概要
避妊とは、妊娠するのを防ぐ手段のことを指します。
妊娠は男女が性交を行い、子宮内に入り込んだ精子が卵子と受精し、子宮内膜に着床することによって成立する現象です。精子は、性交によって膣内に精液が射精されることで、子宮内に侵入します。一方、卵子は約1か月に一度の頻度で卵巣から卵管膨大部に排出(排卵)されます。そして、子宮から卵管まで泳いで到達した精子と出会うことで受精することができるのです。受精した卵子は分裂を繰り返しながら卵管を通って子宮に移動し、子宮内膜に着床します。つまり、妊娠が成立するには、“子宮内に精子が入り込むこと”“排卵があること”“子宮内膜が十分に成熟していること”という3つの条件が必要です。
避妊は、この3つの条件のいずれかを遮断することによって妊娠を防ぐ手段です。コンドームなどの避妊具、経口避妊薬(OC:oral contraceptives)の使用、子宮内への避妊リングの挿入など方法はさまざまですが、望まない妊娠を防ぐには正しい避妊を行うことが必要となります。
OCについて
100人の女性がある避妊法を1年間用いた場合に避妊に失敗する確率を示す指数として、パール指標があります。国内の臨床試験でもほかの避妊法と比較するとOCの避妊効果は高く、避妊手術や薬物添加IUDに匹敵した避妊効果が得られ、その簡便さ、手軽さからOCは優れているとされています。
大規模コホート研究からOCの長期服用で死亡率に変化がない、あるいは低くなることが証明されており、安全面でもOCはよい選択肢です。しかし、避妊の方法にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、自身のライフスタイルなどに合わせて方法を選択することが大切です。
OCは女性が主体的に避妊できる避妊薬として1999年発売され、女性のQOL向上に貢献してきました。また、OCは避妊効果以外に月経痛の改善、月経量の減少、月経前症候群、月経前気分不快障害の症状改善、にきび、多毛症の改善、卵巣がん・子宮体がんリスクの低下などの副効用があることが知られていました。
そのため、OCと同じ成分の薬剤が月経困難症の治療薬として2008年、2010年に発売され、避妊薬のOCと区別するためにわが国では月経困難症の治療薬のことをLEP(low dose estrogen progestin)と呼ぶようになりました。
種類
現在、一般的に行われている避妊法には次のようなものがあります。
コンドームなどの避妊具
日本でもっとも多く行われている避妊法は、コンドームなどの避妊具を用いた方法です。性交時に陰茎に装着することで射精した精液が膣内に放出されるのを防ぐことができます。正しく使用すれば避妊の失敗率は2%ほどとされていますが、正しいタイミングで装着していないことや、性交の途中で脱落・破損することなどによる避妊の失敗が起こりやすいので注意が必要です。
<メリット>
手軽に購入でき、体への負担なく避妊することができます。また、コンドームは性感染症を予防することも可能です。
<デメリット>
誤った方法で使用したり、避妊具が破損したりすることで避妊に失敗する可能性が高くなります。
経口避妊薬
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが含まれた薬を連日服用することで、排卵を抑制して妊娠を防ぐ方法です。欧米では主流の避妊法ですが、日本での普及率は数%とされています。しかし、避妊効果は非常に高く、月経困難症やPMSなどの治療薬としても使用されています。
また、日本では厚生労働省から正式な認可を受けていませんが、性行為後72時間以内に服用すれば効果を発揮するアフターピルも開発されています。
<メリット>
避妊効果が非常に高く、正しく内服を続ければ避妊の失敗率は0.3%です。生理痛や過多月経、月経不順を改善する効果もあります。
<デメリット>
婦人科への受診が必須となり、服用後3か月以内は吐き気、腹痛、不正出血などの副作用が現れやすいとされています。また、性感染症を予防することはできず、飲み忘れがあると妊娠する可能性も高くなります。
OCを服用すると太りやすいという思い込みがありますが、この事実がないことが疫学的に証明されています。一方、OCの重篤なリスクとしては静脈血栓塞栓症があげられます。生殖可能年齢女性においてOC非使用者比べると、相対的危険度は数倍ですが絶対的危険度は妊娠中のそれよりも低いことが証明されています。
レボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS:intrauterine system)
子宮内に黄体ホルモンを放出する機器を挿入することで子宮内膜の増殖を防ぎ、着床を妨げる避妊方法です。医師による挿入が必要ですが、一度挿入すれば5年間は避妊効果が続きます。また、避妊失敗率はわずか0.2%であり、女性が主体的に避妊できる方法でもあります。月経困難症や過多月経の治療にも使用されます。
<メリット>
一度子宮内に挿入すれば、5年間は非常に高い避妊効果が続きます。女性が主体的に避妊を試みることができる方法です。
<デメリット>
医師による挿入と5年に一度の交換が必要です。また、費用が高額であり、子宮の病気などによっては使用できないケースもあります。性感染症を予防する効果もありません。
銅付加子宮内避妊器具(IUD:intrauterine device)
子宮内に銅が付加された機器を挿入し、子宮内に侵入した精子の運動を阻害したり、精子と卵子の受精を妨げたりする避妊方法です。
一度子宮内に挿入すれば5年間ほど避妊効果があり、避妊失敗率は0.6%とされています。
<メリット>
一度子宮内に挿入すれば数年間にわたって高い避妊効果を発揮します。女性が主体的に避妊を試みることができる方法です。
<デメリット>
医師による挿入と抜去が必要となるため、体への負担は大きくなります。また、挿入後は月経量が増えたり、不正出血や腹痛などの副作用が現れたりすることがあります。
リズム法
基礎体温や生理周期などから排卵日を予測し、その前後の性行為を避ける方法です。金銭的、身体的な負担は一切ない避妊法ですが、正しく排卵日を予測できない場合、ほかの避妊法に比べて避妊に失敗する可能性が圧倒的に高くなります。
<メリット>
金銭的、身体的な負担なく気軽に行うことができます。
<デメリット>
正しく排卵日を予測できない可能性も高く、避妊に失敗する可能性も高い方法です。一般的な失敗率は24%にも及ぶとされています。
緊急避妊法
緊急避妊法とは、性交中にコンドームが破損したり、性犯罪に巻き込まれたりすることによって避妊に失敗した際に緊急的に妊娠を予防する手段のことです。
一般的に広く行われているのは、いわゆる“アフターピル”と呼ばれる緊急経口避妊薬を用いる方法です。現在主流となっている緊急経口避妊薬には黄体ホルモンのみが含まれ、無防備な性行為から72時間以内に服用することで排卵を遅らせたり、子宮内膜の状態を変化させて着床を阻害したりすることができます。性行為後24時間以内に服用すれば95%以上の確率で妊娠を防止することが可能とされています。
また、そのほかにも無防備な性行為後5日以内に銅付加IUDを挿入すると、万が一受精が起きていても着床を阻害できることが分かっています。避妊の失敗率は1%未満との報告もあり、非常に高い確率で緊急的に妊娠を予防できるとされています。そのため、緊急的な避妊を行った後も継続して妊娠を希望しない場合や、アフターピルの服用期限とされる72時間を過ぎている場合は、銅付加IUDの挿入を行うケースもあります。
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