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不妊治療について――高度生殖医療(生殖補助医療)などの種類別の特徴

不妊治療について――高度生殖医療(生殖補助医療)などの種類別の特徴
河村 寿宏 先生

田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長

河村 寿宏 先生

目次
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体外受精の技術は年々進歩を遂げており、実際に生まれてくる子どもの数も増えてきているといいます。今回は、不妊治療の種類と、体外受精・顕微授精・凍結胚移植といった高度生殖医療(生殖補助医療)について、田園都市レディースクリニック理事長の河村 寿宏(かわむら としひろ)先生にお話しいただきました。

女性不妊の治療には、

  • タイミング法
  • 人工授精
  • 体外受精、顕微授精、凍結胚移植などの高度生殖医療(生殖補助医療)

などさまざまな方法があります。

両側卵管閉塞(らんかんへいそく)など、最初から体外受精を行うべき状態であれば当然その治療から開始しますが、通常はタイミング法から始まり、人工授精、高度生殖医療(生殖補助医療)とステップアップしていく場合が多いです。

しかし、女性の年齢が30歳代後半から40歳代と高齢の場合は、早期の治療が望まれるため、初めから人工授精や高度生殖医療(生殖補助医療)を実施するケースもあります。

そして、上記の治療に併用して、

  • 薬物療法(排卵誘発剤、漢方薬など)
  • 外科的治療

を行うケースもあります。

男性不妊に対しては、薬物療法や必要に応じて手術療法を行います。また、生活習慣の改善にも効果が期待されています。

男性不妊の治療について詳しくはこちら

経腟超音波検査による卵胞や子宮内膜の厚さの計測、尿中ホルモン(LH)、子宮頸管粘膜(しきゅうけいかんねんまく)の状態の観察などによって排卵日を推測します。そして、性交を行う適切なタイミングを医師が指導することで、自然妊娠の確率を高める治療法です。

人工授精とは、女性の排卵日に合わせて、男性の精液を採取し、精液から状態の良好な精子を集め、柔らかいカテーテルを使い子宮内に注入する治療法です。

子宮に精子を注入するところまでが人工的であり、その後は自然妊娠と同様のメカニズムで受精に至ります。

人工授精について詳しくはこちら

高度生殖医療(生殖補助医療=ART:Assisted Reproductive Technology)とは、1978年にイギリスで体外受精が初めて成功した後に発展した不妊治療のことで、従来行われてきた不妊治療では妊娠が難しかったカップルが主な対象となります。高度生殖医療(生殖補助医療)として行われる具体的な治療方法には、体外受精・顕微授精・凍結胚移植を挙げることができます。

そして、これらの治療法により世界中で800万人以上の赤ちゃんが生まれていると推測されています。

体外受精とは、経腟超音波ガイド下に針を用いて卵巣から卵子を採取し、体外で卵子を精子と受精させ受精卵を数日培養し、その後、カテーテルを用いて受精卵を子宮に戻す(移植する)という治療法です。

体外受精を行う際は、患者さんの自然な排卵周期で行う場合と、排卵誘発剤を使用する場合があります。体外受精は、卵管性不妊症男性不妊症子宮内膜症、免疫性不妊症(抗精子抗体陽性)、原因不明の不妊、加齢に伴い卵子が老化しつつあるため治療を急ぐ場合などに適応されます。

体外受精について詳しくはこちら

顕微授精とは、卵子を採取した後、細い針を使い卵子の中に精子を1つ注入して受精卵を作る方法です。体外受精で受精が起こらなかった場合、体外受精では受精が不可能なほど精子の状態が良好でない場合などに適応されます。

顕微受精について詳しくはこちら

凍結胚移植とは、体外受精や顕微授精で得られた胚を採卵したその周期には移植せず、凍結保存した後に融解し移植するという治療です。胚を凍結保存する理由は、採卵周期の着床環境が不良の場合や、排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群(OHSS:ovarian hyperstimulation syndrome)*を回避するためです。

凍結胚移植について詳しくはこちら

なお、いずれの高度生殖医療(生殖補助医療)の場合でも移植する胚の数は原則1個と限定されています。

*卵巣過剰刺激症候群…排卵誘発剤により多数の卵胞が大きく発育し、卵巣が腫大、腹水や胸水が溜まる状態。

2021年9月に発表された日本産科婦人科学会の報告によると、体外受精をはじめとする高度生殖医療(生殖補助医療)は、2019年の1年間の治療周期数で45万周期を超えています。

不妊治療では、1回の治療を1周期といいます。たとえば、採卵をして受精卵を全て凍結し、翌周期に凍結胚を融解胚移植した場合、採卵周期で1回、凍結胚の融解胚移植周期で1回、合計2回=2周期の治療をした計算となり、これは治療を受けている患者数とは異なります。

また、年齢別に治療周期を調べたものも存在します。下のグラフから分かるように全体の治療では40歳の患者さんの治療周期がもっとも多くなっています。一方、妊娠・出産した方の周期数は、35〜39歳がピークとなっています。このことから、40歳を中心とした患者さんが、積極的に不妊治療を行っているのに対し、30歳代後半以降の妊娠、出産率は年齢の関係から低下してしまうということが分かります。

 

生殖補助医療の治療周期の増加に伴い、体外受精、顕微授精、凍結胚移植で生まれた子どもの数も増加しています。日本産科婦人科学会の発表によると、2018年の1年間において、日本での生殖補助医療による出生児数は、約5万7千人です。この10年間で2.5倍以上の数字です。また、2018年の1年間に国内で生まれた出生児のうち、約16人に1人は体外受精児であるということになります。

不妊治療は同じ治療法であっても、内容や施設により金額の差が生じます。当院における費用の目安は以下のとおりです。

  • タイミング法……保険適用
  • 人工授精……18,500円/回(自由診療、税別)

<体外受精>

  • 完全自然周期体外受精……160,000円/回
  • 刺激周期体外受精……210,000円/回
  • 胚移植……60,000円/回
  • 顕微授精……60,000円/回
  • タイムラプス……20,000円/回
  • 胚凍結保存……50,000円/回
  • 凍結胚融解……50,000円/回

(いずれも自由診療、税別)

上記の体外受精の費用には採卵、精子処理、媒精、培養、胚移植などに必要な材料費が含まれます。なお、体外受精の費用は、3回目の採卵からは40,000円減額、5回目からはさらに40,000円減額となります(完全自然周期では、3回目から20,000円減額、5回目からはさらに20,000円減額)。

採卵に至るまでに、通常検査費用(超音波検査、ホルモン検査)として、30,000〜50,000円程度、注射の排卵誘発剤使用の場合の薬剤費用として50,000~100,000円程度が、上記費用に加算となります。

なお、体外受精などの高度生殖医療(生殖補助医療)には公的な助成制度である「特定不妊治療費助成制度」があります。金額等は各自治体によって異なりますので、ご自身が居住されている自治体に確認しましょう。

また、体外受精には以下のようなリスク・問題点があります。

  • 必ずしも妊娠できるわけではない
  • 排卵誘発剤使用に伴う卵巣過剰刺激症候群
  • 採卵に伴う痛み、出血、感染
  • 採卵時の麻酔の副作用(アレルギー症状、呼吸抑制など)
  • 多胎の頻度の増加。多胎による問題には、母体側のリスクとして妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病など、胎児側のリスクとして流早産のリスクの上昇、胎児の発育遅延、出生児の低体重(2,500g未満)、先天異常、新生児での死亡率の上昇などが挙げられる
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