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卵巣がんの原因と症状―急な体型の変化がみられることも

卵巣がんの原因と症状―急な体型の変化がみられることも
地方独立行政法人市立東大阪医療センター 産婦人科 部長 奥 正孝 先生

地方独立行政法人市立東大阪医療センター 産婦人科 部長

奥 正孝 先生

目次
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女性特有の臓器である卵巣は、排卵や女性らしい体の形成において重要な役割を果たしています。卵巣はさまざまな細胞から構成されているため、卵巣から発生する腫瘍の種類も多く存在します。卵巣にできた腫瘍は良性・境界悪性・悪性に分類され、「悪性」と診断された腫瘍を卵巣がんと呼びます。今回は、卵巣がんの症状と病態について、市立東大阪医療センター産婦人科部長の奥正孝先生にお話しいただきました。

卵巣の機能とは―卵子の成熟・排卵と女性ホルモンの分泌

卵巣は、子宮の両脇に1つずつ位置し、腹膜というお腹の内臓の表面に広がる膜に包まれている女性特有の臓器です。

卵巣の機能は、大きく2つに分けられます。ひとつめの機能は、卵子を成熟させて排卵することです。ふたつめの機能は、女性らしい体の形成と維持に必要な女性ホルモンを分泌することです。

卵巣がん

卵巣がんとは

卵巣を構成するさまざまな組織に発生した腫瘍ががん化したもの

卵巣はさまざまな細胞から構成されています。構成する細胞の種類が多いことから、卵巣に発生する腫瘍の種類も多数認められています。

一般的な分類では、腫瘍が発生した細胞によって、「表層上皮性・間質性腫瘍」、「精索間質性腫瘍」、「胚細胞腫瘍」などのタイプに分類されます。卵巣がんの約90%は、表層上皮性・間質性腫瘍であることが知られています。

このタイプ分類にかかわらず、全ての卵巣腫瘍はその性質によって「良性」、「境界悪性」、「悪性」に分けられます。たとえば、上皮性腫瘍の一種である卵巣嚢腫(のうしゅ)は、漿液性嚢胞腺腫という良性卵巣腫瘍の一種ですが、これががん化した場合は、漿液性嚢胞腺がんという卵巣がんの一種になります。このように、卵巣がんは、卵巣に発生した腫瘍が悪性化したものの総称です。ただし、一概に良性・悪性と分類しきれないケースもあります。

本記事では、日本で多くみられる「表層性上皮性卵巣がん」について解説します。

進行すると転移しやすい

卵巣がんが進行すると腹膜播種(ふくまくはしゅ)が生じることがあります。腹膜播種とは、がん細胞があるメカニズムにより、障壁である腹膜を破壊することで、腹腔内にある臓器に散らばるように転移することです。

卵巣がんの典型的な症状

腹水や体型の変化などがみられる

卵巣がんで多くみられる症状は、腹水、腹部膨満感(お腹が張ること)、体重減少、体重変化などです。普段着ている衣服のサイズが合わなくなったことで異変を感じる方もいらっしゃいますが、後述する卵巣がんの組織型によっては、初期段階での自覚症状が現れないこともあります。症状が現れない場合の多くは、かかりつけの内科を受診したタイミングで腹水を指摘され、総合病院で精密検査を受けて診断に至ります。

卵巣がんの主な組織型の特徴と治療方針

漿液性腺がん(Serous adenocarcinoma)

漿液性腺がんの特徴は、進行が速く、腹水や腹部膨満感などの症状が短期間で顕著に現れるため、比較的診断がつきやすいことです。

漿液性腺がんは、細胞の分化度(活発に増殖しているか)によって、ハイグレードとローグレードに分類されます。ハイグレードの漿液性がんは、卵巣がんのなかでもっとも発生頻度の高い組織型であることが知られており、その半数程度が卵子をキャッチする卵管采というところから発生すると考えられています。

化学療法に対する感受性が高く、抗がん剤治療による効果が期待できます。病期が進行した漿液性腺がんの治療では、術前化学療法で腫瘍を縮小してから手術を行います。

明細胞腺がん(Clear cell adenocarcinoma)

明細胞腺がんは、子宮内膜症がゆっくりとがん化することで発生します。ステージⅠの早期段階で診断されることが多いですが、悪性度の高いタイプの卵巣がんであるため、手術と化学療法を組み合わせた治療が必要です。しかし、漿液性腺がんと異なり抗がん剤が効きにくいので、治療は手術で完全にがんを摘出できるかどうかが重要になります。

明細胞腺がんは、後腹膜や尿管などの周辺臓器と高度に癒着していることがあります。尿管の損傷を回避するため手術をする際に尿管カテーテルを挿入することがあります。

類内膜腺がん(Endometrioid adenocarcinoma)

類内膜腺がんは、明細胞腺がんと同様に、子宮内膜症に関連するがんです。ローグレードであることが多く、進行は穏やかで予後も比較的良好なケースが多いと考えられています。比較的抗がん剤が効きやすいタイプの卵巣がんです。

粘液性腺がん(Mucinous adenocarcinoma)

粘液性腺がんは、腸型粘液性境界悪性腫瘍という良性腫瘍と悪性腫瘍の中間的な組織像を示す卵巣腫瘍と併存することが多いタイプの卵巣がんです。良性粘液性腫瘍を母地として発生すると考えられています。進行例は少なく、自覚症状に乏しいため、「最近太ったかもしれない」と誤解して、腫瘍がかなり大きくなるまで放置してしまう患者さんが少なくありません。

卵巣がんの原因と悪化の要因とは

遺伝子変異による卵巣がんのリスク

本邦の漿液性腺がん患者さんの一部は、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)が関連していると考えられています。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群とは、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異が原因で、比較的若年で乳がんと卵巣がんを発症する遺伝性の病気です。

当院では、漿液性腺がんの治療を行った患者さんが、数年後に乳がんを発症した事例や乳がんの治療後10年近く経過してから卵巣がんを発症した事例を経験しています。遺伝子変異の有無を確認できていないので、患者さんが実際に乳がん・卵巣がん症候群であったかどうかは確認できていませんが、BRCA1またはBRCA2に変異があった可能性はあるかもしれません。

加齢や高齢出産は卵巣がんの診断が遅れる原因になる

以下に該当する場合は、卵巣がんの診断が遅れる原因となる可能性があります。

  • 加齢
  • 子どもがいない
  • 高齢での第1子出産
  • 初潮が早かった
  • 閉経が遅い

卵巣がんを早期発見するには?

がんのタイプによっては進行が速く早期発見が難しい

前項でご説明したように、卵巣がんは、どの組織型であるかによって進行速度が大きく異なります。

ハイグレードの漿液性腺がんは急速に進行するため、早期発見が難しいです。診断された時点ですでにⅢ期またはⅣ期までがんが進行していることも少なくありません。

これに対して、明細胞腺がんや類内膜腺がん、粘液性腺がんは、緩やかに進行するので、がんが進行した状態でみつかるケースは、漿液性腺がんほど多くありません。

卵巣に良性腫瘍がある場合は経過観察を続けることが大事

進行速度がゆっくりのタイプであっても、急に進行することもあります。かつて、当院で子宮内膜症の経過観察を行っていた患者さんの事例では、チョコレート嚢胞が悪性転化して急速に増大し、手術に至ったことがありました。

チョコレート嚢胞や皮様嚢腫、良性の卵巣腫瘍など、がん化する可能性がある病変がみつかった場合は、長期的に病院で経過観察することが大切です。