概要
不妊症とは健康な男女が一定期間(約1年)避妊をせずに性交しているにもかかわらず、妊娠に至らない状態のことをいいます。
一般的に排卵日付近に避妊せず性交をして妊娠する確率は約20%で、理論上は3か月で約50%、6か月で約70%、1年以内には約90%の人が妊娠に至ります。男女共に年齢が上がるにつれて妊娠する・させる力が低下し、女性では35歳を過ぎると妊娠率が大きく低下しますが、30歳代の人でも多くの場合1年以内に妊娠します。
そのため一般的に1年以内に妊娠に至らなければ不妊症が疑われ、女性側または男性側、あるいは両方に何らかの原因が隠れている可能性があります。
以前は約10組に1組のカップルが不妊であるといわれていましたが、近年では妊娠を考える年齢が高くなっていることもあり、不妊症の割合はさらに高くなってきていると考えられています。国立社会保障・人口問題研究所が2015年に出した報告によると、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は18.2%となっており、カップルの5.5組に1組が不妊症と考えられます。
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原因
世界保健機構(WHO)によると男女別の不妊原因は、女性のみの場合が41%、男性のみの場合が24%、男女両方の場合が24%、原因不明の場合が11%となっています。つまり不妊の原因はどちらも考えられ、約半数は男性側にも原因があります。そのため、不妊症の検査や治療を受けるうえでは、どちらに原因があると考えるのではなくお互いが協力して検査や治療に臨むことが大切です。
女性側の原因
妊娠が成立するうえで、子宮や子宮頸管、卵管、卵巣、などの妊娠に関わる器官が正常であることと、視床下部―脳下垂体、甲状腺などのホルモン分泌が正常で排卵が行われることが必要であり、これらに障害が起こると妊娠しにくくなります。
考えられるものとしては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜の増殖不全、クラミジア感染などによる卵管炎、卵管の狭窄・閉塞、黄体機能不全、卵巣機能低下、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺機能の異常、抗精子抗体などが挙げられます。
男性側の原因
男性側の原因としてもっとも多いのが、精巣内で精子をつくる機能が低下する造精機能障害です。造精機能が低下する原因の多くは不明ですが、精索静脈瘤、染色体異常、内分泌異常などが原因になることがあります。
また精路通過障害、前立腺炎、精巣上体炎、勃起障害、射精障害なども男性不妊の原因に挙げられます。
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症状
健康な男女が一定期間(約1年)避妊をせずに性交しているにもかかわらず、妊娠に至らないことです。不妊症の原因によっては、以下のような症状がみられる場合があります。
女性の場合
女性では、月経の間隔が極端に長い・短い、月経量が極端に多い・少ない、生理痛が強い、性交痛があるなどの症状がみられることがあります。性感染症を発症すると、下腹部痛や排尿痛、おりものの増加などが起こる場合があります。しかし、クラミジア感染は無症状の場合も多く、検査して初めて見つかることもあります。
男性の場合
男性不妊の原因としてもっとも多い造精機能障害では、睾丸が小さい・柔らかい、陰嚢に複数の血管のコブ(精索静脈瘤)がある・痛みを感じるなどの症状があります。勃起不全(ED)では、十分に勃起を維持できない、射精障害では精液量が減少する、射出されないといった症状を自覚します。
検査・診断
不妊症の原因は多岐にわたるため、さまざまな検査を行って原因を突き止めます。
女性が行う検査
女性の場合には、主に内診、経腟超音波検査、子宮卵管造影検査、ホルモン検査、フーナー検査が行われます。
内診や経腟超音波検査では子宮内膜症、子宮筋腫などの有無を確認し、子宮卵管造影検査では子宮の形態や卵管の通過性などを調べます。ホルモン検査では、甲状腺機能や脳下垂体や卵巣からバランスよく十分なホルモン分泌がされているかを調べます。
フーナー検査は性交後に実施する検査で、もっとも妊娠しやすい排卵日近くに性交し、翌日女性の子宮頸管粘液を採取して粘液中に精子が侵入できているかを確認します。
男性が行う検査
男性不妊に対しては精液検査が行われます。一般的には2~7日間禁欲した後にマスターベーションで精液を採取し、その精液から精子の数や運動率などを調べます。
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治療
不妊症の原因が判明している場合にはその原因に応じた治療が行われ、原因が分からない場合や年齢が若い場合には、より自然な方法から開始し、妊娠しなければより確率が高い治療へステップアップする方法が一般的です。
原因が判明している場合
原因によって治療法が異なりますが、女性側の原因として、たとえば排卵障害に対しては排卵誘発法(排卵誘発剤の内服または注射)によって排卵を促します。子宮内膜症や卵管の通過性が悪い、卵管周囲に癒着がある場合などには手術や体外受精などが検討されます。
クラミジア感染が見つかった場合は、まずカップルで抗生剤により治療します。頸管粘液に問題があるなどフーナー検査が不良であれば、人工授精が実施されます。子宮内膜ポリープや子宮筋腫が原因の場合は、手術が選択されることもあります。甲状腺ホルモン異常がある場合や高プロラクチン血症の場合は、薬剤により適切なホルモンレベルにしていきます。
男性側の原因として、勃起不全には勃起不全治療薬で約8割が改善するとされています。このような治療に加え、タイミング法(医師の指導のもと妊娠に最適な日時に性交する)を行います。
また精液の状態が不良の場合、その程度が比較的軽い人は人工授精、程度が重い人は体外受精・顕微授精が選択されます。造精機能障害に対しては、精索静脈瘤が原因と考えられれば手術が検討されることもあります。
原因が分からない場合
一般的には自然の妊娠に近いタイミング法から開始し、妊娠に至らない場合に排卵誘発法が行われます。それでも妊娠が成立しない場合に、人工授精→体外受精→顕微授精というようにステップアップしていきます。
ただし女性の年齢が30歳代後半以降、特に40歳代の場合は、最初から体外受精・顕微授精を実施することで染色体異常の確率がより低くなるほか、少しでも若い卵子を使用することによって時間と費用のロスを最小限にして早期の妊娠に結び付けることができるといわれています。
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予防
不妊症と関連する生活習慣として、不規則な生活、睡眠不足、肥満・痩せ、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが挙げられます。生活習慣を改善することで妊娠しやすい体を作ることにつながるため、まずは生活習慣を見直してみましょう。
一方、男性では精巣を温めすぎると精子をつくる機能が低下します。サウナや長風呂、きつい下着、長時間の自転車やバイクの運転、パソコンの膝上での使用は避けるようにしましょう。
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