にんしんこうけつあつしょうこうぐん

妊娠高血圧症候群

同義語
妊娠中毒症
最終更新日
2022年09月28日
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2022/09/28
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に存在する高血圧全てを指します。以前は“妊娠中毒症”と呼ばれ、浮腫(ふしゅ)(むくみ)やタンパク尿(尿にタンパクが含まれる)を含めた病態とされていましたが、現在では病気の主体が高血圧であることが分かってきているため“妊娠高血圧症候群”と名称が変更になりました。

妊娠高血圧症候群は、妊娠前から高血圧の存在した“高血圧合併妊娠”を除けば、高血圧のみを発症する“妊娠高血圧”と、高血圧とほかの臓器障害(タンパク尿、肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育不良)が同時に生じる“妊娠高血圧腎症”の2つに分けられます。

この病気はけいれん発作、肝機能障害、腎機能障害や、出血を止めるのに必要な血小板などの産生量低下による脳出血など、重篤な合併症を引き起こすことも少なくありません。また、胎児発育不良のほかに常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)との関連も深く、母子ともに危険な状態に陥りやすい病気です。

一方で、この病気の根本的な治療法はなく、安静を維持しながら血管の細かい血栓を防いだり、血圧を下げたり、けいれんを予防したりするための薬物療法が主体となります。しかし、これらの治療を行っても十分な効果が得られない場合は緊急帝王切開などでの妊娠終了が必要です。

原因

明確な発症メカニズムは解明されていませんが、有力な機序として、妊娠20週までに起こる子宮らせん動脈の分解が不良である場合に、胎盤に向かう血流が不足して形成に異常が生じ、母体にとって有害な物質が作られ、全身の血管がダメージを受けることが主な原因であると考えられています。ただ、その分解不良がなぜ起こるのかは分かっていません。

また、この機序に関係なく、母体の免疫の問題で発症するタイプや、一般成人の高血圧と同様のインスリン抵抗性による発症もあると考えられており、原因は1つではありません。

この病気は肥満、高齢出産、双胎妊娠、初産、家族歴などのほか、妊娠前から糖尿病や腎疾患、自己免疫疾患があると発症リスクが高まることが分かっています。

症状

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上となることで診断されます。

妊娠高血圧腎症となった場合に起こるほかの臓器障害として、子癇(しかん)(けいれん)発作、脳出血肺水腫(肺に水がたまる)、肝機能異常、腎機能異常、HELLP症候群(赤血球の破壊、肝機能異常、血小板減少)などが挙げられます。これらは具体的な症状として、強い頭痛、神経麻痺、視野障害、呼吸困難、吐き気・嘔吐、右上腹部痛、尿量の減少、むくみなどさまざまな形で現れます。また、胎盤の機能が低下するため、母体だけではなく胎児にも影響を及ぼすのもこの病気の特徴であり、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離、胎児死亡のリスクが高くなることが知られています。

特に妊娠34週未満で発症した場合は重症化しやすいとされており、母子ともに命の危険に陥ることもあるため注意が必要です。

検査・診断

妊娠高血圧症候群が疑われる場合は、血圧測定(家庭血圧測定も推奨されます)に加えて次のような検査が必要になります。

血液検査

肝機能や腎機能、血小板数、貧血の有無など、全身の状態を調べるために血液検査が必須です。

また、胎盤に由来する異常物質であるsFlt-1/PlGF比が一定以上に上昇している場合、妊娠高血圧症候群の発症の可能性が上がるとされ、保険収載されています。

尿検査

妊娠高血圧症候群ではタンパク尿がよくみられるため、毎回の妊婦健診に尿検査が含まれています。1日の尿タンパクが300mg以上の場合を陽性と判断しますが、最近は尿タンパク/クレアチニン比(P/C比)で代用されることもあります。

超音波検査・胎児心拍数陣痛図

胎児発育不全や羊水過少、胎盤機能不全を合併することが多く、胎児の推定体重や羊水量、臍帯血流をチェックするために超音波検査を行うほか、胎児の元気さ(Well-being)を確認したり、緊急に娩出しなくてはならない判断を行ったりするために胎児心拍数陣痛図をとります。

画像検査

子癇脳出血などの合併症を疑う症状があるときは、CTやMRIなどの画像検査が必要です。

治療

妊娠高血圧症候群の根本的な治療法は確立していません。そのため、この病気を発症した場合は入院したうえで安静を維持し、降圧薬や子癇発作予防薬などを用いた薬物療法を行うこととなります。

しかし、妊娠高血圧症候群は重症化すると母子ともに命に関わる合併症を引き起こすこともあります。そのような状態に陥る危険が予測される場合には、妊娠の終了が唯一の治療であり、妊娠37週未満の早産期であっても分娩誘発や帝王切開が行われます。

 

予防

近年、妊娠高血圧症候群のハイリスク群に対して低用量アスピリンの内服が発症リスクを低下させることが複数の研究により明らかになりました。

既往歴や家族歴などのほか、妊娠初期に子宮動脈の超音波検査による血流測定と特定の血清マーカー測定を組み合わせる方法です。しかし、まだ保険収載された検査・投薬ではなく、また発症原因が異なるものもあるため、現時点で確実な予防方法とはいえません。

治療が遅れて重症化すると母子ともに危険な状態に陥ることも少なくないため、そのような事態を予防するためには、定められた妊婦健診は必ず受け、何らかの体調不良がある場合は軽く考えずに医師に相談することが何より大切です。また、家庭での血圧測定が早期発見につながるとされており、一般家庭での血圧計普及率が世界でもっとも高いわが国では有望な検査法といえます。

妊娠中の食生活の乱れや体重の増え過ぎなども発症リスクを上昇させるとされてきましたが、体重増加は食事を管理しても止まらないこともあり、一方でやせ妊婦の発症も多くみられるため、予防にはつながりにくいのが実状です。ただ、急激な体重増加は発症と関連があるとされるため、暴飲・暴食は避けるほか、日常生活でも適度な休業などの自己管理を心がけましょう。

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