必要がありました。2020年の10月からは入院勧告・措置の対象者が限定されることになり、症状が中等度あるいは重度の方、または重症化のリスクが高い方となりました。しかし、感染拡大に伴ってベッドが足りなくなり、病状に応じて宿泊療養施設への入所や自宅療養も行われるようになったというのが実情です。

感染拡大した状況下では、肺炎が進み酸素濃度が93%以下というのが入院の1つの目安になるのではないかと思います。もちろんこの基準に当てはまらなくても、医師や保健所が必要と判断した場合には入院の適応になると思います。

ただし、今後の感染状況などに応じて、入院の基準は今後も変わっていく可能性があるでしょう。

新型コロナウイルス感染症に有効な経口薬はまだ販売されていないので、熱が出ていれば熱さましの薬(アセトアミノフェンやロキソプロフェン)、咳が出ていれば咳を鎮める薬などで対症療法をしていくことになります。

ステロイド(デキサメタゾン)も処方されることがありますが、使用のタイミングには注意が必要です。体の酸素濃度が低下していないのに飲んでしまうと、肺炎が悪化してしまうことがあるためです。熱が続いてつらいというだけで服用するべきではない薬ですので、必ず医師の指示に従うようにしてください。

重症化の目安になるのが血液中の酸素濃度です。実は酸素濃度が低下しても息苦しさを感じないことも多くありますので、パルスオキシメーターでの計測が重要です。自宅療養でパルスオキシメーターが配られている場合、酸素の濃度が93%以下くらいに低下したら、保健所などの担当者にすぐに連絡をしましょう。

また酸素濃度が低下したときは、チアノーゼといって唇などの粘膜が青紫色や青白くなることがあります。見た目が変わってきたり、元気がなくなってきたり、食欲が低下したりした場合も注意が必要です。

また、新型コロナウイルス感染症のよくある症状の1つに下痢があります。下痢による脱水や食欲低下から低栄養になってしまうこともあるので、水分や食事が取れない場合は入院が必要になることもあります。

家族の方はワクチンを接種しているかどうかにかかわらず、患者さんとなるべく生活空間を分けましょう。洗面や浴室、トイレなどの共用スペースは換気をよくして、小まめな消毒を心がける必要があります。食器はなるべく分けて、別々に食事を取ったり、会話をする時はお互いが不織布マスクを付けたりするなどの工夫も必要です。

また、コロナウイルスは洗濯用の洗剤で死滅しますので、衣類などは通常どおり洗濯すれば問題ありません。ただし、洗濯前の寝具や衣類を触る場合はできれば手袋やマスクを着用する、できない場合は触った後はせっけんで手洗いをし、アルコール消毒を徹底していただければと思います。

新型コロナウイルスに感染すると、肺炎の後遺症が残る、血栓ができやすくなって脳梗塞(のうこうそく)心筋梗塞のリスクが上がる、心筋炎のリスクが上がる、集中できなくて霧がかかったような感じになる、脱毛や味覚嗅覚異常が続くといった後遺症が残ることがあります。

新型コロナウイルスはいろいろな臓器に影響を及ぼすということが分かっているので、回復してもすぐに激しい運動をすることは避けましょう。もし何かしらの症状が続いたり、新たに胸の痛みや息切れなどの症状が現れたりした場合は、すぐに医療機関を受診してください。

また、1度感染して免疫ができても、ウイルスが変異すれば再び感染することがあります。新型コロナワクチンは、多少の変異が起こっても対抗できる抗体が作れるようになっているので、感染後であってもワクチンを打ったほうがよいと思います。

メルクという会社が開発している抗ウイルス薬の大規模な臨床試験の結果、軽症~中等症の患者さんに使用することで入院リスクを50%減らすという報告がありました。ファイザー製の治療薬も臨床試験の最終段階まできており、入院や死亡のリスクを89%減らすと報告されました。もしかしたら年内には経口抗ウイルス薬を使用できるようになるのではないかと考えられています。

ただ現段階では、上述の抗ウイルス薬単独で軽症の方から重症の方まで全ての患者さんが劇的に回復することはないと考えています。たとえば、メルクの抗ウイルス薬(モルヌピラビル)は、症状が進んだ入院患者さんには効果が薄いことが分かっています。

経口治療薬の使用と併せて、ワクチンで予防を進めたり中和抗体やステロイドと組み合わせた治療を行ったりすることで、重症の肺炎に至るケースを減らせるのではないかと期待されています。

現在日本ではmRNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチンが使われていますが、ノババックス社が新たに組換えタンパクワクチンを開発しています。

まだアメリカでも承認されていませんが、大規模な臨床試験を全て終えていて、極めて有効性が高く安全性も優れているといわれています。冷蔵保存が可能で取り扱いやすく、接種もしやすくなるため、接種の面でいろいろと変わっていくと考えています。

まだ先の話になりますが、点滴で使用している抗ウイルス薬(レムデシビル)の吸入薬の開発が進んでいます。将来的には、曝露後(体内にウイルスが入った後)の発症予防や、感染リスクの高い場所に行く前の予防として使えるようになるかもしれません。

新型コロナウイルスの感染経路は、変異ウイルスでも大きく変わりません。そのため、マスクの着用は大変有用な予防方法になると思います。

第5波が収まった理由がまだ明確に分かっていないので、ワクチン接種によって感染拡大がどれぐらい制御できるか、今後の動向を見る必要があります。そのため、ワクチン接種をしても引き続きマスク着用を心がけていただければと思います。

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