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らんそうがん

卵巣がん

最終更新日:
2024年01月15日
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2024/01/15
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概要

卵巣がんとは、卵巣に発生するがんのことです。卵巣は女性ホルモンを分泌したり、卵子を成熟させて排卵を起こしたりする“女性の性機能”に関わる大切な臓器ですが、がんが発生したからといってすぐに症状が現れることはほとんどありません。しかし、進行すると大きなしこりを形成することも多く、下腹部が張る・しこりを触れるといった症状が現れるようになります。また、大腸や膀胱など周辺の臓器を圧迫することで便秘や頻尿などの症状を引き起こすことも少なくありません。さらに、卵巣がんは進行するとおなかの臓器を包む腹膜に広がり、がんがお腹の広い範囲に広がっていくとされています。

卵巣がんの発生頻度は10万人あたり20.7人(2019年)ほどと決して頻度の高い病気ではありません。しかし、このように進行するまで症状が現れにくいため早期発見が難しく、さらに進行すると重篤な状態になりやすく女性にとっては注意すべきがんの1つです。

また、卵巣がんの10%は遺伝性であることが分かっており、血のつながった親族に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる場合はとくに注意が必要です。2020年には、遺伝子検査で卵巣がんに加えて乳がんの発症率も高い“遺伝性乳がん卵巣がん症候群”と診断された場合は、予防的に乳房や卵巣を切除する手術が保険適用となりました。

原因

卵巣がんの明確な発生メカニズムははっきり分かっていない部分も多いのですが、排卵回数の多さが発症に関わっていることが指摘されています。そのため、妊娠や出産経験がない人、高齢出産をした人、初潮が早かった人、閉経が遅い人など一生を通して通常よりも排卵の回数が多い人の発症リスクが高いと考えられています。

一方、卵巣がんの約10%は、“BRCA1遺伝子”や“BRCA2遺伝子”の変異によって引き起こされていることが分かっています。これらの遺伝子の変異は遺伝性があり、さらに卵巣がんだけでなく乳がんにもなりやすいという特徴があります。このような病気を“遺伝性乳がん卵巣がん症候群”と呼びます。

また、このような遺伝子変異がない場合でも、血がつながった親族に卵巣がんを発症した人がいると自身も発症するリスクが高まることも分かっています。

症状

卵巣がんは、早期段階ではほとんど症状が現れないのが特徴の1つです。

しかし、進行するにしたがってがんは徐々に大きくなり、下腹部にしこりを触れるようになったり、下腹部の張りや痛み、腰の痛みなどが現れたりするようになります。また、大きくなったがんは大腸や膀胱などの臓器を圧迫するため便秘・頻尿などの症状が現れます。さらに大きくなったがんが胃を圧迫するようになると、食欲低下や食後の吐き気・嘔吐(おうと)などを引き起こすことも少なくありません。このようにがんが進行して卵巣全体が大きくなると、卵巣の根元がねじれて壊死(えし)する“卵巣腫瘍茎捻転”を引き起こしたり、がんが破裂したりすることがあります。その結果、激しい腹痛や不正出血が生じ、治療が遅れると命を落とすケースも珍しくはありません。

そして、卵巣がんはおなかの臓器を包む腹膜と呼ばれる膜に広がりやすいという特徴もあります。いったん腹膜にがんの細胞が広がると、おなかの中の臓器や横隔膜などにまでがんが広がっていくこととなり、おなかや胸に水がたまって呼吸苦などを引き起こすケースもあります。実は卵巣が大きくなって圧迫するタイプよりも、腹膜に広がり腹水がたまるタイプのほうが多く、進行も早いです。

また、卵巣がんには女性ホルモンや男性ホルモンの分泌を促すタイプのものもあり、乳房が大きくなったり、体毛が濃くなったりと卵巣がんとは関連が薄いと思えるような症状が目立つこともあります。

検査・診断

卵巣がんが疑われるときは、次のような検査を行います。

超音波検査

卵巣の状態を簡易的に評価するための検査です。(ちつ)の中やおなかの上から超音波を当て、卵巣の大きさなどを調べます。簡便に行うことができる検査であるため、卵巣がんが疑われた場合に第一に行う検査ですが、がんの広がりなど詳しい状態を観察することはできません。

画像検査

超音波検査などで卵巣に何らかの病気があると考えられる際には、精密検査としてCTやMRIを用いた画像検査が行われます。これらの画像検査では、卵巣の状態を詳しく調べることができるだけでなく、がんの広がりや転移の有無などを調べることが可能です。

血液検査

貧血や炎症の有無など全身の状態を調べるために血液検査を行うのが一般的です。また、卵巣がんは“CA125”と呼ばれる腫瘍マーカー(がんを発症すると体内での産生量が増す物質)が上昇することが多いため、診断の手がかりの1つとして血中のCA125濃度を調べます。

病理検査

卵巣がんの確定診断に必要な検査です。手術で切除したがんの組織、腹水・胸水などを顕微鏡で詳しく観察することで、がん細胞の有無や卵巣がんのタイプを確定することができます。

治療

基本的に、卵巣がんの治療はがんが発生した卵巣や卵管、子宮、腹膜の一部を全て切除する手術が行われます。ごく早期の段階であれば手術のみで治療が完了することもありますが、術後の再発を防ぐために抗がん剤や分子標的薬(ベバシズマブ、PARP阻害薬)などを用いた化学療法が行われます。

また、他部位に転移しているなど発見時すでに進行しているケースでは、化学療法を行ってがんのサイズを縮小させてから手術を行うことも多く、手術で完全にがんを切除できないと考えられるケースでもできるだけ多くのがんの組織を切除してがんをサイズダウンさせる“腫瘍減量術”を行うことも少なくありません。

一方で、卵巣は妊娠に関わる非常に重要な臓器です。卵巣がんがごく早期で、患者が妊娠・出産を希望している場合には、妊孕性温存(手術子宮と健常側の卵巣・卵管を温存)が行われることもあります。ただし、再発の確率が高くなるリスクを伴うため、適応について医師とよく相談して慎重に検討することが大切です。

予防

卵巣がんは、上でも述べたとおり排卵回数が多いと発症リスクが上昇すると考えられています。経口避妊薬を服用すると卵巣がんの発生率が下がることも分かっていますので、妊娠を望まない期間には経口避妊薬を服用するのも1つの予防法です。

また、卵巣がんは遺伝が関与するタイプもあり、70歳までにBRCA1遺伝子の変異がある場合は40%、BRCA2遺伝子の変異がある場合は18%の確率で卵巣がんを発症するとされています。そのため、乳がんを発症して、BRCA1、2遺伝子変異を持っていることが分かった人は、卵巣がんを発症する前に両側の卵巣・卵管を摘出する手術を受けることが保険診療で認められています。

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