卵巣がんの検査では、内診や経膣超音波検査、画像診断、病理検査などが行われます。さまざまな検査結果を総合的に評価したうえで腫瘍の悪性度を推定し、最終診断のためには手術中または手術後に行われる病理検査が必要になります。検査から分かった病期やがんの組織型などから、一人ひとりの患者さんに適切な治療方針を検討していきます。記事1に引き続き、本記事では卵巣がんの検査方法と診断までの一般的な流れを解説します。
内診では、子宮や卵巣に直接触れて、周辺臓器との癒着の状態を確認します。子宮や卵巣に触れてみて、これらの臓器が可動性を保っている(動く)ようであれば、骨盤や骨、腸などの他臓器に癒着していないため、手術による卵巣の摘出が可能だと判断できます。
経膣超音波検査では、カラードプラ法*を用いて、腫瘍の構造および腫瘍内血管の血流速度を測定することにより、良性・悪性を推定します。
悪性腫瘍は、自分自身が発達するために腫瘍への栄養血管を作成しようとします。しかし、悪性腫瘍への栄養血管は短期間で作られた血管であるため、良性腫瘍が栄養血管を作った場合に比べて脆もろく、破れやすいという特徴があります。また、血液の流れが遅いことも特徴です。これらの特徴を有している場合は、悪性腫瘍である可能性が高いと考えられます。
*カラードプラ法…血流のある部分を色付けして表示する方法。プローブに近づく方向の血流と、遠ざかる方向の血流を表す色を変えることで、血液の流れる方向を把握できる。
CTや造影MRIなどの画像診断で、遠隔転移やリンパ節転移を起こしていないかを確認します。肺などの胸部に転移していると疑われる場合は、脳にも転移していないか検査します。
術前には、卵巣がんの発症に関連する数種類の腫瘍マーカーを検査し、高値を示す腫瘍マーカーを確認します。
手術後、もう一度腫瘍マーカーを検査します。術前に高値を示したマーカーのうち、数値が低下したマーカーがあれば、それを「フォローアップマーカー」に置いて定期的に検査します。
ただし、一部の腫瘍マーカーは、術前で高値を示していない場合も定期的な検査を実施することがあります。術前に正常値を示しても、リンパ節転移や消化管転移が原因で上昇することがあるからです。
前述の検査結果を総合的に評価することで、卵巣腫瘍の悪性度や組織型を推定します。
手術後は、がんの組織型や進行期に応じて、内診、超音波検査、腫瘍マーカー、CTを定期的に行うことで、いかに再発を早期発見するかが重要です。
前述の検査では、組織型やがんの構造を推定することが可能ですが、確定診断をすることは原則的にできません。卵巣がんの最終診断は、手術で採取した組織の病理検査の結果に委ねられます。体力的な面やご本人の意向などの理由で手術による病理検査が実施できない場合は、最終診断に至ないこともあります。
卵巣がんにおける治療の基本は、手術による腫瘍摘出です。一度の手術で完全切除が可能と判断できるケースでは、原則的に手術が適応されます。手術で可能な限り腫瘍を取り除けるかどうかが、その後の経過に大きく影響します。
手術のみでは完全切除が難しい場合は、抗がん剤の感受性が高い組織型であれば、数か月単位で術前化学療法を実施します。定期的な検査で摘出可能と判断された時点で、手術を行います。
大きな治療の流れは、卵巣がんの組織型によって異なります。
Ⅲ・Ⅳ期または、全身状態が悪く手術が難しいほど進行した漿液性腺がんでは、まず術前化学療法を行い、腹水や腫瘍をコントロールします。抗がん剤の効果で腹水の消失と腫瘍の縮小が確認できたら、手術で腫瘍を摘出します。術前化学療法を行うことで、術後の化学療法でも効果が期待できる抗がん剤を推定することができます。
明細胞腺がんは悪性度の高いタイプですが、化学療法の感受性が低く抗がん剤治療の効果が現れにくいので、手術による完全切除を目指した治療が行われます。
類内膜腺がんと粘液性腺がんにおける治療は、進行症例で発見されるケースは少なく、手術が選択されることが多いです。粘液性腺がんの腫瘍は非常に大きくなっていることがありますが、容易に摘出できるケースが多いので、がんと発覚したら速やかに手術を実施します。
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