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インタビュー

妊娠高血圧症候群と脂肪組織の関係

妊娠高血圧症候群と脂肪組織の関係
成瀬 勝彦 先生

奈良県立医科大学 産婦人科学教室講師/産科医長

成瀬 勝彦 先生

妊娠高血圧症候群の病態には脂肪組織に由来するサイトカインが関わっていることが明らかになりつつあります。両者の関係性について、奈良県立医科大学 産婦人科学教室講師/産科医長の成瀬勝彦先生にお話いただきました。

脂肪組織は巨大な内分泌臓器であると考えられています。1996年に、アディポネクチン(体内から分泌されるたんぱく質の一種)というサイトカイン(生理作用を活性する物質。そのうち脂肪細胞から分泌されるものをアディポサイトカインという)が同定されました。この物質は脂肪細胞が自ら代謝を高めるための自己制御型のサイトカインの一種で、高血圧糖尿病などの病気を発症すると低下することが分かっています。

卵管から子宮に受精卵が下りて来ると、子宮内膜に浸潤します。この段階で強い炎症反応が起こっており、受精卵が浸潤する部分で強力なプロテアーゼ(たんぱく分解酵素)が働くのを助けます。つまり、妊娠初期では炎症がないとプロテアーゼが働かず、妊娠も成立しないことになります。

プロテアーゼの活性は妊娠10~12週を境に切り替わり、絨毛細胞(胎盤の構成源となる細胞で、母体に接している)をらせん動脈(子宮内膜に存在する動脈)に集めて分解を促進し、胎盤の形成を助けます。これが成立する妊娠15~20週頃には母体と胎児のあいだで炎症のバランスが上手にとれて、以降分娩に至るまで赤ちゃんをお腹の中に保っていくことになります。

正常の妊娠であれば、アディポネクチンの値は下がることが分かっています。これにより脂質が体内で増えて栄養が蓄えられ、インスリン抵抗性が生理的に上がって血糖値が下がりにくい状態になります。つまり、妊娠中の体は自然なメタボリックシンドローム状態にするよう、あらかじめプログラムされているということです。これは、赤ちゃんに十分な栄養が必要だから起こる反応といえます。

メタボリックシンドロームの状態ですから、当然血圧も上がるはずだと考えられますが、正常妊娠では高血圧動脈硬化症のような病気にはなりません。

実は、メタボリックシンドロームで血管内皮障害を実際に引き起こすケモカインという物質(白血球を血管の内側の壁に集めて炎症反応を起こす)が正常の妊娠では低下しているのです。これにより体内で病的な炎症が起きるのを抑え、血管内皮機能が保たれることで、血圧が上がることを防ぎます。つまり、妊婦さんの体はメタボリックシンドロームの状態で栄養を蓄える状態でありながらも高血圧にならないという調節機能があるということです。

一方、妊娠高血圧症候群を発症する妊婦さんは、上記の働きがうまくいかないために炎症反応が抑えきれず、妊娠中のメタボリックシンドロームの状態がそのまま高血圧として病気になってしまいます。

妊娠高血圧症候群の妊婦さんの脂肪組織では炎症に直接関わる遊離脂肪酸が多く発生していたり、アディポサイトカインであるTNF-αとそのレセプター(特定の物質に対する受容体。結合することで細胞の機能に影響を与える)が上昇していたりなど、強い炎症が起こっているとも考えられています。

妊娠高血圧症候群の妊婦さんのアディポネクチンについては上昇している例、低下している例の双方があり、これは将来、妊娠高血圧症候群の病態をより明らかにして、治療の方策を決定する際に非常に役立つ情報となるでしょう。

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