ちょこれーとのうほう

チョコレート嚢胞

同義語
チョコレートのう胞
最終更新日
2023年06月14日
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2023/06/14
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

チョコレート嚢胞(のうほう)とは、卵巣に生じる子宮内膜症のことです。子宮内膜症とは、本来であれば子宮の内部のみに存在する子宮内膜が子宮以外の部位に増殖する病気のことであり、チョコレート嚢胞は卵巣内で子宮内膜細胞が増殖します。子宮内膜は生理時に剥がれ落ちるため出血を生じますが、チョコレート嚢胞では卵巣内で生じた出血が排出されずにたまってチョコレートのような形状になることからこのような名前で呼ばれています。

チョコレート嚢胞は20歳代や30歳代の若い世代が発症しやすく、発症すると強い生理痛、排便痛、性交痛などがみられるほか、不妊症の原因となることも知られています。また、卵巣がんのリスクが高くなるとの報告もあるため注意が必要です。

基本的な治療はホルモン療法や嚢胞を摘出する手術ですが、手術は卵巣機能を低下させる可能性もあるため慎重な実施が望まれます。

原因

チョコレート嚢胞は卵巣内に子宮内膜細胞が増殖することによって引き起こされる病気です。子宮の内部以外で子宮内膜が増殖する原因としては、逆流した経血に含まれる子宮内膜の組織が子宮内以外の場所に付着するという“月経逆流説”が有力視されています。しかし、どのようなメカニズムで子宮内膜が卵巣内で増殖するのか明確には分かっていません。

また、子宮以外の部位に増殖した子宮内膜細胞も生理の時に出血を生じるため、卵巣内には古くなった血液がどんどんたまっていきます。このようにたまった血液は茶色に変色してチョコレートのような形状になります。

症状

チョコレート嚢胞を発症すると卵巣の内部に古い血液がたまっていくため卵巣がどんどん大きくなっていきます。また、生理中は卵巣内で増殖した子宮内膜細胞からサイトカインなどの物質が分泌され、強い下腹部痛や腰痛などいわゆる“重い生理”のような症状が引き起こされます。さらに、進行すると生理中ではないとき、特に排卵期に下腹部痛や腰痛、排便痛、性交痛などの症状が現れるようになります。

なお、チョコレート嚢胞は将来的な不妊につながることも多く、40歳以上では卵巣がんに移行する可能性が高くなるため注意が必要です。

検査・診断

チョコレート嚢胞が疑われる場合は、次のような検査が行われます。

(1)画像検査

卵巣の病変の有無を確認し、大きさなどを評価するために画像検査が必要です。もっとも簡便に行うことができるのは超音波検査ですが、チョコレート嚢胞では卵巣がんなどとの鑑別を行うためにCTやMRIなどによる検査が必要となります。

(2)血液検査

チョコレート嚢胞を発症すると“CA-125”という腫瘍(しゅよう)マーカーが上昇することがあるため、診断の手がかりの1つとして血液検査を行うのが一般的です。また、貧血の有無など全身状態を把握するために血液検査を行うこともあります。

治療

チョコレート嚢胞は嚢胞の大きさや症状などによって治療方法が大きく異なります。

軽症で自覚症状もほとんどない場合は特別な治療をせずに定期的な経過観察のみをしたり、痛み止めなどを用いたりする対症療法を行います。一方、嚢胞が大きい場合や症状が強い場合は、嚢胞を縮小させる効果があるホルモン療法(低用量ピル療法ないし黄体ホルモン療法)が行われることがあります。また、卵巣や嚢胞を摘出する手術が行われることもありますが、術後に卵巣の機能が低下する可能性があるため妊娠を希望する人に対しては慎重な治療法の選択が行われます。

予防

チョコレート嚢胞の明確な発症メカニズムは解明されていないため、確実な予防法はないのが現状です。しかし、チョコレート嚢胞は放っておくと卵巣がんになる可能性もあるため、強い生理痛などの症状が続くときは軽く考えずに病院を受診しましょう。

また、チョコレート嚢胞は術後の再発率が高いため、予防的ホルモン療法がすすめられます。治療後も定期的に検査を受けて再発の有無を確認することが大切です。

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